空間次元の刻印
1:許可証のいらない門
ケプラー1000bは、孤独な世界ではない。
その銀色の空の外側には、十万を超える異なる次元が存在している。それぞれの次元は、その一つ前の次元よりおよそ一・五倍大きく、同時にそれぞれ異なる気候、生態系、そして独自の法則を持っている。
黒い海に覆われた次元もある。そこでは、低く垂れ込めた雲の下を巨大な生物たちが泳いでいる。
地平線の果てまで続く赤い砂漠しか存在しない次元もある。
そして、まだ一度も探索されたことのない次元もある。なぜなら、そこへ足を踏み入れた者は、誰一人として戻ってこないからだ。
しかし、すべての次元の中で、第一の次元は依然として最も人口が多く、最も身近な場所だった。
ケプラー1000bの住民のおよそ八十パーセントが、そこに暮らしている。
巨大な都市は転移門を中心に築かれ、空間を横断する交通路が、もともとは何百万光年も離れていた土地同士をつないでいる。
ケプラー1000bの住民は、地球人とは大きく異なっている。
一般的な成人の身長は、およそ三・五メートル。
その身体は強靭な筋肉、密度の高い骨、そして時速二百八十八キロメートルまで耐えられる循環器系によって作られている。
彼らは、一人の普通の人間が自分の影が通り過ぎたことに気づくよりも早く、一つの野原を走り抜けることができる。
彼らの五感もまた、驚くほど発達している。
視覚、聴覚、嗅覚は、地球人のおよそ五百倍も鋭い。
一人の警備員なら、広場の向こう側から聞こえてくる足音を聞き取ることができる。
一人の狩人なら、何日も前に乾いた血の匂いを追うことができる。
そして、生まれたばかりの子供でさえ、家族一人一人の匂いを嗅ぎ分けることができる。
彼らの聴覚は非常に優れており、およそ百メートル離れた場所の音まで聞き取ることができた。
そのため、ここでの生活は決して本当の意味で静かになることはない。
人口の多い居住区では、何百万もの音が重なり合い、決して流れを止めない川のように響き続けている。
爪が石の床に触れる音。
転移列車が空気を震わせる音。
高層市場から響いてくる客引きの声。
そして、互いに近づきすぎた者たちの心臓の鼓動。
そのすべてがあまりにもはっきりと聞こえるため、誰も自分には聞こえていないふりをすることなどできなかった。
食べ物もまた、異なっている。
ケプラー1000bの人々は、主に生肉を食べる。
彼らの身体には、地球人なら「まだ調理されていない」と考えるような肉でさえ消化できる能力がある。
彼らは強靭な歯で肉を一切れずつ引き裂き、新鮮な味と残された血の匂いを味わう。
普段の食事で火が使われることはない。
ケプラー1000bでは、火が現れるのは大規模な宴のときだけだ。
火は生活に必要な道具ではない。
それは富、地位、そして伝統の象徴だった。
一度に何百もの炎を灯す宴を開くことができる者は、大金を持っている者よりも尊敬されることさえあった。
病気は、この世界にはほとんど存在しない。
命に関わる危険な病気にかかる確率は、およそ五十億人に一人しかない。
かつて地球文明全体を崩壊させかけた病気も、今では古い書物や博物館の中にしか残っていない。
それでも、ケプラー1000bの住民には恐れる理由があった。
病気ではない。
戦争でもない。
第三の次元だ。
第一の次元から別の場所へ空間転移門を通って移動するには、一般市民は政府の許可を得なければならない。
すべての移動は記録され、検査され、審査される。
政府は、それらの規則は危険な生態系から市民を守るためだと説明している。
しかし、誰もそれが真実のすべてだとは、本当には信じていなかった。
第二の次元は、さらに厳しい。
すべての移動に料金を支払わなければならない。
銅製の六角形の硬貨一枚は、百米ドルに相当する。
その百分の一の価値は、一米ドルに相当する。
裕福な住民にとって、転移料金はほんの小さな出費にすぎない。
しかし、都市の低層階で暮らす人々にとっては、家族全員を何か月も養えるほどの金額になることもある。
だが、第三の次元だけは許可証を必要としない。
料金も必要ない。
誰かの許可を得る必要もない。
そこへ続く門は、都市ヴェイラの北端の外側に常に開かれている。
地図上では、ただ黒い円として示されているだけだ。
地名はない。
気候データもない。
そこに生息している生物についての記録もない。
ただ一行の短い警告だけがある。
「適応できない者は死ぬ」
その門を通る勇気を持つ住民はほとんどいない。
そこから戻ってきた者たちは、たいてい何も語らない。
話す能力を失った者もいる。
家族のことを認識できなくなった者もいる。
中には身体が変異してしまい、誰も以前の名前で呼ぶことさえできなくなった者もいた。
それでも、第三の次元には多くの利益がある。
そこにある鉱物は、第一の次元でこれまで採掘されたどんな金属よりも貴重だ。
傷をわずか数秒で治す植物もある。
発光する器官を持つ生物も存在し、それらは都市全体のエネルギー源を作るために利用されている。
生きて戻ることができれば、一度の旅だけで莫大な富を得ることさえできる。
だからこそ、その門の前にはいつも人が立っている。
その朝、一人の若者が順番を待つ群衆の中に立っていた。
身長は三メートル近く。
大部分の成人よりは低いが、首から足元までを覆う灰色の外套によって、群衆の中でも目立っていた。
まだ若い顔立ち。
しかし、その瞳は妙なほど落ち着いていた。
彼は門を見ていなかった。
耳を澄ませていた。
百メートル以上離れた場所から、石柱の内部で金属が震える音が聞こえる。
一人の管理員が小さく咳払いする音が聞こえる。
そして、自分の前に立っている人々の、速くなった心臓の鼓動が聞こえる。
そして、もう一つの音が聞こえた。
一つのノック。
コツン。
コツン。
コツン。
その音は、門の向こう側から聞こえていた。
若者はゆっくりと顔を上げた。
それまで門の表面は、ただ真っ黒な空間が広がっているだけだった。
しかし今、その暗い表面に青い光の線が現れた。
それらは血管のように広がり、ゆっくりと、見えない膜に巨大な手のひらが押し当てられているような形を作っていく。
群衆がざわめき始めた。
管理員が振り返った。
その顔色が、たちまち変わった。
「下がれ!」
一人が叫んだ。
「全員、門から離れろ!」
しかし、若者は下がらなかった。
ただ、向こう側に現れた光の手を見つめていた。
その手のひらの中には、赤い目が一つ開いていた。
その目は、まっすぐ彼を見つめている。
そして、一つの声が彼の頭の中に響いた。
この世界のどんな音よりも、はっきりと。
「ようやく来たな」
彼には、その声が誰のものなのか分からなかった。
だが、一つだけ分かっていた。
第三の次元へ続く門は、偶然開いたわけではない。
ずっと前から――
彼を待っていたのだ。




