不思議の辺獄のベリアル
「ステータスオープン」
ベリアルが呟くと視界の中に四角い窓が開いた。
「やだ、私のレベル低すぎ」
レベルの文字の横には『10』と表示されている。
「他のステはFばっかりだ」
レベルの下には体、力、速、魔、運という項目が並んでいる。
運を除いた四つの項目の横には「F」が記されていた。
Lv:10
体:F
力:F
速:F
魔:F
運:A
ベリアルは口に手を当てて落胆した。
「運だけAランク……。まだ、続きがあるな」
そう認識すると、窓の中の表記が変わった。
「うお、これは」
視界を埋め尽くす文字と数字に圧倒された。
「視力、聴力、体重……」
馴染み深い項目もあれば、見たこともないアルファベットの羅列もある。
数値が黄色になっている項目も幾つかあった。
「うわ、私の尿酸値高すぎ」
ベリアルは口に手を当てて驚いている。
そして、窓の右下に表示されている「2/29」という数字に気付いて眉をひそめた。
「健康診断より詳しいじゃん」
食事を摂る度に、
『ベリアルは尿酸値が上がった』
そんな通知がされるのではないかと、一抹の不安を感じつつ、ベリアルはページを送った。
「なんか特別なスキルは付与されてないのかな?」
最終ページにスキルと書かれた項目を見つけた。
スキル:なし
「チートスキルなしかよ……ケチ」
悪態をついて窓を閉じた。
「さてと、ここはどこなんだろう」
空がある。
青い空。
さっきまで薄暗く湿った部屋にいたはずなのに。
爽やかな風がベリアルを撫でた。
金色の髪が美しく流れる。
「銀髪じゃなかったっけ?」
ベリアルは両腕を広げる。
バラバラに切断されたはずなのに、今は体がある。
体形からして思春期の有機生命体のようだった。
白いワンピースから、腕が二本。足も二本生えている。
ベリアルは指で顔を弄った。
「目は二つあるな。鼻と口、耳は二つ」
それから、胸と股間に手を伸ばす。
「女か。私は誰なんだ?」
周囲を見渡したけれど、顔を映すようなものは何もない。
そして、奇妙なことに気がついた。
「影がない」
空を見上げる。
白い雲が浮かんでいた。
「太陽は三つある」
キョロキョロとあたりを見渡す。
「おかしくはないか……あれ?」
ベリアルは混乱した。
「いや太陽は一つだろ。なんで今、三つあってもおかしくないと思ったんだ?」
腕組みして深く思索を巡らせる。
「これは異世界転生?」
地下室にいて、小さな人形が四人を襲ったことは覚えている。
先ほどから辺りを観察しているのだけれど、あるのはどこまでも続く草原ばかりで、誰もいない。
「マモルやアンナもこっちに来ているのかな?」
あれこれ考えるのだが、いかんせん情報がない。
散々考えて、そのうちに眠くなってきた。
ピコン。
という耳慣れない音がして、ベリアルは顔を上げた。
視界の中に、封筒のアイコンが浮かんでいた。
「オープン」
と口に出すと、短いメッセージが表示された。
『女神の庭で待つ。アンナ』
「庭ってどこだよ!」
と思わず突っ込んだベリアルだったが、視界の右上に【アンナに会え】という文字が出現したことに気がついた。
そして、足元には影の代わりに大きな矢印。
「この先にあるってことか」
ベリアルは一歩を踏み出そうとした。
しかし、足が動かない。
「え、え? どうなってんの?」
前に行きたい気持ちはある。
しかし、体が思うように動かない。
混乱するベリアルの視界に新しい文字列が表示された。
W:右手
A:左手
S;左足
D:右足
「げ、まさか」
ベリアルは試しに『W』と念じてみた。
「右手が動く」
次に『S』
今度は左足が前に。
「うわっと」
念じすぎて左足が前に行き過ぎた。
ベリアルは妙な格好のまま地面に倒れ込む。
「クソゲーだ!」
その場でジタバタと回転しながら、ベリアルは叫んだ。




