フォロミりたいので、ちょっと抜けていいですか
魔王ベリアルは黒い翼を目一杯広げた。
見た目は愛らしい少女。
その額には立派な角が禍々しく光る。
勇者、抜刀し、上段に構える。
一歩も引かぬ姿勢。
仕事はきついが、やりがいはある。
辞めたいと思ったことはない。
勇者が天職なのだろうと思う。
いつまで前線で戦えるのだろうか?
最近は戦闘に加えて、ギルドの書類作成やら若手の育成やら。
そろそろ、体力的にもきついお年頃。
特に視力の衰えを感じるようになった。
「すみません、勇者」
「え、あ。 何?」
新人魔法使いの、えーと、名前は確か――
「フォロミりたいので、ちょっと抜けていいですか」
フォロミり?
勇者が困惑していると、頭の中で守護女神が囁いた。
『ほら、最近流行りのアプリよ。この間、炎上してたでしょ』
『知らんな』
『不定期で命令が来るのよ、写真撮れとか、踊れとか』
『はぁ? 仕事中に何やってんだ、無視しろよ』
『従わないと仲間外れよ!』
『だから、フォロミー(従え)ってか……?』
何故、今、それをやるのか。
新人魔法使いはすでに、石の上にダンジョン通信用の黒い箱を置いて、勝手に撮影準備を始めていた。
レンズに向けて笑顔を作り、戦場の実況を始める。
――魔王の攻撃が来たらどうするんだ。
焦って魔王を見た勇者は、硬直した。
魔王もまた小さな黒い板を掲げていた。
翼が一番盛れるアングルを探して。




