初めてのクエスト
シルバーのドッグタグは、アリーナの配慮? うん?
よく考えてみると、この受付嬢、ギルド規約を超えた判断ができたってことじゃない? 私の驚いた顔から察したのだろう、クロードは、
「こんなド田舎のギルド、人手不足ってこともあるのかねー、この方、ただの受付嬢にみえるかもしれないが、御歳……」
「コホン」
「ああ、は、いいとして、本ギルドのマスターでもあらせられるのだよ」
「褒められているのか、貶されているのか……。ま、人手不足は仰る通り、すなわちここはワンオペギルドってことですわ」
なるほど! 掃除洗濯などをこなすオートマタや、さきほどのタブレット端末のような情報機器、魔法技術の進化は目を見張るものがある。自動化あってのワンオペなんだろうけど……。
そしてここフルールは魔獣の巣窟ともいえる黒い森入り口にある冒険者拠点の一つ。この町は魔獣討伐や資源採掘など、彼ら向けのビジネスで成り立っている。とはいえ、人口は冒険者込みで一万人をちょい切るくらい。小さな田舎町というのも、その通りだねー
「ところで、クロードさん、メンバーも三人になったことですし、そろそろパーティ登録していただけませんか?」
「ああ、そうだよねー、そうなのだけど、どうも名前がさぁ〜」
「いやいや、名前はさておき、ギルドの事務手続きをお話ししているのですが」
「じゃぁ〜 さ〜 アリーナギルマス殿、名前をき・め・て♡ ほら、エレガントなエルフ語かなんかでよー」
「と、言われましても……、ああ、御三方、三人、三人……。そうだ! スノウさんの真っ白い尻尾を見ての思いつきですが、ブランシュ=ネージュ(Blanche-Neige)なんて、いかがでしょう?」
「白雪姫ですか?」
こっちにも地球に似たお伽話があった気がする。
「三弁の花、シラモンタナにそういう別名がありまして」
「さっすがー、エルフのお姫様ぁ」
「いやいや、姫などではありません。でも、お気に召したようで何よりです。では、ブランシュ=ネージュとしてギルド登録しておきますわ」
「お願いするな。で、でだな、本日、朝っぱらから押しかけたのはだなー、森から街道に抜ける道に出没する盗賊団、あれの捕縛クエストは、まだあるのか? を聞きたくてさ」
「ああ、あれですか? 奴らはアジトを巧みに移動しているようで、全く尻尾が掴めません。捜査しようにも、魔獣に絡まれ思うに任せず難航しております」
「なら、まだ、オープンってことだな。それ、俺たちが受注してもいいかな?」
「クエストはCランク以上となっておりますので問題ありませんが……」
「いや、もしかしてスノウちゃんが捕まっていたのが、その盗賊団じゃないかな? と思ってさ」
「あー、そうかもしませんね。ならば、道案内はお任せを! 私は獣人、一度通った道を忘れることなどありませんよ?」
「スノウちゃん、案内できるの? だけど、復讐はダメよ!」
ダフィーネが真面目な顔で警告してくれた。
「捕縛クエストですもんね、分かってますよ。できるだけ生かした状態で捕まえるように頑張ります」
「って、その顔で言われると、逆に迫力あるなー、怖いわ。ま、奴らへの罰は、俺に考えがあるから任せてくれるかい、できるだけ、じゃなくて、絶対に、殺さないでくれよ」
「え、ええ」
「じゃ、二人は、少し待っててくれるかな? ヘルパーを連れてくるからさ」
そう、そう、そうなのですよ。一般的な異世界モノで冒険者は数人の部隊のみで行動するように描かれているけどさ、狩った魔獣をどうやって解体するの? 魔石を大量に発掘したらどうやって持ち帰るの?
リアルな異世界ではさー、冒険者にはこれをサポートするヘルパー部隊の存在が不可欠なのだよ。彼らに戦闘力はないが解体や運搬の専門家で冒険者の仕事を手助けしてくれる。すなわち「ヘルパー」ってこと。
というのが解説なんだけど、クロードが連れて来た男は一人。随分とけばけばしい格好、というか男性だよね?
おーーい、何匹狐さんを殺したの? くっそ暑いのに、これでもかっ、という感じのファーコート、十二センチはあるだろうピンヒールのロングブーツ、ベッタリと青いマスカラを塗り、人を食ってきたような紅いリップもベタベタ。
「あ〜ら、久々にクロードちゃんとのお仕事、楽しみだわぁ〜」
「って、あの、この方は?」
「あーー、ま、後のお楽しみってことでいいんじゃないか?」
「なぁ〜にぃー、私が何者か? を、この可愛い子猫ちゃんに教えちゃだめなのぉ〜」
「スノウといいます」
「デュランよ、よろしくね。ウフ♡」




