第8話 バレンタインは期待したら負け
シャーコーシャーコーと包丁を研ぐ音が聞こえる台所をこっそりと覗く。
山姥の昔話かよ、とツッコミたいのだが、これは日本でしか通用しないので省かせて貰おう。
ネウレアは台所に明かりを付けて、真剣な目で包丁を研ぐ。
……今日鍛冶屋に出したばかりだろうが。
しばらくし、包丁を両面研ぎ終えた後、砥石の側に包丁を置くと、何とスカートの中から二本目の包丁を取り出し、砥石に水を掛け、また研ぎ始める。
どこから出してんだよ。
それから数本の包丁を研いだネウレアは、少し長めの包丁を残し、他の包丁全てをスカートの中に戻す。
よかった。終わったのか。
と、安心したのもつかの間、今度は台所の隅に置かれていた箱を開け、中から取り出した大きな種みたいな物体をまな板の上に置く。
しかし、どこかで見たことのあるような物体だな。
それから、ビン詰めの何かやら砂糖やら牛乳やら(牛乳!?)いろいろ出して、先ほどの種みたいなヤツを原料にした何かを作り始めた。
え? マジで何やってんの?
そこから、文字に起こすのが難しいような過程を経て作られた茶色のドロドロした液体は、平らな型に流し込まれ、型ごと氷の入れられた白色の箱に納められるのであった。
あ、何かこれ見覚えある。
◇
「ミカミ、朝だよ」
ネウレアがわざわざ起こしに来てくれた。
普通ならば嬉しいところだし、お兄ちゃんと付け加えてくれれば満点だが、事の一部始終を見せられた(俺が勝手に見ていたのだが)を見た後では何だか喜べない。
無駄に豪華な螺旋階段を降りると、俺を待っていたのは、やはり昨日の白い箱だった。
「昨日作ったの。そういえばバレンタインだったからさ。あげる相手いないのに作っちゃうんだよね」
この世界にバレンタインデーという文化があることはさておき、ネウレアは俺の目の前に昨日一人で作っていた板チョコを置く(この世界にチョコレートとかがあることも、ツッコミにキリが無いので省略する)。
まず一言。
カカオから作るなよ! 楽しろよぉ!
そして何で板チョコなんだよ!
どこで板チョコの型手に入れた!
「どうしたの? チョコ嫌いなの?」
お前がとんでもないベクトルでボケかますからだろうが!
※この後なんやかんやありながらも、三上は板チョコを完食しました。
◇
さっさと場面を変えて、俺達が今いるのは昨日から通い始めたギルド。
朝早くから来て、依頼が掲示板に貼られるのを待っているところだ。
俺は今、ほとんど金が無いので急いで稼がなければならない。
普通ならどこかで雇ってもらうことが一番安全で簡単だが、すぐに給料が貰えないと困ることと、せっかくネウレアがいるので高報酬の依頼こなして少しでも多く金を稼ぎたいからこうして掲示板の前で仁王立ちをしているのである。
そういえば、俺はここの世界のことをあまり知らない。依頼をネウレアに任せるのもアリと考えたが、前回の様にドラゴンとかを選ばれると俺が危ない。
今更言うことではないが、俺はそもそも武器を持っていないのである。
持っているのは、送られる前から持っていた荷物と、こっちの世界で買ったナイフ程度で、この街に来るまでは、いろいろやって食いつないでいた。
よって俺は身を守る術を持たない。なので、少しでも稼ぐことができてかつ、危険度の低い依頼を選らばなければならないのである。
凄く難しいし、知識も無い。さて、どうしたものか。
「お? お前、昨日のヤツだろ?」
突然、背後から話しかけられる。
振り返ってもその顔に覚えは無いが、どことなく陽気なヤツだ。よし、そうするか。
「あ、少し聞いていいか?初心者向けで報酬の弾むターゲットってあるか?」
「なんだよ、"ヒメアント"のことか?」
「そうそう、それについて教えてくれ」
「"ヒメアント"と言えば体長が10歳前後の子供くらいある昆虫型のヤツで、この季節なら洞穴の中で全然動かないから、ある程度の実力があるヤツなら簡単に戦える獲物だ。春辺りになると一斉に出てきて人里近くで悪さするから、寒い今の時期に国が駆除の要請を各地に出すんだ」
「なるほど。ありがとう、勉強になった」
「別に礼には及ばないぜ! だが気を付けろよ、油断すると痛い目に逢うからな!」
※ここから下は、ネタ成分を多量に含むクレクレ茶番です。
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この変な作者の変な小説を上手なのにこんなヤツと組まされたかわいそうな絵師様による挿し絵の入った書籍で読みたい方、俺のせいでこのわかり難い小説を漫画にさせられたコミカライズ担当の方の悲鳴が聞こえてくる本作品のコミカライズ版を読みたい方、何かめっちゃ動いてやたらイケボな主人公や、なぜか力が入った、ヒロイン達の声優様方の歌われるキャラソンを聞きたい方は、この欲にまみれた私の駄作に清き2~12ポイントを!
以上、評価ハイエナのクレクレ茶番でした。




