第32話 ファンタジーにゴーレムが出てくると何故かロボットアニメ感がすると思うが同志いる?
ゴーレムは紅く輝くモノアイでこちらを見た直後、地面をまた揺らしつつこちらへ駆け出す。
「な、何だあれは! こっちに来るぞ!」
冒険者は慌てるふためき、混乱にも似た状況。
そしてゴーレムは結界の真正面で止まり、勢いよく右パンチを繰り出す。
防護結界は石を投げ込まれたガラスの如く、真ん中に穴が空き破片をバラバラとこぼす。
「ハッハッハッ! 見たか人間、これが我らの技術の結晶! せいぜい逃げ惑っているんだなぁ!」
やがてゴーレムは、結界を跡形もなく粉砕。
「く、やるしかない!」
冒険者は傍観するわけにもいかず、ゴーレムに攻撃を開始するが、その強固な巨体に攻撃は一切通らない。
「無駄無駄無駄ぁ、何をしても無駄なんだよぉ!」
遠くからすっかりくつろぎモードのブライバスが、どこかで聞いたセリフをティーカップ片手に楽しそうに叫んでいた。
「フッ、どれだけ攻撃しても無駄だよ。なんせそれは全身大理石製だからね」
無駄にリッチな響きだな。
だが、大理石ゴーレムは冒険者を蹴散らし、いよいよ街の城壁まで到達。
「うわ、逃げろ!」
城壁から魔法を撃っていた魔法使いが、慌てて逃げ出す。
大理石の塊に、街の内部への侵入を許してしまった。
そして、初めは罠にかかったりなどで散々だった魔族側もそれらを見て士気が上がり、再度突撃を開始。
「キハハ! 人間よ、先ほどはよくもやってくれたな!」
前衛にいた冒険者と、そのまま戦闘に入る。
街への侵入を許したゴーレムを対処したいが、俺達はそんな場合ではない。
大理石ゴーレムは、仕方なく魔法使いに任せよう。
「エリトリナ、後衛に伝えてくれ! 魔族は俺達が引き受ける、ゴーレムは任せた!」
「お、オッケー!」
そして、俺も前線へ走る。
息切れをする間もなく、目の前から骸骨の騎士が俺の前に駆けて来た。
骸骨は手にもつ槍で刺突。
思わず盾で顔を庇うと、たまたま突きを防ぐことができた。
「ほう、新顔に見えるが、なかなかやるではないか」
いやすみません、たまたまです。
馬を降り、骸骨は腰に着けた剣を抜く。
「近頃はこんな集団戦ばかりでな、少し退屈しておったのだよ。もちろん引き受けてくれるよな?」
と、一騎討ちのお誘い。
俺新人なんだけど。だが、馬を降りるという目線的なアドバンテージが無くなった。
ひょっとすると、これはむしろチャンスなのかもしれない。
「もちろんだ。が、お手柔らかに頼むぜ!」
骸骨は、表情は変わらないが、嬉しそうにした。
「よくぞ言った! では、参ろ……」
横から吹き飛んできた馬に、骸骨が轢かれる。
・・・はい?
「ミカミ! 危なかったな、突っ立っているとかえって危険だぞ!」
横にいたパリスの仕業だったようだ。
……助かったけどよぉ……
◇
街の中心部へと、背の高い建物を破壊したりしながら、ゴーレムは歩みを進める。
「早く止めるんだ! 街をこれ以上破壊させるわけにはいかない!」
魔法使い達は、各々が安定した場所を探して魔法を放つが、ゴーレムに効いている様子は全く無い。
そして、ズンズン突き進むゴーレムは、街の最奥部にある、大聖堂の前に。
内部から光の漏れる大聖堂は、今回の避難場所に指定されている。
そこには、ネウレアを含む一般市民がいる。
だが、それを知るよしもないゴーレムは、モノアイを紅く輝かせ無情にも腕を振り上げた。
「いけない!」
しかし、その拳は大聖堂を右逸れる。
「こんなところまで、来ちゃったんだね」
大聖堂の上に誰かがいる。
それは、目を曇らせ手には包丁を持ったゴスロリ少女。
ネウレアの姿だった。
次回もよろしく!




