第14話 「それで?」
ソファーに向かい合って座り俺は紅茶…の様なモノを啜っている
テーブルには簡単な茶菓子の様なモノも置いてある
これらは全てノアが持ち込んでくれたモノだ
「…と言う訳で俺も何が何だか分からないんだよ」
俺はフルネーム以外を正直にノアに告白した
地球という星の日本という島国に生まれ気付いたらここにゾンビとして存在していた、と
地球や日本には相変わらず疑問を呈したが「異世界」や「転生」という言葉を挟んだら一気に解決した
どうやらこの世界の常識に「異世界」や「転生」はごく当然の様に組み込まれている様だ
「そうなんだ…カズヤさんは転生者なんだ?…でも転生先がゾンビって。。。聞いた事ないなぁ…」
え、逆にレアなんすか?ゾンビ転生⁉
なら普通の一般人で良いから生きて転生したかったな…
「とにかくこのままじゃ村の人に見つかって討伐されちゃう…うーん、村長さんに相談してみよっか?」
「ぜっ是非ともお願いします‼」
多分切られても燃やされても感覚がないから苦しまないだろうけど殺されるという恐怖は拭えない
ー次の日ー
ノアは二人伴って廃屋を訪れた
一人は先の村長、シーラグさん。
もう一人は村長のお孫さん、シーランさんと紹介された
俺は多少ビクつきながらも紅茶を注ぎ茶菓子と共にテーブルに置いた
「しかし…眉唾だと思ったが本当にゾンビなんじゃのう…」
シーラグさんは驚きを隠せないと言った表情で俺を繁々と観察するとノアに呆れ果てていた
シーランさんは未だに信じられない、と言った表情で俺を睨んでいる
警戒されて当然の容姿な俺はただただ恐縮するしかなかった
この話し合い如何では俺は討伐対象にされてしまう訳で村長は俺の生殺与奪の権限を持っている訳だ
「うーむ…こんな事は今まで聞いた事もない。…ところでカズヤ君、と言ったかの?」
「はっ、はいぃ~‼」
「アハハ、そんなに怯える事はないぞ?普通のゾンビなら即討伐だがお主は人を襲う事なぞなかろう?」
「そ、それは勿論です‼」
「ならば恐れる必要もない訳じゃ。しかし…」
村長は腕を組んで悩みだしてしまった
「シーラグさん、お気持ちは十二分にお察しします…」
俺は機先を制して言葉を発した
そりゃそうだ、いくら善良?なゾンビとは言え村に危害を及ぼさないという保証はどこにもないのだから
そこで俺は1つ提案をした。
村の安全と己の安全、2つを両立させる現時点での妥協案だ
「もし宜しければ俺をこの墓地の墓守りとして置いて下さい。勿論給与など余計なモノは要りませんので…」
ゾンビとして転生して数日、俺は食事も睡眠も必要としない事が判明している
食費も生活費もかからないのであればお金も必要としないだろう
幸い?にもこの墓地はかなり荒れ果てていて手入れをする人が必要そうだ
費用を要せず墓地の管理をそれこそ四六時中みて貰う代償として己の身の安全を嘆願したのだ
シーラグさんは暫く「うーむ…」と悩んでいたが突然自分の太腿を「バンッ‼」と叩いてこう言った
「良かろう、村の民にはお主の事をワシから話そう。この廃屋は給金代わりに勝手に使うと良い」
「ありがとうございますっ‼」
こうして俺は突然ゾンビとして異世界転生し、墓守りとして就職を決めた




