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兄妹の冒険


「だめっ! かえして!!」


 グレーテルが叫んだとそのとき。

 ぴかっ、とまばゆい光が、魔女(まじょ)が手にもっているペンダントから放たれたのです。


「ぐうっ……!」


 魔女は光におどろいて、うめきごえをあげます。グレーテルはおどろいて、ペンダントを見あげていました。


「なんなのだ、この光は……!」


 そう、魔女は言うと、まっしろな光につつみこまれます。そのまぶしさに、グレーテルが目をつぶります。


 カラン、と何かが落ちる音がして、グレーテルはおそるおそる目をあけます。

 すると、目の前にいたはずの魔女は、どこにもいなくなっていました。


 おそろしい魔女は、いなくなったのです。


 グレーテルは、床におちたペンダントをひろいあげると、首にかけます。そして、急いで家を出て、お菓子の家のまわりをあるき回ります。


「あっ、あれかしら!?」


 グレーテルの目にとまったのは、お菓子つくられたものおき小屋(ごや)。グレーテルは、ヘンゼルが閉じ込められているところをさがしていたのです。

 小屋にちかづくと、グレーテルは呼びかけます。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん、そこにいる?! いるなら、へんじをして!」

「その声、グレーテルか!? ぶじだったんだな!」

「うん! いま、とびらをあけるから……!」


 グレーテルが、おもいっきりとびらをひっぱると、とびらがひらいて、中からヘンゼルが出てきます。


「グレーテル!」

「お兄ちゃん!」


 二人は、抱きあってよろこびました。魔女は、もういないのです。

 そこで、声がきこえました。二人の知っている、だいすきな声です。


「ヘンゼル、グレーテル!!」

「こんなところにいたのか!」

「……母さんと父さん?!」

「お母さま! それにお父さまも……?!」


 声がするほうを向くと、なんと二人の母と父が立っていたのです。

 母と父は二人へとかけよって、その小さなからだを抱きしめました。母は、いまにも泣き出してしまいそうです。


「どうして急に居なくなったの?! ……本当に、心配したのよ?」

「だって……、なぁ、グレーテル」

「お兄ちゃんときいたもん。お家を出ていってもらうってはなしてたの、きいたもん」


 そのことばに、母と父はおどろきました。そして、すぐにやさしく笑顔をみせます。ヘンゼルとグレーテルは、きょとんとふしぎそうに見ていました。


「それはね、違うのよ。ね、あなた」

「そうだ。雨漏(あまも)りしそうな屋根を直そうと思ってな。危ないから、家を出ていてもらおうという話をしていただけだよ」

「そうよ。あなた達を、追い出すなんてことしないわ」


 笑ってそう言う母と父に、ヘンゼルとグレーテルは一度、顔を見あわせます。おそるおそる、二人は母と父にといかけました。


「じゃあ、おれたちは、母さんと父さんと……」

「いっしょにいてもいいってこと……?」


 母と父はやさしく笑って、こたえます。


「ええ、あたりまえよ」


 そのへんじを聞いて、ヘンゼルとグレーテルは、母に抱きつくと、わんわんと泣き出しました。


「……さあ、お家へ帰ろう」

「ええ、帰りましょう」

「うん」

「かえろう」


 ヘンゼルとグレーテルが泣きやんで見わたすと、全てがお菓子で作られていた森ではなく、ふつうの森にもどっていました。いつのまにやら、お菓子で作られた草も、木も、お菓子のお家もありません。


 ふしぎそうに二人はかおを見あわせて立ち止まります。母が、ついてこない二人にふりかえって呼びかけます。


「ヘンゼル、グレーテル、どうかしたの?」

「……いや、なんでもない」

「かえりましょう、お母さま」

「ええ、……帰りましょう」


 そうして、家にかえったヘンゼルとグレーテルは、母と父と四人でまた仲良く暮らしましたとさ。






おしまいおしまい。


 これにて完結であります。お付き合いくださり有難うございました。


 本編はこれにて終いですが、あと、蛇足的別視点を一つ、投稿したいと思います。興味がある方は読んでいただければと思います。


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