表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

兄妹は森の中


 夜の闇の中、家から出たヘンゼルとグレーテルは、近くの森へと入ります。母と父の目からのがれるように、あるいて、あるいて、あるきつづけて。そして、大きな木の根元に座り込むと、二人で大きな布にくるまって寝ました。


 そして、朝が来ました。


「はい、グレーテル。パンだよ」

「ありがとう、お兄ちゃん」


 二人は鳥のさえずりを聞きながら、家から持ってきたパンを分けて食べます。しかし、パンを食べたことによって、のどが(かわ)いてしまいました。


「お兄ちゃん、のど、かわいちゃった」

「ちょっとまってろよ」


 グレーテルの言葉に、ごそごそ、とかばんの中をヘンゼルはさぐりますが、のみものは見つかりません。


「しまった……もってくるのをわすれた!」

「……ううん、だいじょうぶ。がまんするから」

「ごめんな、グレーテル」


 しょんぼりとするヘンゼルに、グレーテルが気にしないで、と言ったその時でした。


『アラアラ、ノドが渇いたノ?』


 どこからか、二人ではないだれかの声がひびきました。きょろきょろ、とあたりを見わたしますが、どこにも人の姿(すがた)はありません。


『コッチよ、コッチ。ワタシよ』


 声のする方に顔をむけると、そこにはいっぴきの青いトリがとんでいました。


「……もしかして、トリさん?」

『そうよ。ワタシよ』


 なんと、話しかけてきたのは青いトリさんでした。トリさんはグレーテルのうでにとまると、二人を見上げて言いました。


『ねえ、パンくずをくれたら、キレイな川につれていってあげる。ノドが渇いたんでショ?』

「ほんとうに!?」

『ほんとうヨ』


 グレーテルは目を見開いてから、ヘンゼルの顔を見ます。ヘンゼルはごそごそとかばんの中をさがします。


「……お兄ちゃん、パンはまだのこってる?」

「のこってるぞ。トリさん、はいどうぞ」

『やったあ! アリガトウ!』


 ヘンゼルがパンをちぎって差し出すと、トリさんはパンのかけらをぱくぱくと食べます。そして、一つのこらず食べ終えると、つばさを羽ばたかせてとびあがりました。


『おいしかったワ。それじゃあ、ワタシについてきてネ。川へつれていくワ』

「ありがとう、トリさん!」

「ありがとな!」

『いいわヨ。かわいい子どもタチだわネ』


 トリさんにつれられて二人がついたのは、とてもきれいな水のながれる小さな川でした。水のせせらぎと、さわさわという木々のざわめきが聞こえてきます。


『ここヨ、おいしい水だからのむといいワ』


 言われるままに、グレーテルが川の水を手ですくって飲みます。つめたい水が、渇いていたのどにしみわたります。


『じゃあ、ワタシは行くわネ』


 そのようすを見とどけたトリさんは、二人の頭の上へととびあがります。


「ありがとう、ばいばいトリさん!」

「じゃあなー」


 そのまま、トリさんがどこかへとんだいくのを見送って、のこされたヘンゼルとグレーテルはごくごくと水を飲みます。すると、グレーテルがふと川の向こうがわを見ました。


「ねぇ、お兄ちゃん。何か、あまいかおりがしない?」


 グレーテルの言葉に、ヘンゼルが大きく息を吸うと、たしかにあまいかおりがしました。


「……ほんとうだ。川の向こうから、ただよってくるような……」


 なんと、あまい良い香りが川の向こうからただよってくるのです。


「お兄ちゃん、行ってみようよ」

「そうだな。でも、そばをはなれたらだめだぞ」

「うん、わかった」


 うなずきあったヘンゼルとグレーテルは、小さな川をとびこえると、あまいかおりがする方へとあるきだしました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ