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その六

 一拍遅れて裏庭に居た中級魔術科の生徒と教師が、演習場に居た弓術科の生徒と教師が、それぞれに魔法を矢を、栄光ある学院の屋根の上に居座る不届きなドラゴンに放つ。

 殺到する大量の魔法が、炎が水が雷が風が岩が全てが命中着弾した訳ではないが大半が町を見渡すドラゴンの体に翼に頭に尾に当たり、近くに着弾し炸裂する。

それらの煙が晴れるより早く戦技によって強化された矢が降り注ぎ、外れた物が瓦と屋根を貫通する程の威力を見せて煙の中に消えていく。


 出遅れたと窓の僅かな突起や壁を蹴って屋根に飛び乗った剣術科の教師が落胆する、トイレからの帰り道に気付いてすぐさま手近の窓から屋根の上まで移動したがどうやら出る幕はなかったと愛剣の柄を撫でる。

 あれほどの魔法と矢の雨を受けて無傷とは考えられず、間違いなく死に体、瀕死でありせいぜいが止めを刺すくらいしか出番はなく、それも横取りにしか見られない、どれだけ身体能力に優れていても剣という武器の性質上、ある程度距離を詰める必要があったのが裏目に出たと。

誰もが、生徒も教師も、近くを歩いていた人も窓から見ていた学院長も、諸人がそれを確信し、やれやれ終わったと安心した、たった一人を除いて。


 そんな筈がないのに、そんな訳がないのに、そんなに簡単なら英雄は英雄足り得ないのに、たった数年、たった数年、たった一人を侮って侮蔑して嘲笑して、当たり前の事実から目を反らしていた、都合良く解釈して間違った結論に酔って、当たり前だった事を失念していた。


 その程度で竜が、空を駆け、大地を穿つ覇者にして王者が、生物の頂点が殺せる筈がないという単純で簡単で、子供でも知っている常識を。



 煙が晴れるその瞬間、耳障りな鳴き声と共に圧倒的なまでの殺気が辺りを支配する、まるで死神がその御手を自分達の肩に置いているかのような濃密な死の気配、恐怖のあまり失禁する者も失心する者も出る程の重圧。

 常人であればその瞬間に戦意を失う程の威圧を間近で受けて、それでも剣術を教える男は愛剣を構えた。

正しく一流、剣において世界でも五指に入る実力を実戦の中で磨きあげたのだ、威圧で二の足を踏むような柔な心ではない。


 それでも、晴れた煙の中から現れたその姿に、傷一つないその姿に圧倒されてしまう。

 確かに死した竜の素材、同士討ちや寿命で死んだソレは個体によってかなりの差異がある、全てにおいて加工にオリハルコンを使っても数日掛りという強度はあるが、例えば水の魔法を全く通さない、例えば打撃に強い、例えばオリハルコンの刃でも数年掛けてようやく切れるという程に斬撃に強い等の差異が。

それでも、例え大半が初級も初級、威力も素人に毛が生えた程度の魔法と言えども、あれだけの数を受けて無傷、例え大半が生徒の一撃、学院の支給する練習用の弓と矢であったとしても無傷。

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