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東方創生判  作者: オリーブ油
風神録編
37/38

第三十七審 妖女ルーミアの巻

今月の目標『学業を言い訳に小説業をサボらない』

「こういう場合はだな、まず数を縦に並べて書く。これで圧倒的に楽になるからな」

 6、1、7、9、と横にふたつずつ黒板に書きつける。授業を聞く寺子屋の生徒たちは黒板と手元のノート(そぐわない言い方だが)を行ったり来たりしている。

「ここからが大事だぜ。まず下の数字を見る。その一番右の数字に注目する。この式では9だな」

 生徒を見渡しながら、誰に当てようか、と考える。さしあたり端からにしようと思い、最前列の右端から指名するように決めた。

「みんな九九はわかってるな?この9の下に、9に上の1をかけた数字が出てくる。9×1だ。よーし、当ててるぞ...チルノ、9×1は?」

 チルノはすぐに立ち上がり、同時に声をあげた。一番前の席だから、大声を張り上げる必要はないのだが。

「まあ、1の段だ。自信満々に答えられるのは当たり前だな。じゃあ、9の下に、今出た9を入れる。隣の空白には動揺に9に6をかけた数字が入る。要領はわかったな?」

 生徒の返事が教室を回る。ほんのすこし前まではあっち側だったなぁ、とか心の奥底では考えている。

「確認のため、この問題は一緒にやるぞ。よしチルノ、9×6はいくつだ?」

「2!」

「......隣、ルーミア、わかるか?」

「54」

「...よし」

 その後は特にトラブルも無く、平和な授業をして終わった。まだ若いとはいえ、毎日こんなことを続けていたら、疲れて過労死しそうだ。

「慧音さん...ちょっと答えてもらえますか?怒ってなんかなくて、こいつらのことで」

「生徒がどうかした?」

「こいつ...と、たしかこっちもだな。それにバカのチルノ。そしてルーミア。こいつらは人間じゃないと思うんですが...?」

筆が硯に置かれ、自分が持ってきた出席簿を持ち上げた。いつの間にか眼鏡もかけている。

「...確かにそうだ。最初の3人は妖精。最後のルーミアは妖怪だぞ」

淡々と話す慧音さんについていく。もっともこう話す慧音さんも妖怪の1派だし、もうこの世界では人間も妖怪も大差無いのだと思い始めている。

「妖精どもはともかく、妖怪とは...。安全なヤツなんでしょうね?」

「おそらくはな」

「おそぉ...らくぅ...!?アイツ(ルーミア)の主食が何かは知りませんけど、決して周りの生徒を襲わない保証は...」

「だったら、君がそうならないように見張っている事だ。そんなに心配ならな」

「心配...いえ、そういうんじゃ...」

 そう告げて、慧音さんは出かけていった。どこに行くかは興味無いが、質問をあいまいなままにされたせいか少し気になった。

 1人でいてもすることがない。生徒は誰もいない。部活なんてうっとうしいものもないからか、どこか気持ちがいい。子どもはどこにいったんだろう。自分にはもう必要ないことかもしれないが。

 今日は授業が午前だけだった。みんな家に帰っているらしい。帰る家がある。そうだ、自分には帰るべき家がある、本来死んだオレは帰ってはいけないが今も外の世界に、自分の死を悲しみ、今も帰りを待つ家族がいる...。

「母さん...。オレはここにいるべきなのか...?こんなところで、あなたを心配させて許されるものなのか...」

 頭が痛い。まだ昼は食べていないせいだ。そうとしたい。悩む必要なんかないはずなんだ。オレは死んでいる。本来ここにいるはずはない魂なんだ...。選択なんかする権利はないはずなんだ...。

 気分転換にでも服でも買いに行こう。制服も改造しまくってるからほぼ私服同然だが、私服が欲しい。中心地から外れたところに洋服の店があるらしい。行ったこともないということもあり興味もある。財布の金でどれだけ買えるかはわからんが、ひとまず安心を求めて歩き出した。

 外に出ようと戸に手をかけたとき天井に、いやもっと上の屋根に何者かの生命を感じた。集団ではなく一体だ。さっきまで人が多かったからわからなかった。鳥とか虫もいたせいだ。

 寺子屋を出て、遠くから屋根を見る。しかしもう姿はない。自分を尾行する気か。ひょっとしたらオレの首の賞金目当てで来たハンターだろうか。

「オレはまだ気づいていない...とでも思ってんのか?こっちはお前の背丈や性別までよ~くわかってんだぜ~!」

 いまだストーカーは姿を見せない。入り組んだ建物をよく利用し立ち回っている。さっき女性ということはわかった以上、殴る蹴るなどの暴行で終わらせるわけにはいかなくなった。そこで店屋のじいさんに声をかける。

「このラムネ、2つ売ってくれ。あと冷やす氷も高く買おう」

「羽振りがいいな!兄ちゃん。氷けっこう重いけど一人でだいじょぶか?」

「心配しないでくれ、あとやっぱりラムネもう1本追加だ」

 やつとは今から曲がる路地で決着をつける。あぶりだす手段はできた。

・・・・・

『今何を買ったんだ?よく見えなかった...』

 太陽が照りつけるなか、聞こえた声は覚えある声であった。

「聞こえる...この耳...クジラのものにしたが...普段聞こえないものまで感じ取れる...」

 クジラやイルカなどの哺乳類コウモリとかもそうは超音波というのを扱える生物だ。超という大層な名前ではあるが彼らにとっては標準の鳴き声。当然それらが聞こえるように彼らの耳も特別にできている。

「こんな世界で暮らしているとは驚いた。だがあいつにはもっと驚いてもらわなくてはな」

 ストーカーのもとに動物を飛ばした。苦しめるつもりはないが、なぜこんなことをしたのかだけでも突き止めなくてはならないからだ。もう一度声を聞く。

『蝶...初めて見る種類だ。きれいな羽だ』

 能力を解除する。蝶はラムネの空き瓶に戻る。

『うわぁっ!!くぅ!』

 生命エネルギーを見る。ケガはない...避けたか。だが別にケガをさせるためのものではないからな。

『これはまさか、茨戸...秀の...のうりょ...ヒィ!』

『く..首から...背中に...。これは...なんて卑劣な...!』

 ちょっと財布には痛いがこれなら拷問には十分だろう。氷に生命をあたえてトカゲにした。氷が溶け始めれば自然と能力も溶ける、いや解けるだったな。

『またさっきの蝶だ!まずい!このままでは!』

 さてどうする。どう逃げる?Sぶる趣味はないが危険性を見分けるには十分だ。 

『ドギュン!!』

「今のは...!弾幕か...?なるほどねぇ。今ので危険度は把握した」

 すぐに引き返しやつのもとに駆け寄る。地面に倒れている向かって言った。

「なぜオレを付けてくる?なぁ、ルーミア」

「やっぱりこれは先生の能力か。くっ、これから私をどうする気だ?」

「オレはお前をはずかしめよーだなんて考えてない。それに...お前さんは優秀生徒だ、たとえ妖怪でもケガさせたら慧音さんが悲しむ」

 ルーミアは驚いた顔をして言う。

「けーね先生から聞いたのか?妖怪だってこと」

「裏付けたのはそうだな。で、話を戻そう...。なぜ追っていたんだ?」

 話そうとする気配はない。プロのスパイでも目指しているのか。誰かに頼まれた風ではなさそうだが。

「ラムネでも飲むか。トドメに使うつもりだったが余ったんでな。そして飲んだら...」

 瓶が取り上げられて、すぐに蓋が開けられた。空気の抜ける音と同時に逆さにして中身を飲み干す。

「はー、どうやら先生は悪い人じゃないみたいだ。今のラムネにも毒らしき物はなかったし、さっきの攻撃もおどしだった。優しいかどうかは別として、ね」

空になった瓶だけ渡される。ただ捨てるのもつまらないんで自然に返してやった。

「見たか?これがオレの能力だ。寺子屋の他の奴らには言うなよ。見せてくれってうるさいからな」

 そう言った途端、ルーミアの周りが真っ暗になった。中心をルーミアとした球状に漆黒ができている

「私の能力。先生が見せてくれたからそのおれい」

 さっきからこいつの言動が完全には把握できていない。弾幕も見たところパワーもスピードも自分よりも下。そこはいい。しかし、一見すると見た目に似合わぬ口調で話をする部分もあるが、さっきのラムネ飲む時の表情や、さっきの短絡的な能力の紹介。さっきの大人っぽい部分はない。見た目は子どもっぽいところはあるが、妖怪って点ではどれくらいの時を生きてきているのか。

「さて、もうストーカーごっこは終わりだ。さっさと帰るんだな。まだ昼も食べてないし、服を買いに行く途中なんだ。じゃあな」

「ルーミアもお腹すいたー」

自分の周りをルーミアがぐるぐるまわる。時々自分の目を見に顔を見上げるが、そのたびに視線をずらす。

「お腹すいたー、おーなーかーがー...」

「うるせぇな。さっきラムネやったじゃないか。我慢しろ。いや、そもそもお前の飯の面倒を見る義務はない!自分の飯は自分でやりくりしろ!」

「ふーん...。じゃあ、先生の手だして」

 言われたまま右手を出す。

「自分で見つければ、食べていいんだよね?」

「ああ、そうだけど...それとこの手はなんの...関係がッ!」

 手を噛みちぎられる。手相の半分が判別不可になる。左手で手首を押さえながら、痛みで涙ぐんだ目で噛んだ本人を見ると、すでに口の中で指がバラバラに噛みちぎられていた。

「うおおおお!!てめぇこの!」

 制服のボタンを食べられた部分に合うように右手の一部に変えた。生命エネルギーで痛みを和らげながら、呼吸を整える。

「ちっ、わかった、わかったよ!食わしてやりゃいいんだろ?なんてガキだ...」

「さすが先生、優しいんだね」

「指食べながらしゃべるな。行儀悪いぞ」

必死に悪態をつくが聞こえていないらしい。ルーミアはすでに前の方に進んでいる。自分の指の方は神経が繋がってはきたが、帰ったら包帯で巻いておこう。

「先生、せんせー、アレ見てよ、あれ」

大きく手をこちらに振って合図している。もう片方の腕はどこかを示している。路地の方のようだが。

「アレだよ、あれナンパっていうんでしょ?」

「ナンパァ...?どこにいる?」

頬を引っ張られそのナンパ現場を見せられる。さっきやったように音を聴くと2人が1人を誘っているようだ。

「お前、よくナンパなんて言葉知ってたな。普通は知らないと思うぜ、お前くらいの見た目の子は」

「けーね先生が教えてくれた」

「そりゃ職務怠慢だな。あと1ついいか、あれはナンパじゃないぜ。ルーミア」

「?じゃあなんだ?」

猛禽類の眼球を使いながら解説する。2人の男の姿で女が影になって見えないが状況は把握した。

「お前は見えないとは思うが、左の男は刃物、それも20cmはあるナイフを持ってる。隣はけっこう鍛えられた体をしてるし今話してるあの子の両腕を粉々にするくらいはできるだろうな。あれはナンパじゃなく簡単に言えばカツアゲだな」

「詳しいんだね先生。じゃあこっちも1つ言っていい?あの娘なかなか美人だったよ」

「.........ルーミア、ちょっと待てよ。今から本物のナンパが見られるからな」

路地の奥まで入っていくと、普通の耳で十分聞こえるほどに会話が聞こえてきた。

「早く金出すか、服脱いで帰るか決めろ!」

「両方やられてもいいんだぞ、ハハハ!」

「...早く通してもらえませんか」

「何帰ろうとしてんだテメェ!そんなに血見たいんなら!今すぐに見してやるぜー!」

腕が振り上げられたと同時に話しかけた。2人組も絡まれた美人さんも視線はこちらに動いた。

「お兄さん方盛り上がってますねー。オレも混ざらしてくださいよー」

「なんだこのガキはー。ガキは早く家に帰れ!ぶん殴るぞ!」

「いえいえ、別にあんた達の邪魔をしにきたんじゃないさ。偶然通りかかったらカワイイ娘がいたんもんでね。用があるのはこの娘にですよ」

「それゃ生憎だが、俺達もこの女には用があるんだ。有り金全部もらうことになってるんだが、一向に払わない。服の一切れも置いてく気はないと言う。この落とし前つけねぇと俺らは人としてナメられてることになっちまう。それとも代わりにあんたが全部払うかい?」

ポケットに手を入れて、取り出した財布を地面に叩きつけた。

「オレの所持金全部だ。預けとくよ」

「お前相当キてるやつだな。この金は医者に渡すべきだったな」

目標、目のふち。距離30~50cm。飛魚弾、生成...射出!

「いあああいいぃぃ!目が俺の目がァァァ!」

「財布の中から魚が飛び出した!?いったい何が起こったんだ

?!ヒッ!」

ゆっくり近づいていくと、同じように刃をゆっくり見せられ大声で叫ばれた。

「動くなァ!不気味なやつだ...。動くなよ、手上げて後ろ向け!」

命令通りに後ろを向いて、手を挙げたまま後ろの男の様子を探る。段々と気づかれないように近づいてきているようだ。

「よくもダチをやってくれたなーッ!お前の体ごと服を切ってそれを売りさばいてやるぜッ!!」

壁からヘビがパーティークラッカーのテープのように飛び出す。

「地面に伏せろとかなら可能性はあったのにな。まあ気にするな。どっちにしろお前らに金はやらんからな。むしろヘビたちにいくらか払っていってもらいたい」

 ヘビへの命令は攻撃だけにしたが『どのように』とは細かく決めなかった。そこはヘビの本能によるだろう。せっかくだし観察しとこう。

「動く方向に噛み付いて...尾でも攻撃するのか。毒はないからその分攻撃性は低く見える。気性もおとなしい部類か」

 待っているルーミアに合図するとすぐに駆け寄ってきた。倒れた男2人には見向きもしない。やはり種族的な違いからだろうか。

「先生、このヘビ食べていい?」

「シロアリ以外にはおすすめしないね。あいつらも好きで食べてないし。さて、用があるのはそこの君だ...お嬢さん?」

財布を拾いながら話しかける。赤髪にリボン。顔は聞いた通りの美人だ。女モノの服というのはよくわからないんだが、首にやけに長い襟の付いたマントを羽織っている。

「私のことかい?助けたのは君が勝手にやったことだ。お礼は言うけど頼んだ覚えはないよ」

「そうそう、美人だって聞いた途端にこれだもん」

 うるさい生徒の頬に拳を添え話を続ける。

「あれこれ話するのが好きなんだ。これから食事にでも出かけませんか?」

「私にも用事がある。無駄話をする時間はもうないんだ。それでは」

 そそくさと女性は歩いていく。上とまではいかないか、中の上ほどだな...。死神とか守谷の巫女ちゃんレベルを求めてはないが。やはり少しくらいは視覚的財産が欲しいかな。

「フラれたね、先生」

「フラれた?妖怪にフラレるのは数えないんだよ、オレのルールでな」

 女性の動きが止まったのを感じた。さっきより脈が早まっているようだ。

「おっと聞こえたか?だろうなぁ、遠くの君のために言ったんだからなぁ!」

 こっちに向かってくる。顔は見えないが汗をかいているのはわかる。この生命の流れは何度も見たことがある。どんな生物でも共通のものの1つ。緊張状態だ。

「いつ知った?私の正体を。それに君こそ何者だ?」

「用事はいいのか?だったら食事でもしながら話そうじゃないか、」

ちょっとだけ長めだったから遅れたのはお兄さん許して

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