鉄道への夢を駆け抜ける不眠の夜 ~妹・茉白の優しいお願い~
「嘉禾鉄道学院か……」
小林拓真が小さく呟く。
「この学院、なかなかの難関だな。もっとしっかり勉強しないと……」
志望届の用紙をじっと見つめながら、拓真は思案の末にペンを走らせる。
第一志望、嘉禾鉄道学院……。
「ゴホッ、ゴホッ……」
拓真が小声で漏らす。
「きっと……昨夜の徹夜勉強のやり過ぎに、昨日の寒さが重なって、体にきちゃったんだろうな……」
小林拓真はため息をつきながら、口ごもるように何やらブツブツと呟いた。
「今日も……勉強……続けなきゃ。遅れは取れない……」
時間はあっという間に過ぎ去り、気づけば拓真は夜が明けるまで復習を続けていた。
血走った目をこすりながら、拓真は信じられないといった顔で窓の外を見つめる。
「もう朝か?!」
「なんでこんなに時間が経つんだ! いざという時にいつも時間が足りない!」
小林拓真は、やけくそ気味に頭をガシガシと掻き毟った。
「これじゃ、まずいだろうな」
部屋から出てきた妹は、そんな兄の姿を見て、心配そうに眉を寄せた。
「お兄ちゃん様、お顔が真っ赤ですよ……この学校に入るために、お兄ちゃん様はこんなに頑張ってきたのに、茉白にお兄ちゃん様の役に立てること、何かないのかな」
「お兄ちゃん様、勉強はメリハリが大事なんです。体を壊してまで勉強しても、意味がないんですよ、お兄ちゃん様」
小林茉白は焦った面持ちで兄を見つめ、その瞳には心配と気遣いが満ちていた。
「お兄ちゃん様、お顔色が悪い……この様子じゃ、実力が試されるその日まで、きっと持たないわ」
「どうしよう……このままじゃ、いけない」
茉白は自分の部屋から、勉強の合間に兄の張り詰めた神経をほぐしてほしいと、軽小説の小さな束を持ってきた。
「お兄ちゃん様、茉白のところに息抜き用の軽小説があるんです。勉強の合間にちょっと読んで、気持ちを楽にしてほしいの。無理に読む必要はないから、お兄ちゃん様のペースで」
「軽小説? そんなもの、勉強の邪魔にならないか?」
「ちょっとだけなら、大丈夫ですよ。お兄ちゃん様が疲れてる時に、ほんの少しだけ」
「これか?」
妹の心配そうな顔を見て、拓真はこれを拒めば「兄を思う茉白の気持ち」を傷つけてしまうような気がした。
「じゃあ、とりあえず俺の部屋に置いておいてくれ。気が向いたら読むよ」
「わかった。机の横にそっと置いておくね、お兄ちゃん様。勉強の邪魔にはならないから」
「妹が出てくるお話とか、読んでるだけでほっとできるお話もあるの」
「お兄ちゃん様、きっと気に入ると思う」
小林拓真は、そんな妹の顔を見て少し胸が痛んだ。
「茉白は、自分のやるべきこと、できることだけやってればいいんだ。そんなに気を使わなくていい。茉白がそんなに焦ってると、兄として心配になるぞ」
「うん、わかった。お兄ちゃん様に心配をかけないようにするね」
小林拓真は茉白の頭を撫でた。
「いい子だ。茉白の気持ちは、兄としてちゃんと受け取ったぞ」
「お兄ちゃん様も、ちゃんと休んでね。無理しないで」
「わかった、そうするよ」
「じゃあ、学校に行ってくる。茉白もお留守番、しっかりな。勝手に外に出たり、知らない人には絶対ドアを開けるなよ……」
「わかった。お兄ちゃん様、気をつけて行ってきて。茉白、ちゃんと気をつけるから」
「そうだな、頼んだぞ」
小林拓真はもう一度、茉白の頭を撫でた。
「じゃあな、茉白。また夜にな」
「お兄ちゃん様こそ、体を大事にして。無理してないか、ちょっと心配なの」
「わかってる、気をつけるよ!」
小林拓真は家を出ると、自転車を漕いで学校へと向かった。
(俺も、少し焦りすぎたかな……)
小林拓真はそんなことを胸に秘めながら、ペダルを漕いで学校へと進んでいく。
こちらは本日の「お兄ちゃんと妹の日常ミニドラマ」です。
小林拓真の妹である小林茉白は、お兄ちゃんが大好きで心配でなりません。お兄ちゃん様にリラックスしてほしいと、息抜き用のライトノベルを渡すほど、茉白はすっかりその良さを理解しているようですね。
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