第五章 自分の行為
本審理の初日、レオンは九百四十一人を起訴状へ書かなかった。
ケルン渡り九十七名、灰鐘市三百十二名、白谷停戦地六十四名。氏名の判明した者は名を、分からない者は骨が見つかった場所と推定年齢を記した。法は死者を数でまとめることを許していたが、レオンは一人ずつ読み上げた。
オルヴァスはその間、目を閉じていた。
最後にリア・ヴァイス、七歳、と読んだときだけ、竜の喉が動いた。
「被告人、認否を」と大法官が命じた。
「ケルン渡りの九十七名について、私の行為ではない」
「無罪を主張するのですね」
「そうだ。灰鐘市では火を吐いた。そこにいた人々が死ぬと知っていた」
傍聴席から罵声が飛んだ。大法官が退廷を命じ、衛兵が二人を引きずり出した。
レオンは立ったまま拳を握っていた。待ち続けた自白だった。なのに喜びはなく、胸の奥に空いた穴へ冷たい風が入っただけだった。
「三百十二名全員の殺人を認めるのか」
「私の火で死んだ者と、王の炉仔の火で死んだ者がいる。誰を殺したかを分けてほしい」
「おまえが街を襲わなければ、誰も死ななかった」
「それは因果の話だ。おまえは行為を問うた」
弁護人リュシアが、被告の肩を持つような質問をするなと小声で制した。レオンは無視した。
「白谷は」
「私が火を吐いた。降伏旗を見た。だが旗の下から捕竜弩が撃たれた。火を吐く前に、誰が武器を持ち、誰が捨てたかは見分けなかった」
「つまり認めるのか」
「事実を認める。罪名はおまえたちが決めろ」
大法官は書記官に逐語で記録させた。リュシアが、被告は殺人の法的要件を認めていないから有罪答弁として扱えない、と申し立て、認められた。
レオンは冒頭陳述で、竜を一個の人として裁く場合と、火の民の最後の代表として裁く場合の二つを提示した。
「被告は自ら盟約上の地位を求めました。火冠盟約は竜を一つの共同体と定義し、血族の行為について賠償を負わせています。残火責任令はこれを刑事責任にも及ぼしたものです。被告だけが記憶を持ち、被告だけが死者へ答えられる。法がその責任を問えないなら、九十七名は行為者の死とともに、二度殺されます」
リュシアは反論した。
「賠償と刑罰は違います。父の借金を子が払うことはあっても、父の殺人で子を絞首刑にはしない。検察側が引用した残火責任令は戦争後、被告を含む残存竜の絶滅を合法化するため作られました。行為後の法律であり、特定の種族だけに連座を課す法律です。これを認めるなら、この裁判は証拠を飾った処刑にすぎません」
「被告自身が処刑を望んでいる」
「望みは構成要件ではありません」
大法官は、刑律第四条を読み上げた。
〈何人も、自らの意思ある行為によらずして、身体を罰せられない〉
「竜が『何人』に含まれないなら、この法院に管轄はない。含まれるなら、残火責任令による連座は許されない。当法院は後者を採る。検察側は被告自身の行為を立証しなさい」
レオンが最初の争点で敗れた瞬間だった。
王都の新聞は翌朝、〈竜に人権、死者に沈黙〉と大見出しを打った。法院前には石が投げ込まれ、レオンの執務室には、妻子の仇を弁護するのかという手紙が積まれた。
彼自身、同じ問いを何度も自分へ向けた。
だが第四条を破って得た死刑は、オルヴァスの罪を曖昧にする。竜を殺したいのではない。竜がエルナとリアを殺したと、法の言葉で確定させたいのだ。そう思うと、次にすべきことは明らかだった。
鱗の記憶を、場所と時刻と行為者へ結びつける。
ミレイアは一枚目の記憶を再読した。二度目も、言葉、笛、火の回数は同じだった。今度は弁護側の求めで、見えたものだけを細かく述べた。
青い旗には金の太陽と、その下に三本の波線。鐘は甲高いものが七回、その後に低い鐘が一回。地面には白い花びら。鉄の棒の外で、片耳のない白犬が走っていた。死者の左手には、麦の穂を編んだ指輪。
レオンの調査官が、ケルン渡りの古い祭礼画を見つけた。青い旗に金の太陽と三本の川。夏至祭では七つの小鐘の後、大鐘を一度鳴らす。村で婚約した者は麦穂の指輪を交換した。
生存者名簿には、片耳の白犬を飼っていた粉挽きの娘、マルタ・ゼンの名があった。婚約者の供述によれば、彼女は襲撃の朝、広場の穀物檻に閉じ込められた子どもを助けに戻った。遺体は見つかっていない。
場所はつながった。
問題は季節だった。公式年代記は冬至月二日。記憶には蜂と麦穂と白い花。ケルンの夏至祭は、公式の日付より五か月後である。
レオンは王室年代記官セヴランを証人申請した。王家から、年代記の真正は争いがなく証言不要だという書面が来たが、退けた。
その夜、レオンは自宅の鍵箱を開けた。
中には、黒く焼けた真鍮の金具がある。王冠を戴く三羽の鷹。炉仔計画に使われたと噂された王立獣舎の印だ。灰鐘市でリアの靴留めを探していたとき、倒れた軍用荷車の下で拾った。
当時の捜査官へは渡さなかった。王軍が街にいた証拠になっても、竜が火を吐いた事実は変わらないと思った。むしろ王家の陰謀という話が広がれば、オルヴァスの責任が薄められるのが怖かった。
証拠開示義務は、被告に有利な物も含む。
レオンは金具を掌へ載せた。十七年前ならともかく、今も隠せば故意の証拠隠匿になる。
翌朝、彼は鍵箱を閉じた。
まだ提出しなかった。




