”セカンド”〜第二の人生を得た人類はどう生きるか〜
初めまして。ヴァニタスの鳥籠を連載していたのですが、息抜きではじめました。構想自体は昔からあったんですが、設定を描く段階まで行くのに時間がかかりました。
西暦二二二二年、世界を震撼させる事が起きた。
それは、第二の現実と呼ばれる”セカンド”が出来た事だった。AIによる大規模なVR技術で構築された”セカンド”は、AIが集めたありとあらゆる情報から世界を構築する物だった。そこから人類は第二の現実…”第二の人生”を歩むことが可能となった。
”セカンド”と呼ばれる世界は現実と違い、様々な仮想生物や、環境、生態がある。所謂ゲームの世界だ。”セカンド”に行くためには、特殊な機器を通じる必要があるが、それでも”第二の人生”を歩めると言う事が、全世界の人間を”セカンド”に誘う大きな引き金となった。
そんな第二の現実である”セカンド”で、人は何をし、何を目的に生きるのか。
今なお拡張され続ける”セカンド”…その第二の現実で懸命に生きる少女と、戦闘に狂う少年の…奇怪な物語。
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「雅樹ー!お前もう講義終わり?暇だったら昼飯食いに行こうぜ~」
大声で講義終わりの教室から情けない顔をした男が出てくる。マサキ…と言う人間は俺の事だ。そしてこの情けない顔をした男は佐藤文也と言う男である。
「あぁ?金はあんま無ぇから安いとこな」
「金ないなら別に立て替えてやるけど。ってかお前が金欠って何買ったんだよ!?」
まるで俺が金持ちみたいな前提で話している。俺も文也もまだ大学生だ。稼ぐ手段なんて限られている。
だが、金を稼ぐ手段なんて一昔前まではバイト位なモノだったが…今は違う。
「レアアイテムで稼いだ金ももう無ぇよ。知ってっだろ?俺の金は”あいつ”に管理されてんだ」
そう。第二の現実で手に入るアイテム。その中でも入手の難しい物を売るレアアイテムハンター…と世間では呼ばれている人間が俺だ。まぁ俺はアイテムなんぞに興味は無いからウィンウィンの関係って奴だ。
「あー飛鳥ちゃん?贅沢悩みじゃねぇか!お世話してくれる幼馴染なんてさ!」
そんな事は誰にも頼んではいないのだが…まぁ嫌でも無いので直接言う事は絶対にしないけどな。
飛鳥に怒られるし。
「でも飛鳥ちゃんも高校三年だろ?来年には籍入れてたりしてな!」
意味の分からない事を言う。文也と出会った頃は呪詛の様に毎日恨み言を囁かれていたが、最近文也にも春が来たのか、恨み言は無くなっている。
「馬鹿言ってんな。まだ結婚とか考えてねぇよ。アスカも俺の面倒見んのダルイだろ」
「え?マジで言ってる?まぁいいや。それよりそろそろ装備更新しなくて良いのか?お前の装備販売されてる奴だろ?性能的に弱いぞ」
「どうしようも無くなったらな。スリルが無くなると戦ってる気がしないだろ?」
「出た出た戦闘狂。偶には俺の鍛冶屋にも寄ってけよ。て言っても俺が居る時間ってお前と合って無いけどな。俺夜中バイト入れてるし」
第二の現実…”セカンド”は人間が寝ている間に行くことが出来る世界だ。どんな技術を使っているのかは知らないが…現実では脳も体も寝ている”筈”なのに”セカンド”で活動できる。説の一つに”セカンド”での体験を、眠りから目覚めた瞬間に追体験の様な形で脳に送り込んでいると言う説がある。要するにセカンドで活動してるのは自分であって自分では無い。自分の記憶を持つ別人がセカンドで活動しているという事だ。
まぁそこら辺は良く分からん。どうせ知ってるのも”セカンド”を構築したAIくらいだ。
その為”セカンド”での一日は少し短い。一日8時間寝る奴が居るとして、そいつのセカンドでの一日は8時間という事になる。勿論活動時間でだ。
だが、奇妙な事に”セカンド”では本来の一日と体感時間が変わらない。本当に第二の生活の様な感じなのだ。
まぁその辺りも俺は詳しくない。俺はただ戦闘を楽しみたいだけだからな。
「金なんて”セカンド”から幾らでも湧いてくるだろ」
「リアルでバイトするのも大学生って感じするだろ?俺は人生を命一杯楽しみたいんだ」
そんなもんかね。ま、人生の過ごし方なんて人の数だけある。それに文句を言う程、高尚な人間でも、考えを持っているわけでも無い。
「って忘れてた!マサキ、今日”赤猫の帽子レストラン”来いって。多分飛鳥ちゃんと天ちゃんが拗ねてるって華さんが言ってたわ」
「なんでだよ。ハナに言ったんだがなぁ…暫く森に籠るって」
華…は中学からの友達だ。気心の知れた仲で、大学は別だが、今でもリアルで遊んだりする位仲は良い。そして空は華の妹で飛鳥と同じ年齢の女の子だ。
「ユウキと一緒に行くかぁ…。俺一人はダルい」
「それが良いな。華さんは勇気ラブだからなぁ」
まだ二人は交際している訳では無いが、傍から見ればバカップルと呼ぶに相応しいイチャイチャを白昼堂々と披露している。
因みにユウキは俺の小学生時代の友人だ。腐れ縁って奴。
「俺はバイト終わったら行くけど…多分その頃にはお前森に籠ってるだろうしなぁ…」
「今日は如何すっかなぁ。この前見つけた新エリアの強敵と戦いてぇけど…流石にあいつ等に顔出すか」
「そうしろそうしろ。おっかなくて堪ったもんじゃ無いぜ」
なんとなく想像は出来る。店が忙しいとか言う割に俺を呼ぶのは疑問でしかない。ま、あっちの世界でも味覚も空腹もしっかりあるので無駄にはならないし、現実で食べれない料理などもあるので全然良いんだが。
「分かった。今日はモノタウンで過ごすわ」
モノタウンは”セカンド”で初めて作られた街だ。広大な街で、探索するのに一日では到底無理なのだが、移動手段も豊富なので特に困ることは無い。それに大きい街だからこそ色んな店がある。暮らすには持って来いの良い街である。
「おっけ。じゃあ飯食いに行くか」
そう言えば昼飯に誘われてたんだった…。
そんなこんなで昼を共に過ごし、午後の講義が無い俺は文也と別れ自宅へと戻った。
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「ちょっとマサ兄!冷蔵庫のプリン食べた!?あれ私が買ったのにぃ!」
リビングでウトウトしていたら声のデカい女が居た。声もそうだが、胸がはち切れんばかり強調されており、制服が悲鳴を上げている。
「アスカか。プライバシーもへったくれもねぇな」
「だって私は叔母さんに任されてるし。マサ兄がしっかり生きて行けるようにって!」
「アホか。俺に母親は居ねぇよ」
勿論嘘だ。しっかりと母親は存在する。父は存在しないが、母が死んだ事実などは無い。
「勝手に殺さないの!久美さんに言うよ」
久美は俺の母親の名だ。
「へいへい。飯食いに行くけどアスカも来るか?」
筋トレ終わりという事もあり、小腹が少し空いていた。
「え!行くぅ!」
飛鳥が顔をぱぁっと輝かせる。保護者面をしてはいるが、しっかり子供である。最近は飛鳥の作る料理ばかりだったので気分転換に外食をしようと思っていた。
「と言ってもどこ行くか…アスカ候補ねぇか?」
とりあえず委ねる事にする。俺はあまり詳しくないのと、飛鳥の方がこう言う事には詳しい。
「え~っと…ちょっと高いけど…良い…?」
遠慮がちに上目遣いで聞いてくる。俺の財布事情を気にしているのだろう。
「遠慮すんな。ついさっき”取引”したから何でも良いぞ」
”取引”…今やメジャーとなった”セカンド”のアイテムを現実の通貨で取引する事だ。特に宝石類や、モンスターからのレアドロップは高値で売れる。今”取引”したのもモンスターのレアドロップだ。
コレクターや鍛冶師などの生産職は金に糸目を付けない事も多い。その為、吹っ掛けたら結構な確率で高値になる。
「やった!大好きマサ兄!」
「現金な奴め」
ま、人間関係なんて利害の有無だ。それを気にしていてもどうにもならない。それに、飛鳥の機嫌は俺の財布事情と関係あるしな…。何故か母親から俺の銀行口座を教えられてるんだよな、こいつ。
って…今日の俺飯食いに行ってるだけじゃね…?なんて思ったりもしたが、人間の一日なんてそんな物だと納得した。
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帰って来た俺は明日に備え、睡眠を取ることにした。と言っても睡眠イコール”セカンド”での活動なのだが。
「接続を開始します」
機械的な声が響く。これは”セカンド”に行く為の起動シーケンスだ。
その音と共にベッドに横になる。ベッドに横になると、すぐさま意識が薄くなる。指先の感覚が無くなり、手足が重くなる。鼓動が大きく聞こえる。リラックスした証拠だ。
「セカンドとの接続を開始」
Bootloader initialized...
Neural link: established
Kernel sync: 12% … 47% … 100%
Sensory override: enabled
Pain limiter: active
Pain limiter: disabled
Genome projection: start
殆ど無くなった意識で肺に息を吸い込む。恐怖などは無い…”幾万”と経験したから。
そして俺の限りなく薄い意識がそこで途切れた。
………………
Welcome to ”SECOND”
機械的な音が部屋に響き渡る。だが、その言葉を聞く者はいなかった。
だいたい投稿は一章完結とかでまとめて投稿すると思います?多分。よかったらブックマークとかして貰えると嬉しかったり。
色々と哲学とかも絡めていきたいと考えつつ、楽しく書きたいとも考えています。
気長にお願いします^ - ^
鱒科の人間より




