表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/96

94話

 インポリオ侯爵家での問題が片付いたと思ったら、今度はスヴェツシ男爵家にて問題が発生したらしい。

 その情報を宮廷魔法師の寮で受け取ったブリルーノは、また秘薬でも入手したのかと訝しみながら、スヴェツシ男爵家に向かうことにした。

 そしてスヴェツシ男爵家の屋敷に到着すると、上を下への大騒ぎの真っ最中だった。


「おい、どうしたんだ?」


 ブリルーノが使用人の一人を捕まえて話を聞こうとすると、その使用人はブリルーノを見て天の助けを見たような顔になる。


「お待ちしておりました、宮廷魔法師筆頭様! 話よりも、まずは奥様の寝室に!」

「おい! 背中を押すな!」


 ブリルーノは使用人に押されて、屋敷の中にあるスヴェツシ男爵夫人の寝室に運ばれてしまう。

 事情を理解しないままやってきた寝室。

 その中に入った瞬間に、ブリルーノは強く眉を寄せた。

 なぜなら部屋の中には、ベッドに横になっているスヴェツシ男爵家夫人だけでなく、せっせと彼女の世話をする使用人の他に、ベッドの横に立つ医者と思わしき白衣の男性もいたからだ。


(夫人が急な病気になりでもしたのか?)


 妊婦が病気に罹患すると、その影響は胎児にも及ぶことがある。

 だからこそ、屋敷中の全員が大慌てで夫人の病気を治そうとしているんじゃないか。

 ブリルーノは、聞かされていない事情をそう予想しながら、ベッドに近づいた。

 そしてベッドの上のスヴェツシ男爵夫人を見て、楽観的な予想は大外れだったことを理解した。


「おい、これはどういうことだ。なんで出産しようとしている!?」


 ベッドの上とその周りの光景は、今まさに出産を始めようとしている様子だった。

 しかしブリルーノが把握している予定では、スヴェツシ男爵夫人の出産は二ヶ月以上は先。

 だから普通は産もうと思っても埋めない時期で、出産準備をする意味はないはず。

 ブリルーノが混乱していると、白衣の男性が近寄ってきた。


「貴方が、ノブローナ王妃様より助産を命じられている、宮廷魔法師筆頭殿ですね」

「そういう貴方は?」

「幾つかの低位貴族の家と契約している医師です。この家の夫人の窮状を聞き、やってきたのですが……」

「悪いが、詳しい状況を教えてくれ。どうして出産させようとしている。まだ時期は来ていないはずだ」


 ブリルーノの問いかけに、医者は言い難そうに言葉を紡いでいく。


「それがその。夫人が破水したそうで。もう産むしかない状況なので」

「破水? 俺が以前に診察したときは、そんな兆候は欠片もなかったぞ?」


 胎児は順調に育っていたし、スヴェツシ男爵夫人は貴族の奥方なので体を疲労させる仕事や運動とは縁遠い。

 だから急な破水が起こる理由がない。

 ブリルーノが疑問を積もらせていると、医者は耳打ちする形で真相を話した。


「実は昨夜、スヴェツシ男爵様が夫人の腹を殴ったそうなんです。ノブローナ王妃様の御子と同年代になれないのならば、子供を作った意味がないと。夫人は殴られた表紙に失神し、お付きの使用人がこの部屋まで連れて退避させたそうですが、今朝ベッドを見ると破水しているのが確認できたと」


 殴られた衝撃か、失神という母体の状態異常が影響したのか。

 理由はなんであれ、スヴェツシ男爵の所為で破水が起こったことは間違いなかった。


「男爵家という階位の低い貴族だから、経済的に育てられる子供に限りがあるとはいえだ。殴って子供を下ろさせようだなんて、何を考えているのやら。それで、スヴェツシ男爵は?」

「誤解を恐れずに言うと、大変に喜んでおります。胎児が下りて死んでも、早産で無事に生まれても、スヴェツシ男爵にとっては嬉しいようで」


 スヴェツシ男爵が喜ぶ理由について、ブリルーノはすぐに理解できた。

 早産死するなら、ノブローナ王妃様の息子と同年代になれない子供が居なくなり、経済的に助かる。

 早産ながらも無事に出産できたなら、ノブローナ王妃様の息子と同年代になれるので、後々に王家との結びつきを期待できる。


「手前勝手なクソだな。だが今は、スヴェツシ男爵をとっちめるよりも、夫人の容体の方が重要だ。医師としての見解は?」

「正直言いますと、大変危険です。夫人が今大人しいのは、胎児に影響のでない程度の効力の薬で眠らせているからです」

「起きている間は、パニックを起こしているのか?」

「それはもう。胎児が死んでしまうと、誰でもいいから子供の命を救ってと、それはもう大騒ぎでして」


 ブリルーノは、あまり良い状態じゃないと理解し、舌打ちがてら魔力視の魔法でスヴェツシ男爵夫人の胎児の様子を確認する。

 まだまだ生まれるには早いぐらいにしか成長していない胎児ではあるが、現時点では生きていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
問題なく産まれてこられそうだったのにこういう事するかあ カッとなって動くタイプは近くには置いておきたくないですねえ
まあ家庭内の話だから他所がどうこう言う話ではないがブルリーノも大変だ
男爵家で旦那が尻に敷かれていたのはあくまで赤子のためだったのでしょうか? 殴って子どもを堕ろす際の奥方への負担、それで母子共に死ぬとは考えなかったのか。 王妃が嘆き、ブルリーノを派遣するのも無理はない…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ