第9話「ユナの選択と、監視者の願い」
《観測者》ユナ――
その存在は、WISHシステムの起動と共に“選ばれた”者だった。
彼女の役目は、記録すること。
願いが世界を変える瞬間を、静かに見届けること。
だが、彼女はずっと、問い続けてきた。
「私は、誰かの物語を記録するためだけに生まれたの?」
***
――都市エリア・コードX、旧バイオ領域。
高層の残骸に囲まれた場所で、ユナとレンは身を潜めていた。
「……ここ、前にも来た気がする」
レンが呟く。
「うん。あなたの願いが最初に騒ぎ出した場所。ここで、“最初の融合者”が生まれた」
「最初の融合者?」
ユナは目を伏せた。
「それは私。私が最初に、“科学者α”の装置で融合された存在なの」
「“観測”というコードと、少女としての私が、融合された」
レンは絶句する。
ユナの無表情の奥に、悲しみがあった。
「私の願いは、“誰かの物語を最後まで見届けること”。
でもそれは、他人の願いに寄り添うことでしか存在できない――“自分の物語”じゃない」
レンは迷わず答えた。
「それでも……俺にとっては、君が“いてくれた”から、立ち上がれたんだ」
「ユナ。君の願いを、君自身が決めてもいい」
その時――地響き。
黒い霧と共に、巨大な影が現れた。
「観測者を“起動制限外”で稼働させた罪。記録破損、確認」
黒装束の男――コードA。
科学者αに従う、“記録整合執行者”。
「君は予定を逸脱した。ゆえに、ここでリセットされるべきだ」
ユナが一歩前に出る。
「……なら、私は戦う。誰かのためじゃない、自分のために」
《WISH:ユナ・コードE 起動》
白銀の光に包まれ、彼女の体を包むのは――記録装甲《レコード=ウィッシュ》。
その力は、“観測者自身”が願ったことで初めて発動する、最上位のバトルスーツ。
「私は――見届ける側じゃない。
私は……“この世界に生きる一人”だ!」
そして、戦いが始まる。