第五章- 暗黒の騎士ナインライダーズ-2 不死身の化け物たち
※ 第五章、死闘開幕。
黒き騎士たちの襲撃。
そして、その中心にいたのは――
失われたはずの英雄だった。
記憶のない英雄の瞳に、確かに怒りが宿っている。
「子供に手を出すな」
「子……供……」
風牙麓の仮面が、わずかに歪んだ。
「……シグルド・スカーレット。
今任務の最重要捕縛対象……」
二人の英雄が、灼熱の平原で激突する。
炎と風が交錯し、大地が裂けた。
その背後で――
「ふふふ……面白い」
ミスティルが、笑った。
その美貌が愉悦に歪む。
「ナインライダー? いいじゃない」
隣で塵芥鏖が、赤い瞳を細めた。
「神樹世界主神の犬か。
……どこまで壊せるか、試してみるか」
白い髪が逆立つ。
「さぁ、実験開始だ」
九つのナイトライダーが、一斉に動いた。
目標は、3人の“カケラ”保有者。
だが――
「――邪魔よ」
今宵鵺の銃口が、ロート・エリゴス号の後部座席から火を噴いた。
一発。
ただ一発。
先頭の一騎――風牙麓の肩口に、黒い孔が開く。
「――っ!?」
仮面が割れ、中から血が噴き出した。
「肉体、損傷。
……だが、任務は継続」
風牙麓は、傷口を押さえながら、なおも前進する。
シュリが、涙を流しながら立ち上がる。
「お父様……!
生きていたの?
でもどうして……!?
どうして、私達を襲うの……!」
風牙麓の瞳が、一瞬だけ、揺れた。
「……シュ…リ……?」
ほんの一瞬。
だが、それで十分だった。
「――今だ!!」
オームが叫ぶ。
ユグドシラル・ハスター号の砲門が開く。
「魔導砲・全弾発射!!」
ミサイルが、灼熱の平原を切り裂いた。
ナイトライダーたちが、初めて後退する。
だが――
「甘い」
空が、裂けた。
白い光。
メルコール・ヴォータンの声が、平原全体に響き渡る。
「調整、継続。
九騎、完全展開」
九つの影が、地面に吸い込まれるように消え、すべてのミサイルが爆発し終えた後一斉に実体化する。
その中心で、風牙麓がゆっくりと立ち上がる。
仮面が完全に砕け、かつての優しい顔が覗く。
だが、瞳は虚無。
「……シュリ」
風牙麓の声が震える。
「私を……殺せ」
「今ならまだ……
父のままだ」
「お父様……!」
「今の私は、
メルコールの九つの指輪に繋がれた
奴の奴隷に過ぎない」
風牙麓が、両手を広げる。
「すぐに私の正気は消える……
だから……
躊躇わず、私を消し去りなさい……」
「そ、そんな!」
「があ……あ……私は……とっくに死んだ亡霊だ……勇者の力を持つ者達よ……私を殺………敵補足……討伐再開!」
風が、咆哮する。
「――風牙の葬送曲」
大気が、裂けた。
シュリの静寂魔方陣が、粉々に砕かれる。
「――っ!?」
全員が、吹き飛ばされる。
砂煙が舞い、視界がゼロになる。
その中で、ただ一人――
フレアが、立ち上がる。
涙と血で顔を汚しながら、叫ぶ。
「やめろおおお!!!
メルコール神、風牙さんを弄ぶな!!シュリのお父さん――
シュリの家族なのに!!!」
その声が、奇跡を呼んだ。
風が、止まる。
風牙麓の動きが、一瞬だけ止まる。
「……家族……シュリ?」
虚無の瞳に、ほんの一瞬、揺らぎが走る。
だが――
「排除」
他の八騎が、一斉に襲いかかる。
絶体絶命。
その時――
「――遅い」
背後から、冷たい声。
白髪の少年――塵芥鏖が、片手を上げた。
「支配操作・反射」
八騎の攻撃が、すべて跳ね返される。
「――っ!?」
ナインライダーたちが、初めて驚愕する。
ミスティルが、笑う。
「さぁて、遊びは終わりだ。
ここからは、俺たちのターン」
黙示録の四騎士を束ねる魔王が、一歩踏み出す。
「――覚醒・魔王形態」
光が爆ぜる。
黒と水色の龍の衣装を纏う。
その瞳は、完全に覚醒している。
「ナインライダー? いいぜ。
全部、食べてやる!」
灼熱の平原が、戦場に変わる。
九つの影と、レーサーたちの戦いが始まった。
冥界ヘルヘイムへの、入口で――
「お父様……!
帰ってきて……!
私、いつか会えるって信じてずっと待ってたんだよ……!」
シュリの涙が、砂に落ちる。
風牙麓の指が、わずかに震える。
だが、仮面はもう、二度と優しい顔を見せない。
「任務優先」
冷たい声。
風が、再び咆哮する。
――第5区間、開幕。
ナイトライダーとの、死闘の幕が、今、切って落とされた。
レッドが前に出る。
「顕現せよ!ヤマンソス・ドゥヴェルクの力!皆曰く、その性は雄風高節にして磊落不羈、他に並ぶものなくして、古今独歩の大豪傑なり。その名は人々の口からも生々世々絶えることなかるべし。変!神!ロート・ジークフリード!!!」
紅のHEROが顕現しナイトライダー達の前に立ち塞がる。
「俺が正面を引き受ける!フレアはサイドから牽制!」
「任せろ!」
フレアが剣を抜く。
「ミリル!雷音と一緒に行け!風牙麓さんを奪還するため、他のナイトライダー達を排除するぞ!」
獅鳳が指示を飛ばす。
「わかったのだ!」
ミリルが頷く。
「あーもう!なんでこんな時にライオナのまんまなんだよ!」
雷音が嘆く。
「しょうがないわよ。でも変身中は肉体強度が落ちた分、魔法力が跳ね上がってるみたいよ?」
雷華がフォローする。
「まぁいいや!とにかく行くぞ!」
雷音が鞭のように長い髪を振るいながら走り出す。
──灼熱平原の中央、砂と陽炎が砕け散る。
「無茶無理無謀と言われようと意地を通すが漢道!!無茶でも壁があったら殴って壊す!無謀でも道がなければこの手で切り開く!無理をとおして道理を蹴っ飛ばす!無茶無理無謀、そんなものは殴って壊せと俺の拳が唸るのさ!それがこのオレよ!不撓不屈のHEROアーレスタロスの生き様よ!!いくぜ、変!神!!!」
蒼い閃光に包まれ漢児がアーレスタロスに変身する。
漢児が吼え、青紺の装甲が稲妻の骨格を描いて展開。胸部コアが鳴動し、背面に古代符号が浮かぶ。足裏が砂を踏み抜き、熱と魔力を吸って鈍く光った。
「来いよ、“黒い騎士”!」
刹那、三つの影――槍、鎖、曲刀を携えたナイトライダーが弧を描いて襲いかかる。レッドが紅の光柱で割り込み、両腕を十字に組んだ。
「《ロート・ジークフリード》――紅の勇装、最大出力ッ! 抜刀バルムンク!」
「遅れるなよ、アーレスタロス!」
炎が槍を飲み込み、鎖の蛇が赤熱してねじ切れる。だが、騎士たちは炎の内側で“音もなく”立て直す。空洞の眼窩に青白い灯。恐怖ではなく、空虚。
「おいおい、燃えながら動くかよっ……!」
そこへ、黒の炎尾を引いてダークフレイム――シグルドが突入。拳が一つ、砂と熱と空気をまとめて殴り飛ばす。
シグルドが懐から赤い宝石を取り出す。
それは、彼が記憶を失う前に討伐した
赤き炎の巨人ピュリノス・ギーガスの核。
記憶喪失の兄を案じた妹クレオラが託した、
強力な護身宝具だった。
「次は、俺が行く」
灼熱の平原で、
黒騎士たちが一斉に身構える。
三騎のHEROと三騎の黒騎士が、灼熱の平原で向かい合う。
次回――
父を救うか。
父を討つか。
冥界前縁、
ナインライダーズとの死闘が激化する。




