乂阿戦記1 終章 これは始まりの物語の終わりの闘い-3 イエローカンフー
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一方蒼の勇者アーレスタロスは黄色の拳法家と戦っていた。
血の香りがしみついた武道場――かつて幾千の拳士が汗を流し、夢破れ、志を散らした場所。
今、その場に再び死闘の火蓋が切られた。
蒼き勇者アーレスタロス。かつて狗鬼漢児と呼ばれた男。
その身に青き鎧を纏い、勇魔共鳴によって水の魔法少女・絵里洲の魂を背負いし戦士。
その前に立ちはだかるは、黄色いカンフー服を纏った無言の死体――
邪神ナイアルラトホテップの手によって蘇った、魂なき拳法の人形。
「……この動き、永春拳……否、ジークンドーか……?」
蒼の鎧の内側で、漢児は冷静に敵の技を見極めていた。
流れるような構え、寸勁のような拳撃、スイッチの如く切り替わる攻守。
それは、かつて映像の中で見た“李小龍”の再来のようでもあった。
「ちょおおおあぁああああ!!!」
黄色い拳士が怪鳥の如き咆哮を上げ、飛び蹴りを繰り出す。
その軌道は鋭く、美しい。だがそれ以上に、異様だった。
死んだ肉体が宿す、異常な再現性――拳士の技は、まるで生きていた頃の魂の記憶にすがるかのようだった。
「だったら……あんたの拳、受け止めてみせる!!」
アーレスタロスの身体が蒼きオーラに包まれ、拳が光る。
地を這うようなステップで踏み込み、寸の間に拳と拳がぶつかり合った。
烈風が吹き荒れ、床がひび割れ、壁に貼られた御札が舞い上がる。
技の応酬、意地のぶつかり合い――
この場はただの模擬戦などではない。
武道そのものの魂が、ここに集っていた。
「……あんた、生きていたら本当はこんなもんじゃないくらい強かったんだろうな……」
漢児がつぶやいた。拳士の動きが、わずかに鈍る。
それを見逃さず、彼は背後に回り込む。
一瞬。
その肉体は宙に浮かび、石の床に叩きつけられた。
かつて師であるスパルタクスから学んだ、投げ技の極致。
「アンタとは、生きてるうちに……拳を交えたかったな」
アーレスタロスの背後に、絵里洲の霊体が静かに浮かんでいた。
その手は祈るように組まれ、唇が呪文を紡ぐ。
「彼の魂が……安らかに還れますように……」
漢児が拳を構え、最後の一撃を放つ。
「——鎮魂の祈りを、この拳に乗せる。超鉄拳アーレスブレイク!!!!」
拳が胸を穿つ。だがそれは殺意の一撃ではない。
魂を解き放つための、慈しみの一拳だった。
拳士の身体が崩れ落ちる。
その表情には、確かにあった。穏やかな、微笑のような安らぎが――
そして、武道場に残ったのは、ただ一人。
静かに佇むアーレスタロスの姿だった。
拳を握るその手には、勝利ではなく、鎮魂の重みが宿っていた。
*
ニンジャと拳士を倒した蒼と翠の勇者ペア達は変身を解き、鵺に体力を回復してもらう。
下がった四人に代わって、雷音とミリル、オームとエドナ、神羅と白水晶の六人が前線に出る。
巨大な真紅の刀を構える赤い甲冑のサムライ、巨大な盾と槌を構える蒼いフルプレートアーマーの騎士、巨大なライフルを構える緑の軍服のスナイパーと黄緑観測手のコンビ。
因縁の相手ナイアとピンクのサキュバスは後方に控え、なにやら呪文をとなえていた。
ナイアの魔法が発動する前に決着をつけようと、エドナとミリルが動いた。
だがナイアはそれを予期していたのか、重力の魔法を発動しミリルの動きを止める。
ナイアの詠唱が終わると同時に、空間がねじれた。
彼女の周囲に、漆黒の球体がいくつも浮かび上がる。
その表面から這い出すのは、異形の触手――ぬめりと脈動を帯びたそれは、まるで異界の胎児が悪夢から産声を上げるようだった。
「来るで、ミリル!」
エドナの警告と同時に、二人は跳躍する。
触手はそのすぐ足元を貫き、破裂音とともに地面を裂いた。
しかし――それは罠だった。
飛び退いた先、地中から突き出すように現れた触手が四本。二本はどうにか回避したが、残る二本が容赦なく身体を打った。
「くっ……!」
その瞬間、血が引くような倦怠感が走る。全身の力が奪われ、膝が折れそうになる。
魔力の吸収――エナジードレインだ。
「動けない……っ!」
追い打ちとばかりに、ナイアの指先から禍々しい砲撃魔法が放たれる。
黒紫の閃光が二人に向けて一直線に飛ぶ。
何とか身をよじって回避するも、体は思うように動かない。
ナイアは楽しげに口角を吊り上げ、次なる詠唱を始めた。
次の瞬間、大地が蠢いた。地面そのものから、無数の手――否、手の集合体が生えてくる。
小さな手が何層にも絡み合い、一本の太い腕となって、蛇のように二人を絡めとろうと迫ってきた。
「あ……!」
それに気づいた時には、既に遅かった。
ミリルの足が絡め取られ、地面から無理矢理引きずり上げられる。
その瞬間――
「――俺の婚約者に手を出してんじゃねえッ!!」
声とともに、灼熱が迸る。
空間を裂いて飛来したのは、赤龍形態へと変神を果たした雷音だった。
ミリルが地に激突するその寸前、炎の残光を引きながら宙を翔け、彼女を抱きとめた。
「……え?」
雷音の腕の中、ミリルが呆然と顔を上げる。
「い、今……なんて言ったのだ?」
戦場という現実すら忘れたように、ぽかんと見つめるミリルの大きな瞳。
雷音は一瞬、自分の言葉の意味を反芻し――
「う、うおっ!? い、いや今のはその……えっと!つい勢いで!!」
顔を真っ赤にして、言い訳の嵐を口走る雷音。
だがミリルはくすっと笑い、身を彼に預けたまま言う。
「ふふ……じゃあ、もういっぺん言ってほしいのだ。今度はちゃんと聞こえるように、ハッキリと!」
「ば、バカ!今は戦いの最中だってのに……!」
「いいから言ってほしいのだ〜!」
「……ったく」
そんなふたりのやりとりに、冷や水を浴びせるようなナイアの声が飛ぶ。
「いちゃいちゃは結構。さっさと死んでくれないかしら?」
それでも、ミリルは雷音から離れようとしなかった。
ナイアの詠唱が続く――だがその声は、先ほどよりもわずかに乱れていた。
心の波が、魔法の発動軌道に微細な乱れを生む。
そのわずかな誤差が、致命的な隙となることを、ナイア自身がまだ気づいていない。
(おのれ、勇者どもめ……!)
「ええい、もういい! ミリル、俺たちも――勇魔共鳴を使うぞ!」
「了解なのだっ! 私はいつでも行けるのだ!」
ミリルは嬉々として頷き、雷音の顔へとそっと近づく。
「ちょ、ちょっと待てミリル!? キスとか、そういうのは……!」
しかしミリルは目を閉じ、微笑を浮かべて唇を重ねた。
その瞬間、雷音の全身に紅蓮の魔力が奔流する。
「――顕現せよ。魔剣クトゥグァの力!!」
空が割れ、焔が降り注ぐ。
その中で、ふたりの勇魔共鳴は完全に発動した――!
雷音の身体に刻まれし呪紋が燃え上がる。
「変神――!」
咆哮とともに、紅蓮の竜が顕現する。
それは炎の鎧を纏いし神性の具現。
肩甲を噛む焔の獣、籠手には浮かぶ紅の眼、背中には竜翼の如きブースターが展開する。
かつてのただの少年ではない。
今ここに在るのは、赤の勇者《クトゥグァHERO》。
神殺しの紅が、戦場に降臨した。
⸻
ナイアは息を飲み、思わず後退る。
「くっ……何なの、あれは……!? ただの融合魔法じゃない……!」
――雷音とミリル、その目にはもう迷いはなかった。
雷音の手足が赤き稲妻に包まれ、骨格が軋む音と共に変質を始める。
肘から先は龍の鱗に覆われ、脚は獣のごとき力感を宿す。背中からは紅蓮と翠雷を帯びた炎の翼が――否、鳳凰の羽ばたきすら想起させる、神性の炎翼が広がっていく。
「うおおおおおおおおおっ!!」
雷音が咆哮を放つと同時に、ミリルの身体が光に包まれ、剣へと還る。
その変化は一瞬。まるで神秘の儀式であるかのように、少女の姿は昇華され、雷音の腕に収まった魔剣へと転じた。
その魔剣は雷音の身の丈ほどもある巨大な斬馬刀。
刀身は紅蓮の炎に揺らめき、稲妻の紋様が奔る。刃の内部に燃える核――それは、確かにミリルの意志が宿っている証であった。
「……来たな、裏の力……!」
雷音の背後、虚空に浮かび上がったのは――
雷の巫女の幽体。
透き通った身体には緑と金の稲妻が走り、その瞳は魔剣の力を司る女神の如く、戦場を睥睨していた。
ミリルは霊体となってなお、雷音の後ろに寄り添うように浮かび、その双眸は彼だけを見つめていた。
「「――勇魔共鳴・裏式発動!!」」
天地が震えた。
ナイアの顔が強張る。「くうっ!この土壇場で、まだ新たな力を……!」
悔しげな声を背に、雷音の中で火と雷が交わる。
膨れ上がる魔力。空気を焦がし、地を震わせる、決戦の始まりを告げる圧。
「ミリル、行くぞ!」
「任せてほしいのだ、雷音!」
この瞬間、ただの少年と少女は、人界に災いを打ち払う“神威”となった。
今まで防戦一方だった状況が一変する。
まず最初に動いたのは雷音だ。
彼は手にした魔剣を振りかぶりながら突撃していく。
その攻撃をレッド侍とブルー騎士が二人がかりで防ぐ。
だが雷音1人に明らかに力負けしている。
「ぐっ……なんて馬鹿力だ!?こんなの受けきれるか!?」
ナイアがそう叫ぶ間にも雷音は攻撃の手を緩めない。
一振り毎に風圧が巻き起こり、衝撃の余波で地面が大きく抉れていった。
(まずい、このままでは押し切られてしまうわ!こうなったらこちらも!)
「ナイア様!魔法陣の用意が出来ました!」
ナイア配下のピンクのサキュバスが叫ぶ!
「でかした……この呪文が通れば、奴らの反撃はもう通じぬ! 呪文を発動するぞ!」
にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな! にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな!」
ナイアとピンクが同時に呪文を唱えると、レッド侍とブルー騎士の全身に黒紫の光が走った。
筋肉というより“構造”そのものが捻じ曲がるように膨れ上がり、邪神語の加護が肉体を再構築していく。
ふたまわり以上も巨大化したその姿は、もはや人間の域を超えていた。
「ふはははははっ!!どうだ勇者よ!これで貴様の攻撃など効かぬわっ!!!」
高笑いするナイア
防御を固めた侍と騎士の二人はそのまま前進し、力任せに襲いかかった。
「くっ!こいつら急にパワーアップしやがったぞっ!」
二人分の攻撃を受け止めきれずに吹き飛ばされそうになる雷音を援護すべく、ミリルが魔法を放つ。
「サンダーボルトボールッ!!!!」
巨大な電気の塊が出現し、それが無数に分裂し雨あられと二人に降り注いだ。
だがブルー騎士が手にした大盾を上にかざすと雷は全て防がれてしまった。
「なに!?」
驚いた一瞬の隙を突きレッド侍が雷音に切りかかる。
だがその攻撃を黄色い影が割り込み槍で防いだ。
それは黄衣の魔王ベリアルハスターだった。
オームとエドナが勇魔共鳴を果たしたのだ。
「待たせたな雷音!」
「あんたらが敵の目を引きつけてくれたおかげで、ウチ等もあっちでこっそり勇魔共鳴を済ませとったんや!」
赤の勇者と黄衣の魔王がレッド侍とブルー騎士に対峙する。
双方は武器を構え激しく剣戟を交わした。
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