表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/414

乂阿戦記1 第一章- 赤の勇者雷音と炎の魔剣クトゥグァ-4前編 赤い巨大ロボvs白い巨大ロボ

超展開注意!

神殺しの拳が交錯し、封獣機神が吼える――

ついに「赤」と「銀」の勇者が激突!

操られた妹、狂気に堕ちた兄、守るために戦う者。

この戦場で、家族の絆は砕けるのか──!?


読んだ後、きっと“機神バトル”が好きになる一話です。

(^^) ブックマークをお願いいたします!


読みやすくなりますよ❤︎



灼熱と怒号が交錯する戦場。

神の領域へと踏み入ったかのような、破壊と再生の旋律が世界を打ち鳴らす。


だが――その只中で、ただ一人、冷静に舞う男がいた。


銀の勇者・羅漢。


彼の任務は、ただ一つ。


――神羅を、守ること。


阿烈と雷音の戦いは、もはや戦争ではない。

それは、存在と存在の衝突、世界の根幹すら揺るがす“神殺しの拳”の応酬。


砕け散るがれき、爆ぜる衝撃波、空気を焼き尽くす炎の乱舞。

だが羅漢は、合気の奥義をもって、それらすべてを捌いていた。


まるで、荒れ狂う戦場そのものと対話するかのように――。


「兄さん、兄さん!! 正気に戻って! 雷音ッ!!」


神羅の声が、風に乗って空へと響く。

だがその悲痛な叫びも、狂気と焰に飲まれた二人の耳には届かない。


――彼らはすでに、人の域を超えていた。


羅漢はその中にあって、唯一“人として”佇んでいた。

守るために。救うために。


さきほども、クトゥグァの暴走魔力が火山の噴火を誘発しかけた時、

羅漢は拳一つでその衝撃波を空へと流し、スラルという世界そのものを救っていた。


神々の殺し合いの只中にあって、

彼は一人、“守護者”として戦場に立ち続けていた。


その背に、少女を隠すようにして――


誰よりも強く。誰よりも静かに。


その時だった。


神羅を抱きかかえ、崩落した建材の影にひそんでいた存在が、

ゆっくりとその仮面をこちらへと向ける。


三つの瞳が、灼熱のように煌めく。

裂けた口元から、意味を孕んだ嗤いが零れ落ちた。


邪神ナイアルラトホテップ。

“狂気と奸智”を司る、紫の魔女の仮面を戴くもの。


「クク……まさか、こんなにも早く因縁の宿敵と再会できようとはな」


その声音は、まるで愛し子に語りかける母のようで。

同時に、虫を玩ぶ蛇のそれでもあった。


彼女はこの騒乱の中、自らの肉体をばら撒き、

ダンジョン中に散布した“眼”を通して状況を逐一監視していた。


狙いは――ワープ装置。


「この転送装置で、まとめて異界送りよ……ふふっ」


復讐の段取り。計画の完成。

それが、ナイアにとって“予言”された快楽だった。


だが、その瞬間――


「ワシを……どこかへ飛ばす気か?」


空気を裂いたのは、乂阿烈の声だった。


ギロリと、その目がナイアを射抜く。


先ほどまでの狂乱の焰はなく、

そこに宿っていたのは“静謐な破壊者”のまなざし。


「まさか……! こいつ、最初から正気だった……!?

 さっきまでの狂気は……すべて、演技……!?」


ナイアの背筋に、粘つく悪寒が這い上がる。


最も忌むべき存在との再会。

それは――“人間のくせに神を出し抜く”という、最大の不敬。


ナイアは、動いた。


「にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな! 女神ユキルよ……

 赤の勇者雷音と機神同調せよ! 封獣クトゥグァを解き放てッ!!」


呪詠が空を裂いた。


雷音と神羅の身体に、紅蓮と聖白の光が交錯する。


灼熱のオーラが雷音を包み、

神羅の背には神の象徴たる翼が現出する。


「雷音! 私と一つになって……

 あの怪物を倒すのよ……!!」


ナイアに操られた神羅が、

感情の宿らぬ瞳で雷音の唇を奪い、呪詛を刻む。


「ふんぐるい むぐるうなふ……

 くとぅぐあ ふぉまるはうと……いあ! くとぅぐあ!!」


詠唱と共に、二人の身体は青白い繭に包まれる。


その繭が弾けた時、そこに現れたのは――


灼熱の翼を広げた、紅蓮の巨神。


炎の鳳凰を思わせるその姿。

すなわち、封獣機神――


《クトゥグァ》。


ナイアは笑った。

その唇に、陶酔と狂気を滲ませて。


「さあ……愛しき我が赤き獣よ。

 世界を焼き尽くす剣と化せ」




挿絵(By みてみん)


神羅の胸元に手を添え、耳元に囁く。


「兄という鎖を断ち切れ。

 “家族”という名の牢獄から解き放たれなさい……」


操られた神羅は、虚ろな声で応える。


「……はい、雷音。

 私と“ひとつ”になって……あの怪物を滅ぼしましょう……?」


その声音は甘く、穏やかで――魂のこもらぬ、抜け殻の人形だった。


ナイアは、満足げに嗤う。


「よくできました、神羅。

 さあ、雷音。“神殺しの炎”を解き放ちなさい」


次の瞬間、クトゥグァの大剣が振り上げられた。


その焰の剣の前に立ち塞がったのは――


羅漢だった。


「そのクトゥグァの力で……兄を攻撃する気か……!?」


羅漢は、己の胸元にぶら下がる銀の首飾りを握りしめた。

その目には、燃えるような決意。

「……兄としての誓いを、ここで果たす」

「機神招来──白虎、我が命に応えよ!!」


銀雷が空に奔り、大地を揺らす。


天地が裂ける轟音と共に、それは現れた。


銀の装甲に包まれ、二本の天角を持ち、

咆哮とともに大地を駆ける、白き獣の機神。


その名は――


《白虎・ケルビムベロス》。


挿絵(By みてみん)


「銀の勇者め……魔法少女の助力なしに、機神を呼び出すとは……」


ナイアが、毒を含んだ艶やかな声で笑った。


「やはり、貴様も“化け物”の一角というわけね……

 けれど、封獣最強の名を戴くクトゥグァに、勝てるとでも?」


紅蓮と銀光。


鳳凰と白虎。


二柱の神話が、咆哮と共に戦場を裂く。


「うおおおおおおおおあああああああああああッ!!」


「ガアアアアアオオオオオオォォォン!!」


刹那、白虎の爪がクトゥグァの胸甲を切り裂き、

鳳凰の焔剣が大地を引き裂く。


空間が歪み、空が裂け、重力が狂う。


だが、羅漢は退かない。


「白虎はあらゆるものを噛み砕き、切り裂く……!

 たとえ貴様が邪神の機神であろうと、この牙は止まらん!!」


ナイアが、嗤う。


「白虎、確かに脅威だわ。でも……“世界を守りながら”戦えるかしら?」


指を弾き、命じる。


「雷音、ユキル、聞こえる?

 クトゥグァの能力で、この山の火山を活性化させなさい。

 この地ごと──吹き飛ばしなさい!」


雷音と神羅が、焦点の合わぬ瞳のまま、呟く。


『我は願う。地脈の血を我が手に……』


『私は望む。大地の脈動を、我が力に……』


地が呻き、空が燃える。


火口が裂け、山肌が崩れ、地中のマグマが咆哮した。


ナイアが恍惚の笑みを浮かべる。


「さあ、どうする? このままでは町は灰。人々は消し炭。

 どうせ守りきれぬなら、せいぜい抗ってみせなさい?」


だが――


その声が凍った。


白虎・ケルビムベロスが、

巨大な掌を地に突き立てていた。


機神の腕から放たれる、銀の光。


それは地殻へと染み込み、

火山の“心臓”を、優しく撫でるように広がっていく。


「……何……あの光は……」


ナイアの眉がひそむ。


地鳴りが止み、マグマの暴走が静まり、

火口が深く息を吐いたかのように、沈黙する。


「爆発エネルギーを……吸収している!? そんな馬鹿な……!」


羅漢の声が、静かに響く。


「違う。“流して”いるのだ」


ナイアが目を見開く。


「合気とは、力を調和させる術。白虎はその極致──“理”と一つになる拳だ」


羅漢は、目を閉じる。


「拳一つで地を鎮め、剣一振りで星を割る。

 それが、“白虎”の流儀」


ナイアが絶句する。


「武術で……火山を止めただと……!? そんなもの……理解不能……!!」


理解不能。


ナイアにとってそれは、何よりの恐怖だった。


「おのれ……ッ!!」


ナイアが絶叫する。


「雷音ッ!! まずは白虎を“殺り”なさい!!」


クトゥグァが大剣を引き抜き、

紅蓮の斬撃を袈裟に叩き込む。


白虎の肩甲から、裂ける斬光が走り──

装甲が貫かれる。


だが――


「──まだだッ!!」


羅漢は、生きていた。


斬られた白虎の右腕が動き、クトゥグァの腕を掴む。


そして、


引き千切る。


「なにッ──!?」


白虎の角が変形し、槍状へと姿を変える。


「穿て──《断理穿槍だんりせんそう》ッ!!」


閃光が炸裂する。


巨槍が、クトゥグァの胸部を貫き、装甲を裂き、

その内部――コックピットが露わになる。


そこにいたのは、雷音。


そして、その背後には──カプセルの中で眠る神羅の姿。


「雷音ッ!! 神羅ッ!! 今すぐ助けるッ!!」


だが――


ナイアは、まだ終わっていなかった。


「……勝ったつもりかしら?」


ナイアの声が、静かに戦場にこだました。


クトゥグァは失った右腕を再構築し、巨大な槌へと変形させる。


「雷音……とどめを刺しなさい」


その命令に、操られた雷音の指が動いた。


巨神の腕が振りかぶられ、

次の瞬間――


「バキィィィン!!」


白虎の頭部が粉砕される。


銀の装甲が砕け、火花が噴き出し、

機体はゆっくりと、その巨体を崩していった。


羅漢の身体が、機神の残骸と共に露わになる。

血に濡れ、意識は朦朧。だがその拳は、まだ握られていた。

守る者の意志だけが、なおも燃え続けていた。


ナイアが、満足げに嗤う。


「ふふ……もうすぐ、世界は終わるわ。

兄妹の愛も、勇者の希望も、すべて“この焰”で焼き尽くすの」


空が赤く染まり、大地は裂け、

火山の脈動が再び唸りを上げ始める。


https://vt.tiktok.com/ZSSQDDbPF/


↑イメージリール動画

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ