乂阿戦記1 第四章- 白の神子リーン・アシュレイと神鼠の鎧にして白神の槍ナインテイル-3 赤の勇者雷音と魔王オーム
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「はぁ〜〜〜〜」
ようやく和平交渉を終えた一行は、魔王城の応接室に集まり、一斉に溜息をついた。
「……ほんと、一時はどうなることかと思ったよ」
「まさか、神羅が“お姫様ポジション”で帰ってくるなんてな……」
あれから一時間後。何とか回復したザビエルと話し合い、正式に魔王城の賓客としてもてなされた一行は、ようやく一息ついていた。
「それにしても、まさか神羅がこんな形で戻ってくるとはなぁ……」
しみじみと呟く雷音の言葉に、皆もうなずく。
「ほんとだな。なんか雰囲気変わってるし、まるで別の世界に行って戻ってきたみたいだ」
「いや、本当にその通りなんだけどね」
雷華の言葉に、神羅がすかさずツッコミを入れる。
ちなみに今この部屋にいるのは六人。雷音、神羅、雷華、オーム、エドナ、絵里洲である。
記憶を取り戻した神羅――ユキルは、すっかり元気を取り戻していた。
「うわー、ユッキーから話は聞いてたけど、雷音君って本当に獅鳳に顔そっくり……」
「ね? 言った通りだったでしょ?」
茶菓子をひと通り食べ終えたあと、雷音がオームに切り出す。
「ところでオーム。俺は姉ちゃんを今すぐ家に連れて帰りたいんだけど、すんなり返す気はあるか?」
「は? 返すわけねぇだろこの脳筋! 返してほしけりゃ、俺を倒してみろってんだ!」
オームはいつも通り横柄な態度。だがここで引くわけにはいかない。
「なら、力づくでも連れて帰る!」
「やれるもんならやってみろ!」
こうして二人の戦いが始まった。
一方その頃――。
「いや〜ん! 見て見てユッキー! オーム君と雷音君、ユッキーを巡って戦い出しちゃったわよ!」
「まぁ、あの二人……昔から仲悪かったですからね」
「そうなの?」
「ええ。それに、私はもう身も心も雷音のものだし」
「え!? いつの間に!?」
「さっきトイレに行った時、『今夜部屋に来てくれ』って言われたんですよ」
「きゃーっ!!」
「エドナさん! 私の後ろで変なセリフ吐かないでください!!」
「あははは、お茶目やお茶目!」
などと、ほのぼのとした会話が続く中――外ではさらに激しいバトルが。
部屋を飛び出した雷音とオームは互いに譲らず、一進一退の攻防を繰り広げていた。
荒れ狂う魔力の衝突。
雷音とオーム──乂とタタリ、因縁を背負った若き戦士たちが、魔王城の中庭にて激突していた。
拳と拳。技と技。火花が散り、地が裂ける。
「神羅は俺の姉貴だ! 連れて帰るのが当然だろ!」
「ほざけ! お前のような未熟者が神羅を守れるものか!」
執念と執着がぶつかり合う。だが、その刹那――天が裂けた。
空より光の柱が降り注ぐ。
白銀の鎖が魔力の奔流を裂き、二人の体を絡め取る。
「ぐっ!? 身体が……動かねぇ!?」
「くそッ、魔法か……誰だ!?」
その瞬間、光の中心から一人の影が舞い降りた。
桜色の髪をたなびかせ、微笑を浮かべる女戦士。
その瞳はすべてを見通すように静かで、そして――強かった。
「二人とも、喧嘩なんて……ダーメ」
その声は、雷鳴よりも鋭く、春風よりも優しい。
「……神羅姉ちゃん!?」
「神羅……!」
神羅は鎖の呪縛を解きながら、すっと雷音の前に降り立った。
そして、穏やかに微笑む。
「悪いけど、雷音。今すぐには帰れないわ」
「……っ、どうしてだよ?」
「エリリンを元の世界に返してあげなきゃいけないの。それが私の、今の約束」
「神羅……」
オームがわずかに目を見開く。
「ありがと、オーム君。助けてくれて嬉しかった。けど、もう喧嘩は終わりにしようね?」
一瞬だけ、オームの頬が朱に染まったように見えた。
だがすぐに不敵な笑みに戻り、うなずく。
「……そうか。それは良かった」
神羅は踵を返し、空を見上げた。
「さて……じゃあ、アシュレイの城に行ってくるね。ミリルちゃんの家の【転送の刻印】を借りに」
その言葉に、雷音とオームが同時に声をあげる。
「待て、神羅!」
「今アシュレイ領は危ない!」
空に飛び立つ寸前、神羅が振り返る。
「……え?」
「戦の気配がある。メギド族がアシュレイ族に宣戦布告したらしい」
「ええー!?」
驚く神羅に、雷音が尋ねた。
「なあ、それよりお前はどうやってここに来たんだ? 来た時と同じ手段で帰れるんじゃないのか?」
「私たち、異世界転生トラックっていう魔法の車で、地球という世界からスラルにワープしてきたの。でもそのトラックはこっちにはないから、似たようなワープ装置を見つけないといけないの。覚えがあるのがミリルちゃんの家のやつってわけ」
神羅は逆に尋ね返す。
「ねえ、羅漢兄さんはどうなったの?」
その質問に、二人は黙ってうつむいた。
神羅は察したようで、それ以上は何も聞かなかった。
けれど、続く言葉は予想外だった。
「ねえ、アシュレイ領に一緒に冒険に行こうよ?」
雷音とオームが思わず顔を上げる。
「だって私一人じゃ荷が重いもん! 手伝ってよ?」
「ほな、ひさびさにウチとオームと雷音と神羅ちゃんでパーティー組むか!」
「姉様たちだけずるい! 私も一緒に行く!」
「私だって一人だけノケ者なんて嫌よ、連れてって連れてって!」
雷華と絵里洲も同行を求める。
「ええ? 大丈夫かよ? 絵里洲、ぶっちゃけ弱っちいじゃん?」
「ぐぬぬ……!」
戦い慣れしたメンバーの中で、絵里洲だけはほぼ一般人である。
「あの……絵里洲、良かったらこれ貸そうか?」
雷華がおずおずと一枚のカードを差し出した。
「【契約の刻印】って言って、強力な召喚魔法が使えるアイテムらしいよ」
「うわーん! 雷華ちゃんありがとう!」
「あはは……また、みんなで一緒に戦えるんだね」
そう言って微笑む神羅の顔は、雷音とオーム、二人の目にとても美しく映った。
そして六人は、ミリルの家があるアシュレイ領へ向かうことになった。
だが――その前に、やるべきことがあるらしい。
それは……武器屋に行くことだった。
六人が向かったのは、『アマゾネス』という名の店である。
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↑イメージリール動画




