乂阿戦記1 第ニ章- 青のHERO狗鬼漢児と戦神ベルト アーレスタロス-3 HEROアーレスタロス誕生!
【その日、俺はヒーローになった。】
家族で来ていたキャンプ場で、
狗鬼漢児が出会ったのは――
異世界の格闘家と、ありえない怪物と、謎の変身ベルトだった。
ここから、青の勇者アーレスタロスの物語が始まります。
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ティラノサウルスに喰われかけ、そいつが土産物屋の木刀で真っ二つにされる現場に立ち会ったこと――。
それが、俺の“異常”の始まりだった。
俺の名前は狗鬼漢児。
母ちゃんがプロレスポスターのノリでつけた、超☆漢気ネームだ。
そんな俺が地球最強のバカ騒ぎに巻き込まれたのは、ちょうど一年前の夏だった。
あの日、俺は家族と山へキャンプに来ていた。
バーベキューの準備をしていたその時、突然空が暗転し、直後に「ドオォォォォン!」という地鳴りのような轟音が響き渡った。
大地が激しく揺れ、キャンプ場は一瞬でパニックになる。
何が起きたのか分からないまま、俺も家族と手分けして周囲の様子を見に行くことになり、一人で林の奥へ入っていった。
すると、茂みの向こうから微かな呻き声が聞こえてきた。
「……誰かいるのか?」
枝を掻き分けて進んだ先で、俺は思わず足を止めた。
そこにいたのは、岩と岩の間に挟まり、気絶している黒覆面の男だった。
全身黒ずくめで、どう見ても特撮番組に出てくる悪の戦闘員そのものだ。
(……え、何この特撮ノリ)
とはいえ、本当に苦しんでいる人間を放っておくわけにもいかない。
俺は岩へ手をかけ、何とか動かそうと力を込めた。
「よっ……くそ、重っ……!」
だが、岩はびくともしない。
うんうん唸りながら悪戦苦闘していると、背後から男の声が飛んできた。
「おい、お前。何やってんだ」
「ん?」
振り返ると、そこには全身黒ずくめの服にサングラスをかけた男が立っていた。
どう見ても堅気には見えず、全身からヤクザっぽい雰囲気が滲み出ている。
「いや、この岩どかそうと思って」
「放っとけ。どうせ誰か助けるって」
「潰れたらどうすんだよ」
「知らん」
「だったら黙っててくれ」
「チッ……わぁったよ」
ガラ悪ッ!
とはいえ、男も最後には手を貸してくれた。
二人で岩を動かし、何とか黒覆面の戦闘員を救出する。
そこで改めて周囲を見回した俺は、ようやく異常な光景に気づいた。
煙が上がり、岩壁は崩れ、地面は焼け焦げている。
さらに、あちらこちらには同じ黒覆面の戦闘員たちが倒れていた。
「……なんだよ、これ」
まるで戦争の跡だ。
一体ここで何が起きたのか。
そう考えていると、先ほどのサングラス男が再び声をかけてきた。
「よう。助けられたか?」
「まあな……それより、お前は何者なんだよ?」
すると男はニヤリと笑った。
「俺の名はジャムガ。異世界から来た格闘家だ」
「…………は?」
異世界?
いきなり何を言っているんだ、このオッサン。
最初は本気で中二病かと思った。
だが話を聞いていくうちに、妙に辻褄が合っていることに気づく。
ジャムガの故郷には魔法が存在し、この地球とはそもそも“次元そのものが違う”らしい。
しかも昔は王国公認の武闘大会へ出場し、準優勝したこともあるという。
それが本当なら、とんでもない実力者だ。
「……すげぇな。ちなみに、何しにこの世界へ来たんだ?」
「パチンコ打ちに」
「オイ」
一気に尊敬を返せ。
とはいえ、そんなふざけたところも含めて、不思議とジャムガとはウマが合った。
話しているうちに時間は過ぎ、気づけば日は大きく傾いていた。
「じゃあ、またなアンちゃん。楽しかったぜ」
「おう。またな!」
ジャムガが背を向けた、その時だった。
ズズズズズ……。
地面が揺れ、森の奥で木々が次々と倒れていく。
「……なんだ?」
次の瞬間。
「グオオオオオオオッ!!」
巨大な咆哮とともに、ティラノサウルスが姿を現した。
「はぁぁぁぁ!?」
しかも普通じゃない。
どう見ても体長二十メートルを超えており、恐竜図鑑で見たティラノサウルスより明らかにデカすぎる。
「来るぞッ!」
ジャムガが叫ぶ。
巨大なティラノが地面を蹴り、こちらへ突進してくる。
俺は咄嗟にジャムガを庇うように前へ出た。
巨大な顎が開き、鋭い牙が目前に迫る。
(うわ……これ終わったわ)
彼女すら作れないまま人生終了。
そう覚悟した次の瞬間だった。
バシュッ!!
風を切り裂く音がした。
「…………え?」
俺は目を疑った。
ティラノサウルスの巨体が真ん中からゆっくり左右へずれ、そのまま地響きを立てて倒れていく。
――真っ二つだった。
「…………」
俺は何も言えない。
隣を見ると、ジャムガが立っていた。
手に握っているのは木刀。
しかも、どう見ても近くの土産物屋で売っていた木刀で、値札のタグまでついたままだ。
「……大丈夫か?」
「だ、大丈夫だ……たぶん……」
いや。
大丈夫じゃないのは俺の頭の方かもしれない。
目の前では二十メートル級のティラノサウルスが真っ二つになっている。
そして、それをやった武器が土産物屋の木刀。
俺の脳は完全に情報処理を放棄していた。
ようやく思考が戻ってきたところで、恐る恐る尋ねる。
「……さっきのアレ、一体なんなんだ?」
「ああ?」
ジャムガは倒れた怪物を見る。
「ティラノサウルス……だったか? この世界じゃ最強生物らしいぜ」
「いやいやいや。二十メートル超えの最強生物を、木刀でぶった斬る方がおかしいだろ!」
「そうか?」
「そうだよ!」
この世界、色々間違ってないか?
いや、間違っているのはたぶん目の前の男だ。
だが同時に、俺の胸の奥には別の感情が湧き上がっていた。
――欲しい。
あの力が。
俺も、あんなふうに強くなりたい。
気づけば、俺はジャムガの前で頭を下げていた。
「ジャムガ! 頼む。あんたの技を俺に教えてくれ!」
男のプライドなんて、どうでもよかった。
本気でそう思った。
だが、ジャムガは困ったように頭を掻いた。
「悪いな、アンちゃん。あれは俺の家に伝わる秘伝の奥義でよ。ホイホイ他人へ教えられるもんじゃねぇんだ」
「そ、そんな……!」
思わず肩を落とす俺を見て、ジャムガは少し笑った。
「でもまあ――代わりに、こいつを託された」
「え?」
腰元から取り出されたのは、黒い金属を基調に青いラインが走る、不思議な形のベルトだった。
受け取った瞬間、ズシリと見た目以上の重みが両手へ伝わってくる。
「なんだ、これ……」
「《戦神帯アーレスタロス》」
「アーレスタロス?」
「俺の雇い主から預かってきた。お前みたいな、“誰かを護りたい”って気持ちの強い奴へ渡してくれってよ」
俺はベルトを見つめた。
どう見ても――。
「……これ、変身ベルトなのか?」
「ああ。“変身ヒーロー”ってやつになりてぇんだろ?」
「な、なんで分かった!?」
「顔に書いてある」
「マジか」
「とりあえず巻いてみな」
言われるがまま、俺はベルトを腰へ装着した。
パチン、と金具が噛み合ったその瞬間。
「うおっ!?」
眩い光が全身を包み込んだ。
「ま、まぶしっ!!」
反射的に目を閉じる。
やがて光が収まり、恐る恐る目を開く。
そこに立っていたのは――青い鎧を纏った勇者だった。
「……俺、なのか?」
両手を見て、脚を動かし、身体を確かめる。
軽い。
いや、違う。
身体の内側から、とてつもない力が溢れている。
「すげぇ……なんだこれ、すげぇ!!」
「そいつは“お前自身の正義”の形らしい。アーレスタロスは、持ち主が思い描いた英雄の姿に応じて形を変えるんだとよ」
「マジか! じゃあ、これって……俺だけの姿なのか!」
嬉しくなって、何となく手を前へ突き出してみる。
すると掌に光が集まり始めた。
「ん?」
次の瞬間。
ズバァァァン!!
「うおおおおっ!? なんか出たああああ!?」
青白い光線が飛び出し、遠くの岩を吹き飛ばす。
アニメでしか見たことのない“ビーム”が、現実に俺の手から出ている。
「それも、お前の必殺技の一つらしいな」
「マジかよ! すげぇじゃん!」
もうテンションは止まらなかった。
「よっしゃああああ!!」
その勢いのまま、近くの岩山へ拳を振り抜く。
ドガァァァン!!
拳そのものは山へ触れていない。
なのに拳圧だけで、岩山の一部が粉々に吹き飛んだ。
「……な、なんだ今の?」
自分でやっておいて、俺自身が一番驚いていた。
「《超鉄拳アーレスブレイク》」
「え?」
「技の名前。今、俺が適当に決めた」
「名前の軽さのわりに威力エグすぎだろ……!」
「まあ、そういうわけだ」
ジャムガは俺の肩を軽く叩いた。
「今のお前は立派な“変身ヒーロー”だ。悪い奴らが来たら、そのベルトで戦え」
「お、おう!」
「じゃあな」
「え?」
そのまま背を向けたジャムガを、俺は慌てて追いかけた。
「ちょ、待てって! まだ使い方とか全然教えてもらってねぇぞ!」
だが、次の瞬間にはもう姿がなかった。
「…………」
変身ヒーローになった。
そこまではいい。
問題は――。
「どうすりゃいいんだよ、これ……」
その時だった。
【警告します】
「うおっ!?」
突然、脳内へ機械的な声が響いた。
【これより半径二十キロメートル以内での無許可戦闘行為を禁止します。貴方の力は未熟であり、周辺地域への甚大な被害が予測されます】
「……まあ、山吹き飛ばしたしな」
【今後の戦闘行為は、指定された演習場でのみ許可されます】
どうやら俺の力は、想像以上に“やばすぎる”らしい。
◇ ◇ ◇
それから俺は、アーレスタロスの指示へ従い、指定された草原の演習場へ向かった。
だが、そこで待っていたのは――想像を遥かに超えた“敵”だった。
地平線の向こうから、黒覆面の戦闘員たちがぞろぞろと姿を現す。
見覚えがある。
キャンプ場で岩に挟まっていた、あの連中だ。
「……またあいつらか」
しかし問題は、その先頭に立っている男だった。
禿げ上がった頭には無数の傷。
分厚い胸板。
爆薬でも詰め込んだのかと思うほど盛り上がった筋肉。
さらに右腕には、どう考えても個人用兵器の枠を逸脱している巨大なバルカン砲が装着されている。
どう見ても、人間の範囲を超えていた。
「ぬはははははッ!!」
大男が豪快に笑う。
「我輩こそ、ドアダ七将軍が一人! サイボーグレスラー――キャプテン・ダイナマイトボマーなりッ!!」
「…………」
名前長ぇ。
俺がそう思った次の瞬間、ボマーが俺を指差した。
「黒天ジャムガよ! 我と正々堂々、勝負せよッ!!」
「いや、俺ジャムガじゃ――」
最後まで言わせてもらえなかった。
ボマーが地面を蹴る。
「ぬおおおおおッ!!」
「速っ!?」
巨体からは想像できない踏み込みで、一気に間合いを詰めてくる。
そのまま飛び蹴りが俺へ襲いかかってきた。
「うおっ!」
ギリギリで身体を捻って回避する。
次の瞬間。
ドゴォン!!
ボマーの蹴りが地面を抉り飛ばした。
アスファルトが砕け、大地が陥没する。
それだけで理解できた。
こいつ、シャレにならねぇ。
「ん? ……貴様、ジャムガではないな?」
「だから違うって」
「誰だ貴様は! 黒天はどこへ消えた?」
「狗鬼漢児だ。ジャムガなら俺にこのヒーロースーツを託して、どっか行っちまったよ」
「ぬはははは! 黒天め! さては我輩に恐れをなして、尻尾を巻いて逃げおったか!」
「いや、違ぇよ。あいつはそういう奴じゃねぇ」
「いいや! そういう奴に決まっておる!」
「なんでだよ」
「なぜなら我輩は――ドアダ七将軍が一人ッ! このダイナマイトボマー様だからだァッ!!」
またポーズ。
なんだこのテンション。
「ふん、まあよい!」
ボマーは俺の姿を改めて眺めると、勝手に何かを納得したように大きく頷いた。
「見れば貴様――青の勇者ではないか! よかろう、貴様も我が軍へスカウトしてやろうぞ!」
「生憎だけど――断る。悪の組織なんか入るわけねぇだろ」
「なんだとッ!? ならば力ずくで言うことを聞かせてくれる!」
「上等だ!」
俺も拳を構えた。
「来いよ、ダイナマイトボマー! このアーレスタロスの力――見せてやるぜッ!」
気分は最高潮。
アニメの主人公よろしく、堂々と戦闘ポーズを決める。
するとボマーまで同じようにポーズを決めた。
「吠えるな小僧!」
「お前もポーズ取るのかよ!」
「いや――青の勇者アーレスタロス!!」
「それ俺の名前じゃねぇ!」
「ドアダ七将軍が一人! このダイナマイトボマーの力――とくと味わうがよいッ!!」
完全に自分の世界へ入ったボマーの右腕で、バルカン砲が回転を始める。
さらにガシュンという機械音とともに、背中から大量のミサイルランチャーまで展開された。
「ちょっと待て! それ反則だろ!」
「悪の組織に反則などないわぁッ!!」
ドドドドドドドドッ!!
バルカン砲が火を噴き、同時に無数の誘導ミサイルが空へ飛び出す。
「うおおおっ!?」
俺は全力で走った。
右へ、左へ。
飛んで、転がって、必死に回避する。
だが。
ドガァン!!
「ぐっ!」
何発かがスーツを掠め、火花が弾けた。
「ぬははははッ!! どうしたどうした! 参ったか、勇者ァ!!」
「くそっ……!」
やばい。
完全に押されている。
このままじゃマズい。
だが、逃げるなんて選択肢は最初からなかった。
俺の美学が、それを許さない。
すると。
【アドバイス。新たな必殺技の使用を推奨します】
脳内に、あの機械音声が響いた。
「……なんだと?」
新しい技。
そんなものまであるのか。
「だったら――使わせてもらうぜッ!」
使い方なんて知らない。
だが、こういう技ってのは叫べば大体なんとかなる。
たぶん!
「必殺!! 漢の鉄拳――ドリルパァァァンチッ!!」
ゴォォォォォッ!!
光のエネルギーが右拳へ集束し、その周囲で高速回転を始める。
やがて光は巨大な螺旋となった。
「いっけえええええええッ!!」
ドガァァァァァァァン!!
直撃。
ボマーの巨体が宙を舞い、そのまま遥か後方の岩壁へ激突した。
「ぬおおおおおおお!?」
身体ごと巨大な岩へめり込む。
「はぁ……はぁ……やったか……?」
一瞬の静寂。
しかし数秒後。
「ぬはははははッ!!」
岩壁の中から笑い声が聞こえてきた。
瓦礫を吹き飛ばし、ボマーが立ち上がる。
「なかなかいい攻撃するじゃねぇか! だが、効いてねぇみたいだなァ!! 残念でした~ッ!!」
「クソッ……!」
やっぱり通じなかったのか。
こうなったら最後の切り札を使うしかない。
アーレスタロスから流れ込んでくる情報によれば、これは命を削るほどの消耗を伴う最大級の必殺技らしい。
「いくぞぉぉぉぉぉおおおおおッ!! 超鉄拳アーレス――」
「よかろう、小僧ッ!! 我も全力で応じてやるわッ!!」
ボマーも右腕を構える。
だが、その時だった。
ピピッ。
「……ん?」
妙な音がする。
ボマーの右腕にあるバルカン砲の銃身から火花が散り始めた。
「ん?」
さらに煙。
警告音。
ピーピーピーピー!!
「……あれ?」
ボマーが自分の腕を見る。
「お、おかしいぞ……? ん? あれ? あれれ……?」
――どっかあああああああああああん!!
「うおおおおおお!?」
大爆発。
ボマーの右腕が爆発四散した。
爆風が収まった後、俺は呆然と立ち尽くす。
そして叫んだ。
「ドリルパンチ、しっかり効いてたじゃねーかよ!!」
◇ ◇ ◇
爆発の結果、ボマーの身体は見事にバラバラになっていた。
しかし、どうやら死んではいないらしい。
黒覆面の戦闘員たちが、地面に転がっていたボマーの生首を拾い上げる。
すると。
「ぬぬぬ~~ッ!! 今日のところは引き分けだァッ!!」
「どこがだよ!」
「プロレスは三本勝負がデフォだからなッ!!」
「知らねぇよ!」
「次こそ貴様の命日だァッ!! ゔぁーか! ゔぁーか!!」
「小学生か!!」
ボマーは戦闘員たちに抱えられ、実に無様な姿で退場していった。
「…………」
なんだったんだ、あいつ。
呆然としていると。
「あ、あのぉ……」
今度は小柄な黒覆面の戦闘員が、おずおずと近づいてきた。
「ん?」
「す、すみません! うちの馬鹿親父が大変失礼を……!」
「親父!?」
さっきのアレの息子なのか!?
「あ、それでですね。先ほどの戦闘映像なんですが、《ユキチューブ》へ投稿してもよろしいでしょうか?」
「…………は?」
「もちろん、報酬はお支払いいたします!」
そう言って、名刺らしきものを差し出してくる。
「わたくし、ドアダ広告部臨時社員――戦闘員895号と申しますッ!」
「…………」
悪の秘密結社に広告部なんてあるのか。
「これ……テレビの撮影か何かだったのか?」
「いいえ?」
「じゃあ、あのバルカン砲って……」
「本物です」
「本物かよ!」
「はい。ドアダは一応“悪の秘密結社”ではありますが、現在の地球における基本方針は《平和的世界征服》となっております」
「……それ成立すんのか?」
「さあ?」
「お前も分かってねぇのかよ!」
「ですが、我が社のトップは“まず地域活動で人気を獲得し、いずれはアメリカ大統領に”と申しておりました」
「…………なんだそれ」
もう敵なのか何なのかすら分からない。
結局、俺の口から出たのは――。
「……変な秘密結社だな」
それだけだった。
すると895号は、鞄から書類を取り出す。
「それでですね。先ほどのヒーロー対決の映像をドアダの広報活動へ使用したいのですが、ご許可いただけますでしょうか?」
「うん」
「こちらが報酬です」
封筒を受け取って中を見る。
「うおっ!? こんなに!?」
「はい」
「……使ってくれ!」
即答だった。
「ありがとうございます!」
「いやいや、こちらこそ!」
「それと、今後週一回程度でヒーロー対決の動画を撮影させていただけると、大変ありがたいのですが……」
「週一?」
「もちろん毎回、出演料はお支払いします」
「マジで!?」
俺は895号の両肩を掴んだ。
「よし! その仕事、受けた!!」
「ありがとうございます!」
こうして俺と悪の秘密結社ドアダとの、奇妙な関係が始まった。
本来ならこれは――《変身HEROアーレスタロス対悪の秘密結社ドアダ》。
壮絶な正義と悪の戦いになるはずだった。
……はずだったのだ。
だが、この時の俺はまだ知らなかった。
恐竜を木刀で斬る異世界人。
やたらプロレス好きなサイボーグ将軍。
動画投稿に熱心な悪の秘密結社。
そして――《戦神帯アーレスタロス》。
あの日から始まった、この妙にノリの軽い連中との腐れ縁が、やがて俺自身だけでなく多くの世界を巻き込み――俺の人生を、とんでもない方向へぶん回していくことを。
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