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ステータス上昇効果と傍観者

「……へ?」


 思わず間抜けな声が出る。そうしているうちにレスペクトは残りの三匹に邪視を使ったらしく、ワイルドボア達はぴくぴくと身体を震わせながら畑の上に倒れ込んだ。

 ……一瞬で終わってしまった。こんな呆気なく終わってしまうとは。


「って、レイヤ! どうやって一撃であんなすっぱりと切れたの!?」


 もう大丈夫だろうと茂みから飛び出してレイヤの元へ駆け寄る。怪我なく終わったのはいいことだけど、どうやってあのような力が出たのかさっぱりわからなかった。

 父の護身用の短剣にはそんな力はないので、考えられるのはレイヤの力だ。

 しかし、初めて彼のステータスを見たときを思い出すとレイヤが一撃で仕留めるほどの力はなかったはず。


「あー……多分、イルのおかげだろうな」

「えっ?」

「これ、見てくれ」


 そう言うとレイヤは自分のステータス画面を目の前に表示させた。彼のステータスを覗かせてもらうと、驚くべき数字が出ていた。


========================================


レイヤ (25歳)


レベル  22

体力   132 (+500)

魔力   60 (+350)

攻撃力  80 (+500)

防御力  72 (+400)

素早さ  71 (+400)

運    87 (+200)


能力:フードリアリゼーション


========================================


「何これっ!? プラスって何!?」


 ステータスは前回よりレベル2上がってるけど、このかっこ内の数字は何っ? プラスってことは元のステータスから上乗せされた数字に見えるけどどういうこと!?


「イルの作ったスイーツを食べたら一時的にステータスが上昇するらしい」

「え、えっ?」

「俺も最初は気づかなかったけど、俺が王都へ向かうとき甘納豆くれただろ? 食べたあとすぐに魔物と戦うことになったんだけど、あからさまに自分の動きや力が格段に上がってて、ステータスを確認したらこんな感じでかなり数字がプラスされていた」


 なんと、まさか私の作ったスイーツが一時的とはいえ能力強化されていたとは! そんな凄い効果があるなんて聞いてないですよ、イストワール様!

 しかもしかも、運も上がっているってことは同じスイーツを食べた私にも効果があるのでは? そう思って急いで自分のステータスを確認してみた。


========================================


イル (21歳)


レベル  35

体力   174

魔力   125

攻撃力  103

防御力  89

素早さ  83

運    -95


魔法一覧

スキル一覧


========================================


「……何も変わってなかった」


 結果を見て肩を落とす。いや、よく考えてみれば当然か。だって、スイーツを食べたらすぐにレベルアップ画面が現れるからそのまま魔法やスキルの確認をするんだし、レイヤみたいなステータスアップをしていたら気づくもんね。……運は相変わらずだなぁ、がっかりだ。


『イル、下がれ。まだいるぞ』


 ずっとワイルドボアが出て来た畑の奥を警戒するように見つめていたレスペクトが私を庇うように前に立つ。

 まだいる、ということはワイルドボアがまた出てくるのかと、レスペクトと同じ視線の先へ目を向ける。

 瞬間、先程の唸り声とは違う低くて重い鳴き声が響く。それに続くように小さな地響きも感じた。

 ……まさか、ワイルドボアではない? そう思ったのも束の間、次に姿を現したのはワイルドボアよりも何倍も大きいジャイアントボアだった。

 レスペクト以上の大きさで、ワイルドボアのような赤黒い体毛ではなく灰色であるジャイアントボア。ワイルドボアに比べて禍々しくて鋭い牙が暗闇の中でも光ったような気がした。

 ビビりながらアプレイザルでジャイアントボアのレベルを確認してみる。


========================================


・ジャイアントボア Lv.39

ワイルドボアよりも大きく、凶暴な魔物。牙を使った攻撃と巨体から繰り出す突進を得意とする。仲間思いであり家族思いなのかワイルドボアを傷つけるとすぐに襲いかかってくる。


========================================


 先程のワイルドボアとは倍も違うレベルな上にジャイアントボアに関する説明がどう見てもフラグでしかない。

 確かにジャイアントボアは倒れているワイルドボア達に目を向けて、大きな鳴き声を上げた。

 仲間かはたまた家族か、どちらにせよジャイアントボアが怒る要素は間違いなくあるのだけど、殺らなければこちらが殺られてしまうのだ。こちらも命と生活がかかっている。

 しかし、このレベルは勝てない気しかしない。退避しよう。そう思ってレイヤもレスペクトに声をかける。


「ね、ねぇ、これはさすがにまずいよね……? 逃げた方がいいよねっ?」

「いや、一度やってみる」

『フン、この程度で狼狽えるな。軟弱者め』

「嘘でしょっ!?」


 どうやら一人と一匹は戦闘する気満々である。いや、レスペクトなら心配ないかもだけど、レイヤは怖いもの知らずなのでは? それとも、このレベルの魔物は相手にしたことがあるとか?

 どちらにしても挑戦しようという意思を見せているということはジャイアントボアと対峙するのは初めてっぽいから無理はしない方がいいと思うんだけど!

 というか、私も応戦するべきなのかな……。ちらりとジャイアントボアに目を向けるとブモオオォォォ!! と赤い瞳で睨まれた上に威嚇されて「ひえっ!」と後退りしてしまう。

 ……めちゃくちゃ怖い。こんなの一人で対峙したら絶対に逃げてるやつだ。


 でも一匹と一人、仲間がいる。私だって攻撃魔法もあるし、ここは思い切って私も戦ってみなければ。

 えーと……攻撃魔法といえば火魔法が結構覚えてるんだよね。確かファイアボール、ファイアアロー、ファイアピラー。

 うんうん、いいんじゃないだろうか。そう思って何か魔法を出してみようと思ったところでハッと気づいてしまった。

 この畑に火魔法を使ったらさつまいも畑が焼きいも畑になってしまう! さすがに火魔法はダメだ!

 そ、それじゃあ、違う魔法を……。畑の上なら地魔法はどうだろうか? しかし、何を覚えてたかな……。


 ステータス画面を呼び出して魔法一覧で現在使える魔法を確認してみる。魔法の種類順に並ぶ中、地魔法の項目を見てみればたった三つしかなくて、むむっと唸ってしまう。

 しかもその中で使えるといえばサンドショット。砂を発射する魔法だ。とはいえ、攻撃力は皆無と思われる。

 目に当てたら怯むくらいにはなるだろうが、仕留めるのが目的なので却下だ。

 だったら残るのは何かとお世話になってるウォーターランスじゃないかな? 水魔法なので畑の上で水が散っても問題はないし!


「よしっ! 私もっ……て、あれ?」


 魔法で援護する! と言うつもりだったが、急にジャイアントボアはふらっと横に傾いた。そのままズシーンと重量ある巨体が倒れると、ジャイアントボアはピクピクと痙攣して、よく見てみればいつの間にか額に傷跡が残っていることに気づく。


「えっ? 終わり? いつの間に……?」

『何をボケっとしている。とっくに終わらせたぞ』

「もうっ!?」

「あぁ、俺が額に攻撃を食らわせたけど結構防御が高いのか硬くて一撃で仕留められなかったんだが、レスペクトの邪視ってやつ? で、トドメを刺してくれた」

『あの程度私の敵ではないからな』

「お、おぉ……」


 レイヤ、一撃で仕留めようとしていたの? それでもジャイアントボアの額の傷は結構深く見えるんだけど……。

 あんな深手を負って倒れなかったジャイアントボアが凄いのか、戦闘経験が少ない上に巨体な魔物にダガーで深い傷を負わせたレイヤが凄いのかわからない。

 ……まぁ、邪視を発動するだけでイチコロのレスペクトの方が凄いのかもしれないけど。

 普通のカトブレパスなら相手のレベルが高すぎたら効き目は半減するらしいので、今みたいにトドメを刺せるのならまだまだうちのレスペクトはレベルが高いのかもしれない。どれだけ強いのか……。


 結局、私は何もせず傍観しただけで作物荒らし事件はこれにて解決である。

 さすがに魔物の死体を畑の上に放置するわけにもいかないので、夜中とはいえ交代で勤務する憲兵さんに報告し、私達では持ち運ぶことが出来ないジャイアントボアを彼らに回収をお願いして、翌朝ギルドへ届けてもらうことにした。

 ワイルドボアの方はそれなりに重いけど、アイテムバッグに押し込むことは可能なので押し込ませておいた。四匹全部入るかな? と思ったがあっさり飲み込んでいく。

 最初は大きなリュックサック分くらいしか入らなかったアイテムバッグはレベルが上がるごとに少しずつ容量が増えていってるのだが、今ではワイルドボア四匹くらいは楽勝のようだ。

 私も報告のため翌朝は冒険者ギルドへ足を運ばねばならないし、眠くもなってきたのでみんなで家に帰ることにした。






 そして翌朝、冒険者ギルドにレイヤと共に報告しに行くと、すでに憲兵さんから報告を受けたフロワさんから報酬金を渡された。

 どうやらワイルドボアとジャイアントボアを討伐した分の金額もあるらしく、予定よりもかなりの額を頂いてしまった。


「最初は野犬か魔物のどちらかという予想でしたのに、まさか五匹も魔物が関わっていたなんて……」


 フロワさんは深い溜め息を吐いていた。どうやら今回の件はしっかり下調べをしたら魔物が関わっていることや大体の数などがすぐに判明出来たのに、調査した人が疎かにしたらしい。

 魔物だと判断出来たら依頼の金額だってすぐに上げることが出来たし、そうなれば仕事を受ける人もすぐに見つかっただろうし、フロワさんが目の下に隈を作ることもなかったはず。……さすがにフロワさんが可哀想だ。


「しかもジャイアントボアは中級者レベルの冒険者でないと大変な相手です。カトブレパスを従魔にするイル様達だからなんとかなりましたが、本当ならば下級冒険者では引き受けることが出来ないレベルの依頼です。下調べを疎かにした者には処罰を受けていただくようにします。今回は本当にありがとうございました」

「いえ……その、お疲れ様でした……」


 彼の苛立ちが顔に出ているけども、フロワさんが怒るのももっともなので心の底から労わってあげた。

 収穫祭前の大仕事ではあったが、なんとかなって良かった。それにさつまいも畑を育てている農家の人から傷物のさつまいもをお礼にいただいたのでラッキーである。……まぁ、私は役に立ってないのだけど。


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