第四十八話「自意識過剰じゃねえの!?」
「ラサミス、いい攻撃よ。 後はアタシに任せなさい!」
「メイリンか! わかった、強烈なやつを喰らわせてやれ!」
「我は汝、汝は我。 我が名はメイリン。 ウェルガリアに集う炎の精霊よ、我に力を与えたまえ! 喰らいなさいっ……『スーパーノヴァ』!!」
するとメイリンの手にした杖の先端の赤く輝いた魔石から、紅蓮の炎が生み出された。 激しく燃え盛る紅蓮の炎。 それが激しくうねりながら、巨人目掛けて放たれた。
魔法を回避すべく俺は巨人の左肩に飛び乗り、そこから更に後方にジャンプして、空中で回転しながら、両足から綺麗に地面に着地する。
「ぐ、ぐ、ぐぐぁああああああァァァッ……!?」
紅蓮の炎が巨人の全身を包み込んで、高熱を発して燃え盛る。
肉だけでなく、首に嵌められた首輪も溶かす勢いで炎が全身を覆う。
「よし、我々も続くぞ! 一斉に光属性の魔法を放つぞ!」
「了解。 ヒューマンだけにいい格好させるわけにはいかない!」
「そうだ、この戦いは猫族の戦いだ!!」
そう口々にしながら、それぞれ光属性の魔法を放つ猫族達。
火達磨になった巨人に目掛けて、次々と光属性の魔法攻撃が命中して核熱状態になると、巨人は断末魔をあげながら、背中から地面に倒れた。
「馬鹿なっ!? 単独連携だと……し、信じられん。 それにあの小娘も凄い魔法を撃ちやがる。 一体何者だ!?」
と、動揺気味に呟くジークという名の赤髪のエルフ。
「アタシ達は『暁の大地』の団員よ! 猫族の王室とも懇意している連合よ。 アタシ達が来た以上、アンタ達エルフの思い通りにはさせないわよ!」
「な、何っ!? 猫族の王室から派遣された連合か!? どおりで手強いわけだ。 そこの小僧といい、お前といい戦い慣れしている」
「ん? そこの小僧? まあいいわ。 そういうわけだから、大人しく降参しなさい! じゃないとアタシの大魔法を喰らわせるわよ!」
いきなり割り込んできて、場の主導権を握るメイリン。
なんというかこの物怖じしないタフな精神は見習うべきかもな。
だが動揺するジークを庇うように、一人の女エルフが前に出て、手にした紅の鞭をメイリン目掛けて放った。
「きゃあっ!! い、痛いっ!?」
鞭に叩かれて、身体をよぎらせて後退するメイリン。
「ジーク、油断しないで。 猫族も四大種族の一種族なのよ。 別にヒューマンの助っ人が居てもおかしくないわ。 小僧や小娘如きに遅れを取ってる場合じゃないわよ!」
「マライア! そ、そうだな! わかったぜ!!」
「ジーク、その意気よ。 良く見れば本当にガキだわ。 精々十六歳前後の坊やに小娘よ。 こんなガキに負ける私達じゃないわ!」
マライアと呼ばれたエルフの女は、青銀色のストレートヘアを翻しながら、これ見よがしに手にした紅の鞭で地を叩いた。
エルフらしい非常に整った顔立ち。 手足も長く腰もくびれている。
青白い肌に、ビスチェのような戦闘衣に身を包んでおり、上半身は、胸部以外はほぼ素肌を見せているが、下半身は、豹柄の派手な腰巻をスカートのように腰に巻きつけていた。
「そんなにジロジロ見ないでよ。 坊やにはちょい刺激が強いかしら?」
「み、見てねえよ! じ、自意識過剰じゃねえの!?」
俺は思わずマライアという女の言葉を否定する。
なんか俺が性欲持て余した思春期の少年みたいな言い方は、マジやめてくんね? ホラ、メイリンが冷たい視線で見てるよ?
「ラサミス、ボサッとするな! その女は私が引き受ける」
「あ、アイラッ!!」
颯爽と現れて、マライアの前に立ちはだかるアイラ。
するとマライアは双眸を細めて、アイラを睨みつけた。
「今度はエルフのおでましかい。 いやよく見ると混血っぽいな。 だが骨はありそうだ。 いいだろう、相手してあげるよ!」
「ならば喰らえ! 『ダブル・ストライク』!」
技名を叫ぶと同時にアイラが強力な二連撃を繰り出した。
だがマライアも身軽な動きで、アイラの攻撃を躱す。
そこから身体を捻って、手にした紅の鞭を振るうマライア。
だがアイラは後退せず、左手に構えた盾を前に突き出して前進する。
ピシッ!!
振るわれた紅の鞭を盾で防ぐアイラ。
そして両足を踏ん張って、左手に構えた盾を前に突き出す。
「――『シールド・ストライク』ッ!!」
「なっ……ううっ!!」
次の瞬間、マライアの顔にアイラの盾が命中。
マライアはやや後ろに吹っ飛んだが、即座に体勢を整えた。
だがその赤い唇から流れ落ちる鮮血を目にすると、柳眉を吊り上げた。
「血っ!? このアマァァ……この私に血を流せるなんて……こいつは……マジで許せんわっ!! ぶっ殺す!」
「ラサミス、ここは私に任せろ! あの赤髪のエルフは君に任せた! いずれ敵の主力である漆黒の巨人が来るまでに、少しでも敵の戦力を削っておく必要がある!」
「お、おう! わかったぜ!」
次回の更新は2018年8月25日(土)の予定です。