チーム
「私の17年という短い人生の中でここまで言った事と真逆の事をした人は見た事も聞いたこともありません」
俺の横を大きな足音をたて歩く金髪の女が怒りを隠さず喋る
「・・・・はい」
それに対し俺は余計な事を喋らず『はい』とだけ答える
「私は言いました。部屋から出るなと」
「・・・・・・・はい」
「それはあなたの為を思って言った言葉です」
「・・・・・・・・・・はい」
「あなたはその心配するわたしの心を見事にこれ以上ないくらい踏みいじりました」
「・・・・・・・・・・・・・はい」
「まぁただ出るだけなら私もここまで怒りませんでした」
「・・・・・・・・・・・・・・・・はい」
「部屋から出るなというのも、あなたが他の魔物に見つからないようにするのが目的でしたから、たとえあの部屋を出たとしても他の魔物に見つからなければいいだけですからね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」
「・・・・・で、なぜ私以外の魔物に姿を見せないでくださいという言外の言葉を究極的に裏切ったんですか?」
女が歩く足を止め俺を『3つある目』でジロリと睨む
だが身長は俺より低いため上目になってしまいそんなに怖くはない
「いや、ほら、言外の言葉とか言われましても俺そんな頭良くないし? 言葉にしてくれないと分からないって言うか、俺は人の心理とかよくわからなくて全然お前の気持ちというか言いたいことというかそういうのが全く分からなかったんだよ! そう! まさに理解不能ッてやつだ!! よって! 俺に理解できるようにしなかったお前が悪い!!」
そして俺はここぞとばかりにいい訳をした
「黙れ」
「アッハイ。すみません・・・・」
俺の必死のいい訳は効果なかったようだ
というより逆効果みたいだ
「とりあえず、どうやったらあんなことになるんですか?」
「あ、あんなこととは・・・?」
俺は心当たりがあるがとりあえず何も分かんない感を出してみた
すると隣で『ブチっ』と何かがキレる音がしたように感じた
「他の魔物に姿を見られるなって言ったのになんで魔王の妻がいる祭壇に立ちこの拠点にいる全魔物達の注目の的になっているんですか!!?」
金髪三つ目女、『サチュ』がとうとうブチギレた
「いや、その、なりゆきで」
「なりゆきであんなことになる訳ないでしょう!! しかも見張り役になるなんて何考えてるんですか!!」
「いやもう俺もわかんねぇんだって!!」
これは本当だ
「あなたが祭壇に登ってのを見たときの私の気持ちが分かりますか!?」
「『あれ? なんかついさっき見たことあるようなのが祭壇に登って行くぞ? 部屋に隠れているはずの人が祭壇に登って行くぞ? あれー?』」
「大正解ですよ!!」
「やったぜ」
「ふざけてんのか!!」
わき腹を小突かれた
「痛い!!」
「あぁもうあぁもう!! おかげで私も見張りしなくてはいけなくなったじゃないですか!!」
サチュは頭を抱えうずくまる
「いや別にお前は見張りしなくても・・・」
「あなたを一人にするとロクなことにならない事が今回の事で分かったんですから、もうあなたから目を離しませんからね!!」
「お、告白かな」
「殺すぞ!!」
どうしたことだと言うくらい睨まれた
「本当に申し訳ありません!!」
「全く・・・とりあえず振り分けられた部屋に行きますよ」
「お、おぉ。・・・確か見張りは7人1チームで行われるんだったな?」
ここで今この状況になるまでの経緯を俺は思い出す
あのあと、聖堂に残った奴。つまり見張りをする奴らが思っていたよりいた
魔王の妻である『トガノ』はそこで『ではここに残ってくれた勇敢な方々にはチームとなって見張りをしてもらいます。あとで使いの者を出しますのでその使いの言う部屋にいってください』といい、どこかに行ってしまった。
どうやらトガノは少ない時間で見張りをする為残った魔物の顔を全て覚え、振り分けをする為に自分の部屋に戻ったようだ
残された俺たちもトガノの使いが来るまでは暇らしく、個人個人自由に聖堂から出て行った
そして、『フルウ』も『厚着女』もいつの間にかいなくなっていた
紐で結ばれてたはずなんだがなぁ・・・
んで。とりあえず俺もサチュに隠れてろと言われた『医務室』に戻ろうと歩き出した所でその本人であるサチュに見つかったんだ
それから20分くらいグチグチとサチュに文句を言われてる途中にやって来た使いが言うには、7人で1チームになって見張りをしろ、お前たちとチームになるやつらはある部屋に集められているからお前らも早く行け。と言われ俺とサチュは2人でその部屋に向かっているところだ
「そうですよ。・・・・はぁ・・・大丈夫ですかねぇ・・・」
「何が?」
「あなた自分の立場分かってるんですか? 人間ってバレたら殺されるんですよ? それなのに5人の魔物とチーム組むんですよ?」
「もうここまできたら開き直るしかないだろ。その5人の魔物を騙すさ」
「・・・・出来るんですか?」
「笑わせるな。これでも友人からは『敗北者』という名誉な称号を貰っているんだからな」
「それ不名誉の間違いじゃないですか?」
「うるせぇ。・・・そういや、なんでお前は俺とチームになれたんだ?」
そういえばサチュと俺はもう最初っからチームとしてカウントされていた
なんだかそれがとてもひっかかる
「『トガノ』様に直接私がお願いしたんですよ」
サチュはまだ少し怒ってはいたが俺の質問には答えてくれた
「そ、そうか。よく許して貰えたな」
「そりゃ私があなたを介抱して・・・・いえ、まぁ別にいいじゃないですか」
「お前今なんか言いかけただろ?」
「いやぁ、今日は寒いですね!」
「おまえ話しのそらしかた下手すぎだろ!?」
「いいじゃないですか何でも!! ほらもうすぐチームになる5人が待ってる部屋ですよ! 覚悟してくださいね!!」
「何だお前変なテンションだな・・・」
そう言ってるうちにとうとうこれからチームになる魔物達がいる部屋に着いた
・・・なんでこの部屋のドア赤いんだよ毒々すぎるだろ
「・・・・いいですか? あけますよ?」
「まぁまて、落ち着け。まだ覚悟が・・・・」
「おや? シントじゃないか」
「ファアぁ!!?」
「キャァァ!!?」
「ッ!!? どうした!?」
いざ入るぞとドアに手をかけた時、急に後ろから声をかけられた
急いで振りかえるとそこには先ほど俺と一緒に行動していた奴がいた
「な、なんだ『厚着女』かよビビらせんな殴るぞ!!」
「なんなんですかいきなり後ろから声掛けるなんてどうかしてるんじゃないですか!?」
「何故私は声をかけただけでここまで叱られなければならんのだ?」
『厚着女』は相変わらずフードとマフラーのようなもので顔を隠していた
先ほどと変わっている所は持っているのが槍ではなく紐になっているという所だけだ
因みに紐は厚着女の後ろにいる『フルウ』につながっていた
「何してんだよフルウ・・・?」
「あぁシントか・・・。この紐の事は聞くな」
「お、おう」
フルウは自分の手首にしっかり巻きついている紐と厚着女を恨めしそうに見ながら言う
「というかお前は女を連れてここで何をして居るんだ?」
厚着女が俺とサチュを交互に見て言う
「・・・もしかして厚着女とフルウもこの部屋に用か?」
こいつらがここにいるのは、もしかしたら俺たちと同じ理由なのかもしれないと思い聞いてみた
「あ? お前らもこの部屋に? って事は俺とお前同じチームか」
俺の予想は当たっていたらしく、俺が考えていたのとは少し違う形で見張り仲間の顔が割れた
「みたいだな」
「あの・・・シントさん。この方達は?」
フルウと俺が普通に会話をしている事に疑問を持ったのか、サチュが俺に耳打ちをしてきた
「ん? あぁ。えぇっと・・・。男の方の名前は『フルウ』。頭についてる犬耳と後ろに有る尻尾からみたとおり犬人だ」
「ちげぇよ【人狼族】だ。なんだ犬人って」
「フルウさんですね。私は【アイズ族:三つ目】の『サチュ』です。私もシントさんとフルウさんと同じチームになります」
「【アイズ族】? 珍しい種族がなんでまた?」
厚着女はサチュの種族を聞くなりすぐに質問をしてきた
ふむ。なるほど、アイズ族は珍しい種族なのか・・・
「い、いろいろありまして・・・」
「ふーん。そうなのか」
フルウは全く興味がないらしく適当な返事を返してきた
「・・・・まぁ、あまり他人の事情を詮索するものでもないな」
厚着女もあまり深くは聞いてこないみたいだ
正直助かった。サチュの言う『色々』には俺が少なからず関係しているはずだからな
「まぁだが、ここでずっと立ち話というのもなんだ。サッサと入ろうじゃないか」
「あっ、ちょ」
厚着女はドアの前にいた俺達をどかしサッサとドアを開けてしまった
「あら? 来たみたいね」
「1,2,3,4・・・・。これで7人・・・だね・・」
「ごらがらみじかい間になるだろうが、よろしぐな゛ぁ!」
そこには、これから長いこと付き合うことになる奴らが椅子に座って俺らを歓迎していた