転生
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2026/9/12 20:32
うちの娘がずっとゲームをしていて、最近成績も悪い。やめさせたい。
@2_hahaoya
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分かります。うちの息子もそうで、どんどんと悪化していってます。やめなさいと言ってもやめず、学校のテストは赤点ばかり
@ikuji_taihenn22
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そうですよね。どうやったらゲームをやめさせられるんでしょうか
@2-hahaoya
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「ゲームが問題ではないでしょうよ......」
SNSを見ながら、玲奈は独り言をつぶやいた。
「ゲームをすることが直接的な成績の悪化にはつながらないだろうにね。
『ゲームをする ならば 成績が悪化する』
という論理には誤謬しかないね。それを妥当にするなら、
『ゲームをする ならば 勉強時間が少なくなる』
『勉強時間が少なくなる ならば 成績が悪化する』
という公理がなければならないよ。そうしたらゲームが成績悪化につながることが論理的に示せる。
あれ、でもそれだったら、ゲームをしていたとしても勉強時間を確保できているなら成績は悪化しないことになるね。なぜ世の親というのはそれに気付かないのかねぇ」
玲奈は、大学から帰ってきてすぐにソファに横になり、SNSを開いていた。
彼女は現在大学で、若くして准教授として研究や教育に携わっている。玲奈の発表した、数理論理に関する研究が高く評価され、大学院の博士課程の1年目で博士号を取得していた。
数理論理学とは、数学の1分野で、論理の構造そのものを研究する分野だ。
『AならばB、BならばC、したがってAならばC』というような論理はどこかしこでも見られるものだ。
玲奈はそれを研究しており、20代のうちに准教授となる異例の成果を挙げていた。それゆえに、ニュースなどでも少し取り上げられたことがある。
そのとき、彼女のSNSアカウントに、ある1通のダイレクトメッセージが届いた。
「あなたは神を信じますか?」とだけ書かれていた。フォロワーは0、フォローも0。しかしアカウント設立は10年前のようだった。
「なんだあこれは?よくあるナンパかね」
異性に変態チックなメッセージを送られることは多々ある。しかし、このようなのは見たことがない。玲奈は面白がって返信することにした。
「信じない。これまでに観測されたことがない。存在するとはいえない」
すると、すぐさま返信が来た。
「観測されたことがないことは、存在しないことの証明にはならない。観測されずとも存在が証明される事象はある」
その内容は、玲奈の言葉に反論するようなものだった。
「えらく攻撃的だねぇ。『信じるか?』という質問なんだから個人の思想だろうに。ディベートでもしたいのかね。まあ、素直に問いに答えるよ」
玲奈は問われたことを曲解せず、そのままに答える。
「正しい指摘だとは思うよ。ダークマターとかね。しかし、この質問は『信じるかどうか』についての問いであるし、そちらも神が存在している根拠を示していない以上、『存在するとはいえない』以上の結論は出せない。
信じるかどうかの話に戻すと、神の存在どうこうなんて反証可能性もないのだから、科学者としては信じないとしかいえないね」
彼女が送信ボタンを押したその刹那、まるで待っていたかのように返信が来た。
「一応問おう。反証可能性とは?」
玲奈はその文章を見て、知らないのか?それとも言葉を引き出したいだけか?と考えた末、簡単に説明を加えた。
「ある仮説が、実験や観察で反証、つまり否定される可能性があるかどうかということ。例えば『リンゴは木から落ちる』という仮説は、実際にリンゴを落とそうと実験してみて、落ちなかったら仮説を否定できる。
一方、『神は存在する』という仮説は、実験や観察によって存在しないことを示せない。悪魔の証明だね。そういった反証可能性のない仮説は、科学の世界では疑似科学として議論の対象にあがらない」
すると例のごとく、返信が来た。それは議論するようなものではなく、意味深長な問いであった。
「君は、論理的でない世界をどう思う?もし論理で全てが決まる世界があったとしたら、行ってみたいと思うかい?」
論理的ではない世界、無論それは玲奈たちの住む世界であることは明白であった。玲奈は、彼女の素直な価値観を述べた。
「この世界は、ほとんどが感情的な印象で決まるものだね。政治も、科学的に正しい政策よりも正しそうに見える政策をとるものだし、もっとミクロな世界でもそう。
会社の会議とかも、多数決といった論理的に妥当でない方法で決められることは多いし、日常的な会話でも印象や感情で決めることがほとんど。SNSなんかまさにそれを体現しているね」
玲奈は、そこまで書いて、一度深呼吸した。そして、一文を付け足した。
「もし論理で全てを決める世界なのなら、それは夢みたいな世界だね。ぜひとも行ってみたいよ」
送信ボタンを押し、送信した。
すこし眠くなったから目を瞑り、まだ終わっていない仕事があることを思い出し、目を開けると、そこは中世ヨーロッパのような世界だった。
「なん......なんだこれは......」
隣では、なにやら討論している声が聞こえてきた。
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