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【連載中】MOBILE FORMULA 2135 -スターライガ∞ 逆襲のライラック-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
【Chapter 2-4】その扉の向こうに待ち人あり

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【94】突入(前編)

 作業開始から約5時間後――。


「まさか、こんなトンネルが砂漠の下に埋まっていたなんてね……」


正確な情報提供に基づいた効率的な掘削作業により、スターライガチームは明らかに自然の物ではない構造物をついに発掘した。


第一発見者となったヒナは固く閉ざされたトンネルの入り口近くで待機しているが、その様子を見る限り侵入者撃退用のトラップなどは設置されていないようだ。


「しかも、MFの出力でも容易には開かなさそうなこの入り口――これを造り上げたというカーメン・コネクションは何者なんでしょうか?」

「その真相を発掘することも私たちの目的の一つだ」


しかし、文字通り唯一の障壁となる扉はおそらく鋼鉄製の強固な構造であり、闇雲な破壊工作では突破できないだろう。


金庫室に使うような扉を何かしらの方法で入手したカーメン・コネクションの底知れなさにソフィが頭を捻っていると、その先に行かなければならないルナールが満を持して現場に出てくる。


「破壊工作で何とかできるか? そうでなければクラッキングで電子ロックを突破するしかないが……」

「ザッと調べたところ、扉の強度はかなり高く設定されていると思われます」


愛機ν(ニュー)ベーゼンドルファーのマニピュレータで扉に触れたリリカの質問に対し、生身で調査を行っていた白兵戦要員のフランシスは"物理的な破壊工作は難しい"と答える。


「しかし、上下左右からシャッターが展開するタイプです。MFのマニピュレータを潜り込ませる隙間を確保できれば、後は力尽くで抉じ開けられるかと」


だが、彼女は物資搬入時の利便性を考慮したであろう開閉方式に着目し、爆破以外の方法で無理矢理開けられるかもしれないとも付け加える。


「だったらビームソードで溶断してしまおう」


最終判断は突入部隊の指揮を執るライガに任された。


彼は白兵戦要員や作業員たちを払い除けると、通常戦闘ではあまり使わない愛機パルトナ・メガミRMの専用ビームソードを抜刀。


「ライガさん……!」

「時間勝負だ! 破壊工作を察知した相手が動く前に侵入経路を確保するぞ!」


その意図を理解したレカミエ機をハンドサインで呼び寄せつつ、白と蒼のMFはビームソードを僅かに見える隙間に突き立てるのだった。



 戦闘部隊のエネルギー消費を抑えるため急遽作業担当を交代するなどのグダグダはあったが、扉を撤去できる段階に至るのには30分も掛からなかった。


「ッ! 扉が外れるわ! みんな離れて!」


溶断の段取りが少し甘かったのか周囲のMFが押さえる前に扉はぐらつき始める。


少し離れた位置で作業を見守っていたクローネは咄嗟に叫ぶが……。


「意外と揺れなかったな……もしかしてじつは軽いのか?」


ところが、実際に外れた扉は意外なほどゆっくりと地面に落下。


すぐ近くにいたランのオルタスティーリアは尻餅こそついたものの、命の危機を感じるほどの状況ではなかったと感想を述べる。


仮に鉄の塊だったら大地震のような激しい揺れが周囲を襲い、振動と風圧でMFを吹き飛ばしていたはずだ。


「見たところ非金属の複合素材のようだ。それであの強度とはな……」


状況が落ち着いたところでコマージは砂上に落ちた巨大な扉の一部に近付き、機体から降りて生身で素材の感触を確認する。


じつは彼女は工業高校出身なので、材料工学に関する最低限の知識は持ち合わせていた。


「これから押し入ろうというのに、警備員が来る気配も無い。平和ボケしているのかそれとも……」

「レーダーで走査できる範囲内には敵性反応は見られない。姉さんの言う"警備員"が来る前に突入するべきだと思う」


一方、何処まで続くか分からない暗闇にこれから突入するルナールとリリカは"敵の有無"を気に掛けていた。


待ち伏せ攻撃で一網打尽にされるのだけは避けたいところだ。


「よし、実体シールドで壁を作れる俺とリリカさんが前衛をやる」


突入開始を決断したライガはまず大まかなフォーメーションを決める。


一番危険と思われる前衛は最も高い技量を持つ彼自身とシールドによる"タンク役"が可能なリリカのツートップで臨む。


「ルナール先輩とクローネは白兵戦要員を乗せたポッドの直掩、レカミエはそのポッドの正面を守るように布陣しろ」


続いて残りの3人にも適切なポジションへ就くよう命じるライガ。


閉所でも制約が少ない近接戦闘が得意なルナールとクローネには全領域作業ポッドに張り付き、敵に接近された場合の排除を担当してもらう。


レカミエは後衛に入れるか悩んだが、直掩機が多すぎても邪魔なため中間に配置することにした。


「こちらフライング・ダッチマン1、発進準備完了しました」

「全機、ここから先は何が待ち構えているのか俺にも分からない」


フランシスたちが乗り込む全領域作業ポッド――コールサイン"フライング・ダッチマン1"の準備完了を確認したライガは、突入を前に簡単な訓示を行う。


「あらゆる事態に対応できるよう、落ち着いて行動しろ――行くぞ!」


もちろん、彼は仲間たちのことを信じていた。


様々な困難を乗り越えてきたその力を……。



 作戦開始前に不安視されていた事項の一つして、"そもそもトンネル内をMFやポッドが通過できるか"という懸念があった。


「くそッ、ライガさんたちを見失わないように付いていくしかない……!」


だが、幸いと言うべきかトンネルには相応の内部空間が確保されていた。


レカミエもマージンの少なさではなく分かれ道出現時のルート選択ミスの方を恐れているように見える。


「今のところは一本道といった感じだが……それにしても狭くはない通路だ」


当然、その程度の広さで尚且つ分岐が無い事実上の一本道となれば、ライガほどの実力者にとっては簡単なフライトとなる。


彼は前の戦争でここよりも危険なトンネル内飛行を経験していた。


「お前、ルナサリアン戦争の時もレガリアと一緒にトンネルに突入したんだろ? その時とどっちが狭い?」

「後方から敵機が飛び込んでこないだけこっちがマシですよ」


その時との比較をリリカから求められたライガは即座に"今回の方が楽"と答える。


何気無い会話を交わせるほどの余裕が彼女たちにはあった。


「MFがある程度余裕を持って飛行できるスペース――物資搬入のための通路にしては広すぎる気もします」


クローネが指摘している通り、目が慣れてくるにつれてトンネルが意外なほど広いことが分かるようになる。


「ああ、まるで私たちが来ることを知っていたかのように――な」


それをルナールは航空機が飛び込んでくることを想定していたかのような"仕様"だと感じていた。


「内部は意外と明るくて助かるな。この施設の照明設備は生きているようだ」


飛び易さの要因は内部空間の広さだけではない。


ポッドの副操縦士席に座るフランシスはトンネル内の明るさが十分確保されている点に注目する。


「これで防衛機能だけ喪失していてくれたら文句無しなんですけどね」

「ッ! レーダーに敵性反応!? 全機止まれッ!」


しかし、順調な移動はどうやらここまでのようだ。


ポッドの操舵を担当するステファニー・デサイルがあからさまなフラグを立てたその直後、ライガは機上レーダーで自分たち以外の反応を確認。


乗機パルトナの右手を上げ、部隊を一時停止させる。


「あれは……多脚戦車か!?」


前衛のリリカは敵影をハッキリと視認することはできなかったが、そのシルエットを表現する言葉として選んだのはSFチックな単語であった。

【レガリア】

スターライガの創設者レガリア・シャルラハロートのこと。

現在も組織に籍を置いているが現場からは離れており、ルナサリアン戦争で経済損失を被った本業の再建に注力しているという。

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