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【連載中】MOBILE FORMULA 2135 -スターライガ∞ 逆襲のライラック-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
【Chapter 1-6】過熱するテロリズム

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【41】NIJNTJE

 レヴォリューショナミーの航空戦力はデン・ハーグ都市圏を中心に広く展開。

当然、オランダ空軍はこの全てに対応し迎撃しなければならない。

「ファイア!」

オランダ空軍が運用するスパイラルB型は機体こそオリエント連邦製の中古機だが、兵装など装備品はNATO軍の共通規格に対応した物を使用する。

オランダ空軍のスパイラルのメインウェポンは、大気圏内でも威力が変動しにくいアサルトライフルだ。

「チッ、かわされた!」

しかし、レーザーよりも弾速が遅い攻撃は容易に回避されてしまう。

「(あの新型機のドライバー……こちらの手の内を読んでいるのか?)」

武装の特性による影響だけではない。

オランダ空軍のMFドライバーと戦闘機パイロットが対峙しているレヴォリューショナミーの新型MFは、ヨーロピアンスタイルの戦法に対して明らかなメタを張っていた。

これはその戦法に精通したヨーロッパ人でなければ難しい芸当だ。

「(悪く思うなよ……同胞の戦い方はよく知っているのさ)」

そう、新型MFを駆るこの男はオランダ人――しかもオランダ空軍MF部隊出身者であった。

彼が職業軍人として真面目に働いていた頃からカリキュラムはあまり変わっていないらしい。

「(輸入物の型落ちでは俺の"フェルスタッペン"に勝つことはできんよ)」

だが、彼は――ラウ・ズヴァルツは違う。

この男は軍を辞めた後アメリカの民間軍事会社に再就職して独自に腕を磨いてきた。

その会社は同業他社との競争に負けて解散してしまったが、ズヴァルツはフリーのMF乗りとして戦間期を過ごし、当時の元上司の紹介でレヴォリューショナミーにスカウトされた実力者である。

「ファイア!」

MF運用先進国オリエント連邦出身者並みの技量を誇るズヴァルツの乗機は"XREV-003 フェルスタッペン"。

オーソドックスな機体構成ながら戦闘中換装が可能な構造のバックパックを持つ、汎用性に優れた万能型MFだ。

レーザーライフルは機体本体の標準兵装であり、装着中のユニットを問わず使用できる。

「は、速い!? また一機やられた!」

動力性能を強化する高機動型バックパック"マックスユニット"を装着したMFの高速戦闘にオランダ空軍機は追従できず、鋭いマニューバから繰り出される精密射撃によって瞬く間にスパイラルを撃墜されてしまう。

「あのオレンジを徹底的にマークしろ! あいつな動きさえ押さえれ――!」

オレンジ――正確には珊瑚色とティールブルーのカラーリングを採用しているフェルスタッペンは、オランダの人気スポーツであるサッカーに例えるならセンターフォワード的な存在であり、この機体のマークを命じたベテランドライバーの判断は間違っていなかった。

もっとも、フォーメーションを再構成している間にベテランドライバーのスパイラルは蒼いレーザーに撃ち抜かれてしまっていたが……。

「フッ……良い援護だ」

「再就職先を斡旋してくれた恩人の足を引っ張るわけにはいかんからな」

ズヴァルツが指揮するMF部隊はレヴォリューショナミーでは珍しく有人機主体で編成されている。

"Type72T トーチャー"という珍しい機体に搭乗している彼の部下たちは大半が欧米人男性であり、かつて所属していた民間軍事会社"ホワイトウォーターUSA"の生き残りだった。


「くそッ、テロリスト風情に……!」

「正規軍でぬくぬくとしている奴らに負けるかよ!」

オランダ空軍のスパイラルB型とレヴォリューショナミーのトーチャーはどちらも旧式機で性能的にはほぼ互角だが、操縦技量と実戦経験においては後者の方が上回っていた。

乗り慣れた機体を駆る元WUSA(ウユーザ)メンバーはズヴァルツによる指揮の下、アメリカンスタイルの連携戦術で正規軍を押し込んでいく。

「(制空権争いはこちらが有利に進めているな。"スカイライン"の方も順調なようだし、そろそろビネンホフへの直接攻撃に移ってもいいだろう)」

自身で攻撃チャンスを作ったり逆に僚機の撃ち漏らしにトドメを刺したりしつつ、ズヴァルツは作戦の進め方について考えを巡らせる。

レヴォリューショナミーの作戦目標は《オランダの政治中枢の完全破壊》。

国会議事堂などが存在する地区に直接攻撃を行い、オランダの国家運営機能を一時的に喪失させることを目的としている。

ターゲット以外の建築物を巻き込まない正確性と速やかな作戦遂行能力を求められるアタッカーには、この国の土地勘に精通するズヴァルツが自ら名乗り出ていたのだ。

「援軍は必ず来る! もう少しだけ持ち堪えろ!」

「む……!」

もちろん、祖国の政治中枢上空まで侵入を許したオランダ空軍も無策で防空戦に臨んでいるわけではない。

"元同胞"が援軍待ちの防戦に徹し始めたことを察したズヴァルツは警戒心を強める。

「タイミング合わせ! マイクロミサイル発射!」

「ブフェーラ2、シュート!」

「ブフェーラ3、シュート!」

彼の予想通り戦闘エリアに3機の新たな機影が現れた次の瞬間、マイクロミサイルの雨嵐がレヴォリューショナミーMF部隊に襲い掛かる。

「あの機体……"蒼い悪魔"か!」

そのド派手な援護攻撃に助けられたオランダ空軍の戦闘機パイロットは援軍については聞かされていなかったが、自機の近くを通過していった蒼い可変型MFを見ただけで何者なのか分かった。

彼女たちはあまりにも有名な存在だったからだ。

「あいつら、たった数日でアイスランドから戻って来たのかよ!?」

「渡り鳥じゃねえんだぞ……!」

一方、数日前にアイスランドに駐留していた同志たちを完膚無きまでに叩きのめしたという、"蒼い悪魔"の登場にレヴォリューショナミーの面々は震撼する。

「チッ、戦術換装して対地攻撃に臨むつもりだったが……あれだけは対処しなくては」

世界最強クラスのエースドライバーは戦術換装の硬直時間を決して見逃さないだろう。

しかも、換装先に予定していた対地攻撃用バックパックは重装備のため運動性が低い。

"蒼い悪魔"が健在な状況での対地攻撃は危険を伴う――というのがズヴァルツの結論だった。

「隊長、データに無い新型機がいます。一見すると汎用機のようですが……」

「随伴機の方は旧式のようだ。基本的には新型をマークする作戦でいけるかと」

彼のフェルスタッペンは"蒼い悪魔"の一員であるローゼルとヴァイルにとっては見慣れない機体。

初見殺しの展開が少なくなかったルナサリアン戦争を生き残った精鋭だけあり、二人は新型機との初戦に関しては慎重な姿勢で臨む。

此間こないだみたいに突然強い奴が出てくる可能性もあり得る。慎重且つ大胆に行こう」

エースを援護するために別のエースを投入してくるなど、レヴォリューショナミーの奇策を完全に読み切ることは難しい。

MF小隊を預かるリリスはあらゆる可能性を想定しつつ戦闘に突入するのであった。


「各機、連携を徹底しろ。孤立した奴から各個撃破されるぞ。悪魔はそういうチャンスを見逃さない」

「了解!」

ズヴァルツは新人時代に所属したオランダ空軍でヨーロピアンスタイルを、その後WUSA(ウユーザ)でアメリカンスタイルの戦い方をそれぞれ学んできた稀有な経歴を持つ。

彼は自身が履修していないオリエンティアスタイルが単独戦闘に強いことを意識し、相互支援が行える状況を維持するよう僚機たちに促す。

「オランダ空軍機は今のうちにフォーメーションを立て直せ! 私たちが仕損じた分の敵機を処理してもらう!」

「わ、分かった……切り込み役は任せたぞ」

一方、珊瑚色とティールブルーのMFが率いる包囲網にあえて飛び込みつつ、リリスは友軍に対し態勢立て直しと後方からのバックアップを求める。

緊急時とはいえ本来ならば越権行為として咎められる言動ではあったが、オランダ空軍の面々は自分より格上の世界的エースドライバーの指示に反論しようとは思わなかった。

「ブフェーラ1、ファイア!」

自機を狙う多数の敵機の中から確実に攻撃を当てられる相手を一瞬で見定め、マイクロミサイルによる迎撃をバレルロールでかわしながら右操縦桿のトリガーを引くリリス。

「くッ……!」

蒼い可変型MFがすれ違いざまに発射してきた蒼いレーザーの直撃をトーチャーのドライバーは辛うじて避ける。

しかし、完全回避するには至らず左脚を撃ち抜かれてしまう。

「一機煙を吐いているぞ! 言われた通りに俺たちでトドメを刺すぞ!」

「くそッ! コックピットに火が……脱出す――!」

動力性能を命とするMFにとって機動力低下は致命的だ。

そして、事前に言われた通りオランダ空軍機たちはその隙を見逃すこと無く追い打ちを開始。

正規軍らしい統率の取れた包囲攻撃に晒されたトーチャーは瞬く間に火達磨と化し、ドライバーが脱出する前に地上へ叩き付けられていた。

「(前の戦争では奴らとは直接絡まなかったが、想像以上の戦闘力だな……)」

ルナサリアン戦争にWUSAウユーザの一員として参加したズヴァルツは、同じく3年前の戦争を戦っていたブフェーラ隊と直接対峙したことは無かった。

その実力自体は以前より業界内で随分と話題になっていたとはいえ、実際に手合わせするのは今回が初めてであった。

「やっぱりだ! 奴らはエース機の働きぶりに依存している!」

対するリリスもレヴォリューショナミーMF部隊の戦い方をよく観察しており、戦闘開始早々にしてウィークポイントを見抜いていた。

「ええ、僚機から上手く引き離せば――各個撃破は容易ですわね」

一瞬だけ連携が乱れた敵機を片手間で撃墜しながら隊長の指摘に同意するローゼル。

「しかし、エース機を処理しなければ埒が明きません。私とブフェーラ2で随伴機を排除し、引きずり出したエース機を隊長が叩くべきかと」

「いや……あれは簡単に前に出てきてくれるタイプではないと見た」

エース機を中心としたフォーメーションには定石で対抗することをヴァイルは提案するが、リリスは敵エース――ズヴァルツのフェルスタッペンは一筋縄ではいかない曲者だと睨んでいた。

【ホワイトウォーターUSA】

かつて存在したアメリカ資本の民間軍事会社。

同業他社からはアメリカ政府との癒着を指摘されていたが、ルナサリアン戦争では侵略者たる旧ルナサリアンと密約を交わし同盟関係を結ぼうとしていたことが判明している。

オリエンティア色が強い業界最大手のスターライガとは犬猿の仲であり、3年前に行われた掃討作戦により壊滅させられた。

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