表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載中】MOBILE FORMULA 2135 -スターライガ∞ 逆襲のライラック-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
【Chapter 3-6】その空は砕かせない

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

203/203

【200】ブリーフィング:軍事衛星打ち上げ護衛

 新年を明後日に控えた2135年12月30日――。


 短距離戦術打撃群艦隊の姿は日本の佐世保海軍基地にあった。


 祖国オリエント連邦から遠く離れた異国の地にやって来たのは、翌日行われる日本軍との共同作戦に参加するためだ。



「――私の兄貴は日本にいるんだ。まあ、こっちは軍事機密でそれを教えられないから、あっちは知らないんだけどな」


 ブリーフィングルームに集合しているMF部隊の面々の雰囲気は和やかだ。


 それは会話の中心にいるアヤネルのおかげだろう。


「お兄さんは何をされている方なの?」

「声優だよ。兄貴は日本語もネイティブ並みに話せるから、所謂"ガイジン"やハーフのキャラクターをよく演じるらしい」


 隣の椅子に座るスレイから質問されたアヤネルは兄トモカズの職業を即答すると、私物のスマートフォンを操作し動画サイトに公開されている出演作品のティザームービーを見せる。


《分かってるよ! だから、世界に人の心の光を……見せなくちゃならないんだろ!?》


 これは20世紀に公開されたアニメ映画のリブート作品であり、トモカズは主人公であるエースパイロット役に大抜擢されていた。


 日本が本場であり日本人が強いと言われる声優業界において、オリエント人男性がジャパニメーションの主役を演じるのは歴史的快挙として大きな話題となった。


「良い声だな。日本語だから何を言ってるのか分からないことだけが残念だ」

「はははっ! 私も分からないんだなこれが!」


 その音声を聞いたフェルナンドのリアクションに釣られて思わず爆笑してしまうアヤネル。


 兄貴と異なり彼女は高校卒業止まりのため、MFドライバーに必要な航空英語以外の外国語はよく分からなかった。


「……」


 アヤネルとその周囲が学校で言う"一軍"だとしたら、少し離れた席に一人座るアニエスはクラスに馴染めない"ぼっち"だろうか。


 前回の作戦終了後に中隊長のセシルから鉄拳制裁を受けて以降、それで心境に変化が表れたのかめっきり大人しくなってしまった。


「みんな居るわね? これよりブリーフィングを開始するわよ」


 次の作戦は"比較的簡単"と予想されており雰囲気は少々弛んでいたが、短距離戦術打撃群参謀のカリーヌが入室して来ると流石にブリーフィングルームの空気は一変するのだった。



 みんな知っているかもしれないけど、今回の作戦は日本軍との共同作戦よ。


 ここサセボから南南東に330キロほど離れた島にある、タネガシマ宇宙センターで実施される武装偵察衛星"トリフネ"の打ち上げを護衛します。


 トリフネはオリエント連邦と日本の国際共同による多用途戦略衛星計画――通称M.S.S.Pに基づき開発された、意欲的な設計と革新的な技術を持つ次世代型の軍事衛星。


 通信、気象、航法、偵察といった用途を一基で賄えるトリフネは"四つの色を持つ衛星"とも呼ばれ、これの運用が軌道に乗れば宇宙規模の攻防において優位に立てる可能性があるわ。


 そして、明日打ち上げられるトリフネは運用データの収集が目的の先行量産型1号機。


 これを軌道投入をできるか否かがM.S.S.P自体の進捗に大きな影響を及ぼすことを忘れないようにね。



 トリフネの存在をレヴォリューショナミーは脅威になると判断したのか、打ち上げ妨害のため大規模な航空戦力を投入するという情報を入手した。


 MF部隊はタネガシマ宇宙センター周辺空域に向かい、先んじて展開している日本空軍の航空部隊と共に警戒に当たりなさい。


 レヴォリューショナミーがどういった作戦で仕掛けてくるか予想は難しいけど……総力戦になる可能性も十分あり得る。


 また、あなた達が以前交戦した強力な敵エースらしき機体の目撃情報も寄せられているわ。


 これが本当に参戦してきた場合、対抗できるのはおそらくあなた達だけよ。


 防衛戦とはいえ決して気を抜かず、細心の注意を払って任務に当たるように。



 ブリーフィングが終了しMFドライバー達が全員退室したのを確認してからカリーヌは部屋を出る。


 通路で待っていてくれた実妹セシルと合流し、個人的な会話を交わしつつ並んで歩く。


「セシル、あなたからの要望の件だけど――」


 まずカリーヌは妹から出されていた要望に対する返答を伝える。


 その要望内容とはセシルの乗機オーディールM3/CSLの改良案についてだ。


「年明け後にIHI(石垣島榛名重工)のエンジニアを派遣してもらうよう手配できたわ」


 既知の通りM3/CSLは過給機付きE-OS(イーオス)ドライヴのピーキーな出力特性が課題となっているが、過給機――正確にはターボポンプと呼ばれる装置は日本企業に特注した物を使用している。


 過給機周りの調整は自分達だけでは限界があるため、任務で来日するついでに設計者に見てもらおうというわけだ。


 本来はM3/CSLの実戦投入前にオリエント連邦へ来てもらう予定だったのだが、民間人に対する渡航制限によりエンジニアは出国できない状況が続いていた。


「いずれにせよ明日の作戦には間に合わないから、明日までは我慢してちょうだい」


 エンジニアには正月休み返上で佐世保まで出張してもらうが、彼は勤務地の福島県在住なので到着は年明け後になるという連絡があった。


 妹がピーキーマシンに苦労していることは知っており同情しているとはいえ、相手方にも事情は付き物だとカリーヌは理解を求める。


「その代わり、運用データを基にできる限り最適化を行わせるから」


 彼女が愛する妹のためにできることはあまり残されていなかった。



「了解した。私が提出した技術レポートについて何か言ってなかったか?」


 状況に理解を示したセシルはただ要求を繰り返す愚か者ではない。


 IHIのエンジニアが円滑に改善案を検討できるよう、実機の操縦で自身が感じた点をまとめたレポートを相手企業に送っていた。


「"フィードバックがシンプル且つ正確で分かりやすい"と担当者の人は評価していたわよ」


 その技術レポートに対する返信を受け取ったのはカリーヌだったのだが、彼女が話を聞いていた限り反応は悪くなかったはずだ。


「そうか……んじゃ、私はシミュレータールームに向かうからこの辺で」


 それを知ったセシルは安堵したのか珍しく笑みを浮かべると、子どもの頃のような砕けた態度を見せながら別れを告げる。


「あまりこんを詰め過ぎないようにね」


 実機は翌日に向けた最終調整で使えないため、シミュレーターでセッティングを煮詰めるのだろう。


 自分と同じ黒髪を持つ妹の後ろ姿をカリーヌは穏やかな表情で見送る。


「(CSLはシミュレーターでも基本的にあの子しか扱えない。もっと効率良くデータ収集するためには、テスト専任のドライバーが欲しい)」


 シミュレーターのメリットは現実では危険だったり再現性が低い状況をノーリスク且つ条件を揃えて試せる点だ。


 ……なのだが、オーディールM3/CSLはシミュレーター内でさえじゃじゃ馬ぶりを発揮しており、以前カリーヌが聞いたところでは"実機はもっと極端な挙動をする"と言われているらしい。


「(……MF部隊の子たち以外でMFの操縦経験があるのは、私しかいないけど……)」


 シミュレータールームの機材は事前申請すれば誰でも利用することができる。


 しかし、オーディール系列機の実際の操縦席を流用した作り物と言えど、未だ"コックピット恐怖症"にさいなまれるカリーヌは予約を取る勇気を振り絞れない。


 かつてはセシルが"カリーヌの妹"と呼ばれ続ける理由となっていた、卓越した操縦センスはこのまま忘れ去られてしまうのか……。

【石垣島榛名重工】

航空機用ジェットエンジンや宇宙機の設計開発で知られる日本有数の製造会社。

社名は前身となる二つの企業――"石垣島重工業株式会社"と"株式会社榛名造船所"に由来している。

日本では幕末と呼ばれる1800年代半ばに創業され、航空宇宙産業以外にも幅広い事業を展開し同国の工業生産能力の中核を担っている。


本作を読んで面白い・良かったと感じて頂けたら、高評価・ブックマーク・感想・レビューなどをお願いします。

総合評価ポイントが増加すればランキング入りする可能性が増え、より多くの人の目に留まる機会を得ることに繋がるので……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ