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【連載中】MOBILE FORMULA 2135 -スターライガ∞ 逆襲のライラック-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
【Chapter 3-4】Focus on Escort

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【187】白銀の護衛(中編)

 敵無人戦闘機部隊の先制攻撃を甘んじて受けたライガだったが、彼はそれをやり過ごすと素早く反転。


速やかに敵部隊の背後を取り、目標をロックオンして攻撃態勢に入る。


「(相手は4機か……コイルガンの試し撃ちには丁度いい標的機だ)」


敵機は旧ルナサリアン製のUAV(無人戦闘機)、"LUAV-01 アーシュラ"というコードネームで呼ばれる機種。


残念ながらライガの操縦技術と彼の愛機パルトナ・メガミRMの性能に対抗できるほどの戦闘力は無い。


実戦テストのために持って来た試作武器のコイルガン――次世代型実体弾射撃武器の攻撃力ならば容易に撃墜できるはずだ。


「む……!」


ライガが操縦桿のトリガーに人差し指を掛けたその時、UAVの機影は2機1組のグループに分かれて散開する。


「サレナ、敵機が二手に分かれた! そちらに向かうみたいだ!」

「了解! ホワイトストークに近付かれる前に迎撃する!」


敵の目論見はおそらくライガ機を足止めしつつ、その間に別働隊が要人O.S.を乗せた車両を破壊することだろう。


ライガは護衛対象の直掩に就いているサレナに別働隊の迎撃を任せる。


サレナの愛機クリノス・エグゼは射撃型の機体なので、最大射程が短いパルスレーザー砲しか搭載しないUAVに対しては一方的なアウトレンジ攻撃を仕掛けられる。


「先に撃ってきたのはそっちだぜ……反撃されても文句は言うなよ」


先制攻撃を受けたことで正当防衛という大義名分を得たライガは余裕の笑みを浮かべる。


敵機は吹雪の中を必死に飛び回って振り切ろうとしているが、パルトナの運動性ならば逆に追い込むことができる。


「ファイア!」


そして不意の突風で機体が煽られた瞬間を見逃さず、ライガのパルトナは右手に構えたコイルガンを発砲するのだった。



 コイルガンとは螺旋状に巻かれた電磁石を使って専用弾丸を加速・発射させる銃器。


MF用の兵装としては既にレールガンが実用化されているが、これとは電気回路の構成などが異なる。


スターライガとオリエント国防軍で共同開発中の"XPKMN-081"はバトルライフル並みのサイズに小型化され、レールガンほどの弾速は出せないがエネルギー効率に優れている。


今後開発が進めば実体弾射撃武器の新たな主流になる可能性を秘めていた。


「(こいつらの飛び方……ルナサリアンじゃないな? それに俺達とも全く違う)」


ところで、最初にロックオンした時からライガは違和感を抱いていた。


彼ほどの実力者ともなれば敵機のマニューバを見るだけで操縦の癖が分かる。


機体は旧ルナサリアン製だが、飛び方は前大戦で嫌になるほど見てきたルナサリアンの動きではない。


当然、オリエント国防空軍出身のライガや彼から操縦技術をレクチャーされたサレナとも異なるようだ。


「(こういう時は空戦で確かめるに限る)」


いずれにせよUAV程度ならば手加減しても瞬殺できるため、興味本位で敵機をロックオンしたまま泳がせるライガ。


「(これは……アメリカ軍機っぽい飛び方だ。ルナサリアン製UAVは高い運動性が特徴だが、それを引き出せていない)」


上昇下降に左右旋回――マニューバを一通り確認したライガは確信する。


一撃離脱に拘るこの飛び方はアメリカ軍の"トップガン"流のテクニックをAIに学習させたモノだ。


しかし、そのスタイルは運動性重視のルナサリアン製UAVとは相性が悪い。


「(期待外れだぜ。運用方法を間違えたら、つまんねえ機体に成り下がるってことか)」


最低限の撃墜スコアにしかならないと失望したライガは肩を竦め、観察する意味が無くなった敵機を追い込み始める。


「ファイア!」


決着は文字通り一瞬であった。


ライガのパルトナのコイルガンによる3点バースト射撃は全弾エンジンノズルに命中し、致命的な損傷を負ったLUAV-01は瞬く間に火の塊と化す。


「(アメリカ流の飛び方をAIに学習させたのか、あるいはアメリカ製に積み替えたのか――仮に後者だとしたら、何のために?)」


同じ敵が何機がかりで襲って来ても負ける気はしないが、ライガの頭の中にはいくつかの疑問が残る。


「(……この仕事、思った以上にキナ臭くなってきたな)」


彼が嗅ぎ取ったキナ臭さ――それは"アメリカ合衆国の関与"であった。



「サレナさん! 敵機が接近してるってのは本当なのか!?」

「ええ! 私が守ってあげるから、あなたは運転に集中しなさい!」


一方その頃、護衛対象の車を運転しながら騒ぐフランシスをなだめつつ、彼女達を視認できる距離でサレナは迎撃態勢を整えていた。


「(フランシス達が乗っている車は所詮乗用車。航空機の攻撃を一発でも受けたら耐えられない)」


今回の作戦に際してフランシスの愛車には本人の了承を得た上で即席の防弾装備が施されている。


銃撃を受けてもその場から逃走できる程度の防御力は確保できたが、爆発物や航空機の対地攻撃には流石に耐えられない。


いざという時はサレナが乗機を盾にして庇う必要もあるだろう。


「(あちらの有効射程に入る前に仕留めたいわね……)」


サレナのクリノスのメインウェポンは試作武器のレールランチャー。


こちらは所謂レールガンを両手持ちで扱えるようダウンサイジングした物であり、弾速はコイルガン以上だがレーザー兵器には劣る。


レールガン系武器の強みはレーザー兵器に次ぐ弾速と直進性を誇りつつ、実体弾の特性として大気の状態による影響を受けづらい点だ。


「この視界で長距離狙撃をやるつもりか……!?」

「今はあの人を信じるしかない!」


吹雪によるホワイトアウトが発生している状況での狙撃に懸念を示すアンナに対し、数メートル先しか見えない道路を頑張って運転するフランシスは"敵への対処は護衛部隊に任せるしかない"と答える。


「(漆黒のモビルフォーミュラ……悪魔のような色合いでありながら、私たちを守る天使のように見える)」


賑やか(?)な前席とは対照的に娘を抱いて後部座席に座るO.S.――オウカは落ち着いていた。


銀世界の中では悪目立ちするカラーリングに、バックパックを基点に伸びるX字型メインスラスターを持つクリノスを独特な感性で捉える余裕があった。


「……ファイアッ!」


地上の面々よりも冷静沈着なサレナはまだ視認できない敵機を"捕捉"すると、右操縦桿のトリガーを引きレールランチャーを発射するのだった。



 蒼い電流を纏った徹甲弾は大気を切り裂くように吹雪の中を直進。


それに反応して回避運動を取ろうとしたUAVの一機に直撃し、文字通り粉砕してみせる。


「(直前で散開された! 元々二枚抜きするつもりは無かったし、私の技量じゃ無理だけど……!)」


撃ち漏らしの発生を予想していたサレナは特に動じること無く再攻撃の準備に入る。


「パルトナよりクリノス、そちらは単独で対処できるか?」

「大丈夫。あと1機なら余裕を持って撃墜できる」

「了解、じゃあその場は任せるぞ。俺はLZ(ランディングゾーン)に先回りして安全確保する」


その状況をレーダー画面で確認したライガは援護の必要性について尋ねるが、サレナの自信に満ちた返答を聞くと幼馴染を信頼し別行動を継続する。


「(今日は私も機体も調子が良い感じがする。本番で好調なのは調整が上手くいった証拠ね)」


サレナの本職は心理学者であり、それに基づいて構築された独自のメソッドにより心身をコントロールしている。


丁度2か月前まで軟禁されていたにもかかわらず救出直後から戦線復帰できたのは、この優れた自己管理のおかげだ。


無論、いつ戻って来るか分からない乗り手のためにクリノスを整備して待っていたメカニック達にも感謝しなければならない。


「ファイア!」


レーダー画面上の情報と"直感"を頼りに相変わらず視認できない敵機をレールランチャーの砲口で追い掛け、自分だけが分かるタイミングで右操縦桿のトリガーを引くサレナ。


「敵機撃墜! レーダークリア!」


発射された徹甲弾が吹雪の中に消えてから数秒後、遠くで爆発音が聞こえると同時にレーダー画面上の最後の敵影が消滅する。


爆発音の正体は撃墜されたUAVが墜落した際の衝撃音だろう。


「(……これで終わるとは思えない。もっと面倒な事が起こるとイノセンス能力が言っている……)」


オウカの暗殺を狙っていた敵部隊は容易に退けることができた。


しかし、サレナの優れたイノセンス能力は警鐘を鳴らし続けていた……。

【トップガン】

かつてハリウッド映画の題材にもなった、アメリカ海軍の戦闘機パイロット養成機関。

1990年代半ばに他の組織と統合されるカタチで消滅したが、名称は空戦技術を指導する教官の養成コースに残されている。

それでも先述の映画の影響は大きく、"トップガン"はアメリカ軍のトップエースに対する非公式称号として定着している。


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