アメリアと家族
久々の更新すみません!
「アメリアは産まれる前の人生で他の世界にいた。今もその時の記憶を持っている。」
静かに語り出したカイナースの衝撃的な言葉に唖然とした4人は
恐る恐る言葉をつむぎ出した。
「それが今のアメリアと何か…関係が…?」
「あぁ。アメリアは前の世界で両親の愛情というものを受けたことがない。祖父母に引き取られる前まではいつ死んでもおかしくないような生活をしていた。だからお前たちがアメリアにしてやっていることに戸惑いがあるのだろう。お前らがいつアメリアを捨てるか分からないだろうからな。」
「なっ!!私たちがアメリアを捨てるはずがっ」
ソフィアが声を荒らげて言うが
その言葉に覆いかぶせるようにカイナースは言った。
「それが分からないから!!アメリアには自己肯定感がない。そんな子に自分が愛されているとわかると思うか!?」
自身も辛そうにカイナースはいう。
「我も…あんなに歯がゆい思いをしたことは無い…干渉できない世界だったんだ。」
「ではなぜ…なぜベンには笑うのですか!」
悔しそうにルーカスが叫ぶ。
「アメリアを前の世界で引き取った祖父母は言葉でも態度でも長い時間をかけ愛情を持ってあの子に寄り添った。ベンの雰囲気が似ているのだろう。」
ずっと黙って話を聞いていたアレックスが口を開いた。
「じゃあ俺たちはどうしたらいいんですか?アメリアを心から愛している俺達の愛情はなぜ伝わらないんですか?俺だって…アメリアに笑いかけて欲しい!大切な妹なのに…」
今にも泣き出しそうなアレックスの肩を抱いてカルロスはいった。
「私たちに出来ることはなにかありませんか?私たちの愛情があの子に伝わる方法が。」
公爵家の当主としてでは無く、1人の父親としてカルロスは真剣に尋ねた。
「我にもよく分からない。だが、それほどまでに真摯な思いをそれぞれが持っているのならいつか伝わるだろう…」
そう言ったカイナースは静かにその場から姿を消した。
(あれほどまでに強い思いはなかなかない。我も長い間人の感情の本質を見てきたが…いつかきっと愛し子は愛情に気づけるだろう。)
「アメリア…今日はお父様と一緒に寝ないか?」
突然お父様が部屋に訪ねて言った言葉がこれだった。
私なんかに拒否できるはずがない。
「はい。」
お父様に抱き抱えられてお父様の寝室にたどり着いた。
「お母様は…?」
「ん?あぁソフィアは今日はアレックスとルーカスと共に寝るらしいぞ。」
「そうですか…分かりました。」
私がそう答えるとお父様は私をベッドに入れその横に横たわった。
そのまま私を腕の中に引き寄せトントンと一定のリズムで私を優しく叩いた。
怖かったがしばらくするうちになぜか安心するようになった。なぜだろう…
これは何?
「あ、あの…お父様?」
「ないだ?アメリア。」
柔らかい声で答えるお父様に私は尋ねた。
「これは…なんですか…?トントンって…」
お父様は優しく笑うと
「アメリアがぐっすり安眠できるようにしているんだ。」
なんて答えたらいいか分からず黙っていると
「さぁおやすみ俺の愛しいアメリア…」
優しい声で言われ、一定のリズムで優しく叩かれているうちに私は眠りに落ちてしまった。
なんだか安心する。なんでだろう…こんなの初めて…
愛しい…お父様が私を…?嘘だろうけど本当だったら嬉しいな…前に本で読んだ愛されている人になったみたい…
すっかり眠ってしまったアメリアを優しく見つめているカルロスは先程の事を思い出していた。
(俺が叩き始めた瞬間元々強ばっていた体がさらに強ばった。しかも少し震えていた。)
それだけでもカイナース様が言っていたアメリアの前の世界の親に怒りが湧いた。
だが腕に抱きしめたアメリアの顔を見て驚きのあまり怒りを忘れてしまった。
ふにゃっと表情が緩んだアメリアを見て
(いい夢でも見ているんだろうな…アメリアがいつか俺に心を開いてくれるまで俺は待つぞ…)
そう心に決めたのだった。
「「母様!!俺も(僕も)今日アメリアと一緒に寝ようとしたのに!!!!」」
全く…親子の考える事は一緒ね…
はぁ…
アメリアの、所へ行こうと大暴れをする息子2人を魔術を使ってベットに優しく、しかししっかり押さえつけて疲れた顔でソフィアは思った。
(私も今日アメリアと一緒に寝ようとしたけど…カルロスのあんな必死な顔みたら…譲ってあげないとね…覚えておきなさいカルロス…)
そう心に思い、夜を過ごすのだった。
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