第6話 勇者本人は驕り高ぶっていたが勇者の仲間は意外と常識的だった
「ニィ!」
酒場の掲示板前にて、ニコが尻尾で張り紙を指した。「ゴルラッタ峠道を魔物が占拠しており、通行人が困っている」という、峠道を使う商会からの依頼だった。
「クイスレント商会……って……」
依頼人は、よそ者のオレですら名を聞いたことのある豪商だった。この前、リッシュさんの家に宝玉があったように、今回は商会が持っているということだろうか?
「サーシャ殿は“災厄の鬼神”を倒すため、ゴルラッタ峠道を通ってヴェニルワの砦に向かう予定でござろう? この依頼は受けるしかないでござるな」
ジョンにそう言われても、オレは尻込みせざるを得ない。
「いや、でもさ……こんなすごい商人が、誰が引き受けるかも分からない酒場の掲示板に依頼するって、そうとう切羽詰まってるってことだろ? そんな難しそうな依頼、オレにできるわけ……」
「その依頼、受けるの? なら、あたしたちも協力させてくれないかしら」
声をかけられて振り向くと、そこにはティネマとラミーがいた。
「知り合いでござるか?」
「う、うーん、まあ……」
ティネマとラミーと会うのは、サファイア一家の薬草摘みの依頼をユリオロイダが手ひどく断っていたあの時以来だ。以前友に旅をしていた頃は彼女らにもなじられたため、あまりいい印象はない。
「二人とも、オレのことボロクソ言ってたくせに、どうして協力するなんて言うんだ?」
「……それには、わけがあるの。虫がいいのは分かってるけど、聞いてくれないかしら」
オレが不満をあらわにすると、ティネマは沈痛な表情でうつむいた。ラミーも困り顔でオレを見つめる。この前会ったときはもっと元気だったのに、何があったのだろう? そういえば、ユリオロイダと違って、二人は薬草摘みの依頼を受けようとしていた。一体どういうことだろう? オレは二人の事情が気になったので、話を聞いてみることにした。
四人席のテーブルにつき、まずは、自己紹介とともにジョンにいきさつを説明する。
「ええと、あたしはティネマよ」
「私はラミー……どっちも魔術師……」
「拙者はジョンでござる。しがない旅人にて」
「そういえば、ジョンには話してなかったっけ。オレ、元々はユリオロイダの旅についていってたんだけど、仲違いを起こして抜けたんだ。この二人にも大分ひどいことを言われた」
オレが少し嫌味を言うと、ティネマとラミーが頭を下げた。
「そのことなんだけど、ごめんなさい! あたしもラミーも、あいつのこと見誤ってた」
「どういうこと?」
オレが聞き返すと、ラミーがぼそぼそとしゃべりだす。
「あのときは……ユリオロイダ様に……『弱いあいつをこれ以上連れて行くのは危険だ。でも諦めが悪いから、わざと突き放すようなことを言え。そうでもしないと食い下がる』って言われたの……サーシャさんの幼馴染であるユリオロイダ様が言うならと……彼女に従いました……でも……」
「サーシャが抜けてからのユリオロイダの振る舞いを見てると、絶対に違うわ。きっとあいつ、自分を諌めるあんたが疎ましかったから追い出したのよ!」
「あのときは……ひどいこと言ってごめんなさい……それだけは言いたかったの」
「結果的にはサーシャが出てくって切り出したけど、本当は頃合いを見てこっちから追い出す予定だったの」
深く謝罪する二人に、疑問がわく。
「……そもそも、なんで二人はユリオロイダと旅をしてるんだ? オレはユリオロイダに誘われたんだけど……二人はユリオロイダとどういう関係なんだ?」
オレの質問を受け、ティネマが説明を始めた。
「あたしたち、賢者の館に所属している魔術師でね。ユリオロイダの旅に同行するよう指示されているの。だから、サーシャと違ってあたしたちはあいつから離れられないのよ」
「なのに……ユリオロイダ様……遊んでばっかりで……」
「勇者ユリオロイダは、今どこに?」
ジョンが尋ねると、ラミーが首を振る。
「それが……分からないのです……。朝、ユリオロイダ様の部屋に行くと、『今日も別行動だ』という書き置きだけ残してあって……今もどこにいるのか……」
「町の人達の話を聞くと、どうやらいたるところで遊び歩いているみたいなのよ!」
ティネマが憤慨した様子で腕を組んだ。なんだか、ユリオロイダはやけに金遣いが荒いようだ。そのお金はどこから出ているのだろうか? それを聞くと、ティネマが思い切り顔をしかめた。
「あたしたちの主な旅費は、賢者の館に出してもらってるの。で、賢者の館のお金は、王国の税収からきてる。当然、好き放題するために工面されたお金じゃないわ」
ティネマが居心地悪そうに自らの指を絡める。
「……つまり、あいつ、遊びに使っちゃいけないお金で遊んでるってこと……? いやいや、さすがにそんなはずは、何か訳が」
「あるように見える!?」
信じがたくて思わず否定の言葉を発したオレに、ティネマがつめよる。
「最近はいつもそうなの。で、たまに顔を合わせた時にちょっとでも苦言を言うと、『私は勇者なんだから命令するな』って……正直、うんざりしてるわ。賢者の館の指示でなければ、あんなのとっくに見捨ててるわよ!」
「……せめて、次の目的地……ゴルラッタ峠道が通れるようになれば、ユリオロイダ様も動く気になるかも……」
ジョンはふむ、と息を吐いた。
「それで、サーシャ殿に協力を申し出た……ということでござるか」
「……どうかしら?」
ティネマとラミーが申し訳なさそうに首をかしげる。彼女たちとの付き合いは短いが、嘘をついているわけではないことが、疲れ切った表情から見て取れる。また、二人の魔術師としての実力は高い。オレとジョンだけでは不安だったが、彼女らの力を借りられるのならば心強い。
「まあ……いいか!」
「ありがとう! それじゃ、よろしくね!」
「よろしくね……」
ティネマはまぶしい笑顔を見せ、ラミーはふわりと微笑んだのだった。
オレ達はまず、クイスレント商会の会長に依頼を受ける報告に向かった。ちなみに、危険な依頼になりそうなため、ニコは宿屋に置いてきている。
「君たちが依頼を受けた者か……おや、君たちは、勇者の仲間ではないかね? 勇者本人はどうしたのかな?」
会長は恰幅のよい上品なおじさんだった。温和な笑顔を浮かべていたが、目はオレ達のことを値踏みするように冷たく、鋭い。
「ユリオロイダ殿であれば、別件で動いているでござる。ご心配なく」
「ふむ……、そうかね」
会長は口元に指を当て、ジョンを見つめる。勇者の評判は当然彼の耳にも届いているに違いない。こんな言葉で誤魔化されてはくれないだろう。しかし、彼にとって勇者の存在は重要ではないらしく、深くは追及されなかった。
「依頼書にも記したが……峠道に凶暴な魔物が棲み着いてしまった。ゴルラッタ峠道の先は“災厄の鬼神”の影響で土地が荒れていて、人里がない。そのため峠道の使用者が少なく、王国は対処を後回しにしているのだよ。しかし、ゴルラッタ峠道の先にあるヴェニルワの砦とはちょっとした契約があってね。通れないのは少し困るのだよ」
「できる範囲で構いませんから、出没する魔物について知っていることを教えて頂けないかしら?」
ティネマの質問に、会長は残念そうに首を振る。
「いや、皆逃げるのが精一杯で、よく分からないのだ。今のところ死者はでていないが、経済的には甚大な被害が出ている。期待しているぞ。若者たち」
山道を歩いて行くと、ゴルラッタ峠道の入り口を示す看板を見つけた。美しい木々が並び、道は踏み平されている。「“災厄の鬼神”は、自らが浸食した土地から生気を奪って糧にする。残りかすになった地域の土から『魔物』が生まれる」――という、能力の書の記述を思い返す。峠道では異変が起きていないあたり、ここに出没している魔物は、峠道で生まれたのではなくよそから来たのだろう。
「……! 静かに……見られている、でござる」
ジョンが腰の剣を構え、警戒心をあらわにした。草むらからがさがさと音が聞こえ、オレ達はそちらを注視した。
「……キィ」
一匹の魔物が姿を見せた。片手にのせられそうなほど小さく、月見兎に似たモフモフさと長い耳が愛らしい。
「あ、あら? 月見兎じゃ、ないのよね? 似てるけど」
「……かわいい、ですね」
ティネマとラミーが拍子抜けした様子で魔物を見つめる。オレもついその姿に目を奪われてしまうが、ジョンだけは違った。
「皆の者! 離れるでござる!!」
「え……?」
ジョンの言葉を最後に、オレの意識は途絶えた。直前、ふわりと甘い香りがした。
「ニィ~」
気がつくと、目の前にニコがいた。ニコだけではない。ネ・コ、猫目石獣、月見兎……さまざまな種類のモフモフな動物がオレにまとわりついている。縞模様のネ・コがオレの膝にすり寄り、穏やかに鳴く。猫目石獣がくぁぁとのんきそうにあくびをした。月見兎はふわふわの体をふるわせ、毛づくろいをしている。
「……最高だ……」
モフモフ好きのオレにとって、ここはまさに楽園だ。え? ちょっと待って。すごくかわいい。しんじられない。愛でたい。オレは我慢できず、膝の上に座るネ・コを抱き上げようとすると――
「――覚醒魔術!!」
ジョンの詠唱が聞こえる。目を開けると、そこは土だった。いや、違う。オレは地面に倒れているようだ。一体何があった?
「え、え……? かわいい天使たちは……?」
「しっかりするでござる! あれは耳から幻覚を見せる霧を吹き出し、幸せな夢を見させつつ生きたまま捕食するのでござるよ!!」
「えぇぇっ!?」
ジョンの言葉に、反射的に飛び起きる。魅力的な見た目に対し、なんておぞましい生態なんだろう。あの甘い香りは、幻覚を見せる霧の匂いだったのかもしれない。ティネマとラミーも同じように眠らされていたようだ。二人とも、もうろうとした様子で起き上がる。オレは魔物の様子をうかがった。魔物は小さな体をくっつけ合い、大きな塊になっていく。その姿はまるで、大きな月見兎のようだ。
「はぁ!? 何よあれ!?」
魔物の巨躯に圧倒された二人が慌てて体勢を整え、戦闘準備に入る。
「……! あやつ、どうやら月見兎と似た特徴を持っているようでござる!」
「つまり、月見兎と弱点が同じって事か?」
「月見兎の弱点? そんなものがあるのでござるか?」
ジョンが応戦しながらオレに問う。オレはモフモフの生き物が大好きだ。モフモフ好きたるもの、モフモフの子達が苦手なものは当然把握している。月見兎はその大きな耳でわずかな音を聞き分けられるが、その分大きな音がストレスになる。また、繊細な感覚を持っており、湿気や熱気なども遠ざける必要があるのだ。
「では、大きな音と蒸し暑さを用意できれば攪乱させることができるでござるな!」
「それなら任せて! 行くわよ……! 火花魔術!」
「私は……温室魔術!」
ティネマとラミーが魔術の詠唱を始める。ティネマの魔術で、火花がバチバチと大きな音を立てて飛び回った。そして、ラミーの魔術が熱く湿気を帯びた空気で周囲を包む。すると、魔物達は焦ったようにギィギィ鳴いて、オレ達を威嚇しはじめた。また、隠れていた魔物があぶりだされるかのように飛び出してきた。モフモフ好きとしてはモフモフの子が嫌がることをするのは心が痛むが、人に被害が出ている以上、致し方ない。
「はっ!」
魔物がひるんだ隙にジョンが攻撃をたたき込んだ。オレも追撃しよう。
「よし、とどめだ! 離れて!」
オレの呼びかけで、皆が魔物から飛びのく。
「せーの……! 強化動作魔術!!」
オレは周囲に散らばる倒木を魔術で持ち上げ、魔物に思い切りぶつけた。倒木に押しつぶされた魔物は、断末魔の叫びをあげて、霧散した。「倒されたら霧散し、塵すら残らない」――それもまた、魔物の特徴だ。
「や、やったわ! 倒せたわね!」
「よかった……」
ティネマとラミーが手を取り合って喜んだ。オレもほっと息を吐く。
「これで依頼完了か?」
ジョンに話しかけると、彼は大きくうなずいた。
「ああ。隠れていた個体も飛び出させ、一網打尽にできたのでござる。それができたのは、サーシャ殿が月見兎の特徴を知っていたからでござるよ。お手柄でござるな!」
友人でもあり師匠でもある彼に賞賛され、オレは素直に喜んだ。ふと、攻撃に使った倒木のかたわらに白い玉と黒い玉が落ちていることに気がついた。どうやら、魔物が落としていったらしい。拾って観察すると、玉には不思議な紋様が浮かんでいる。
「これは――『五つ星の剣』の宝玉!?」
オレが叫ぶと、ティネマとラミーがのぞき込んできた。
「何? 何か見つけたの?」
「『五つ星の剣』って……?」
二人は「五つ星の剣」の存在を知らないようだ。それはおかしな話だ。「五つ星の剣」は“災厄の鬼神”を打ち倒す鍵なのに、“災厄の鬼神”を倒すよう命じられた二人に知らされていないなんて。オレが「五つ星の剣」について話すと、二人は顔を見合わせた。
「……私達、そんなこと……聞いてないんだけど……」
「それ、本当に信用できる情報なのかしら?」
「うーん、そう言われると……」
言われてみれば、情報源はニコだけだ。「五つ星の剣」の力自体が本物であることはこれまで宝玉の力を借りてきた経験上分かっているが、“災厄の鬼神”を倒す鍵かどうかという点はまだ確めようがない。ニコとは賢者の館の周囲でしか話せないから、賢者の館に行けば正確な情報が得られるかもしれない。
「なあ、賢者の館ってオレみたいな一般人でも入れる?」
「ううん……関係者以外……立ち入り禁止……」
「口利きしてあげましょうか? 一度は勇者の仲間だったんだし」
「ありがとな! お言葉に甘えて、そうさせてもらうよ。そういえば、二人もこの峠道を通ってヴェニルワの砦に行くんだろ? どうやって行くんだ?」
「賢者の館に、馬車があるの……」
「でも、元々は三人旅の予定だったから三人用の馬車しか用意されてないのよ。だから、あんたを連れて行くことはできないわ。ごめんなさい!」
「いいよ。どっちにしろ、まだ宝玉を集めきっていないからまだ出発できないし。それに、ユリオロイダが絶対許さないだろうさ」
二人と話していると、ジョンに声をかけられた。
「皆の者は先に会長に報告しに行って欲しいでござる。もうすぐ商会の人たちが魔物の討伐を確認しに来るから、拙者はその案内をするでござる」
「はーい!」
オレ達は、先生に対する生徒のように元気に返事をしたのだった。
「おや……、本当に魔物を倒したのかね」
クイスレント商会にて報告すると、会長は意外そうな表情を見せた。どうやら、彼はオレ達にあまり期待していなかったようだ。
「先ほど、商会の人たちに峠道を確認して頂きました」
「ふふ、いや、疑っているわけではない。報告は来ているよ。よくやってくれた、ありがとう」
会長はそう言って、羽振りよく報酬を払った。しかしオレは受け取らず、前々から考えていた提案をする。
「報酬の代わりに、オレに馬車を用意して頂けませんか? オレ、ヴェニルワの砦に行く予定なんです」
日々依頼を受けていたため旅費はそれなりにあるが、馬車を借りるのは高価すぎて、さすがに財布が厳しいのだ。
「ふむ……、いいだろう。君の都合のいいときに馬車を出そう」
「ありがとうございます!」
会長の快諾する言葉を聞いて、オレはほっと安心したのだった。
オレ達はクイスレント商会を後にした。ティネマとラミーとは一時的な仲間だったため、ここで別れるつもりだったが――二人は、心労からか疲れ切った顔をしている。
「サーシャとはここまでね。いい加減、ユリオロイダを探さないと」
「……ユリオロイダ様が何と言おうと……ヴェニルワの砦への道が開けた以上……先へ進まなければ」
このまま放って帰るのは気がとがめた。オレも一緒に探そう、と提案しようとすると――
「……あ、ポンコツ」
墨を一滴垂らしたような、大人っぽい赤のマント。きれいにまとめられた金髪。
――ユリオロイダだ。
「ちょっと! あんた一体どこに行ってたのよ!!」
「あぁ? てめぇらには関係ないだろ」
青筋を立てるティネマは怖いが、ユリオロイダは全く気にせず手酷くあしらう。しかし、ティネマは屈しない。
「あんたね……! 仮にも大賢者様が予言した勇者なんでしょ!? もっとちゃんとしてよ!」
ティネマが拳を握りしめて怒鳴りつけた。目尻には涙が浮かんでおり、ユリオロイダに対し本気で怒っていることが分かる。オレがおろおろしていると、ラミーがこっそり耳打ちしてきた。
「……私達、子供の頃からユリオロイダ様のことを聞かされてて……ティネマは特に憧れていたから……賢者様からユリオロイダ様の仲間に指名されたとき……本当に喜んでたの……。でも……ユリオロイダ様がこんなので……すごくショックを受けて……」
「おい、聞こえてるぞラミー。悪かったな、こんなので」
ユリオロイダがオレとラミーを凄む。口元はにやついているが、目は笑っていない。冷たく笑う彼女は恐ろしく、オレは思わずラミーを背にかばった。
「……」
オレのその行動が気にくわなかったのか、ユリオロイダは思い切り顔をしかめた。そして髪をぐしゃぐしゃと掻き、大きなため息を吐いた。
「チッ、まあいい。私になんか用かよ」
「……ゴルラッタ峠道は魔物に占拠されてたんだけど、通れるようになったわ。これで、“災厄の鬼神”に最も近い補給場所――ヴェニルワの砦に行ける。今日はもう遅いから、明日の朝にここを発ちましょう」
ティネマが声を振り絞ってそう伝えると、ユリオロイダはいかにも残念だというように肩をすくめた。
「あー、明日はダメだ。ていうか当分ダメだわ。店の予約があるからな」
「……予約……?」
思いもかけない言葉に、ティネマがそのまま聞き返す。
「いい酒場を見つけてな。いくつか予約しておいたんだ。……もういいだろ? このあとも行く店があるから、じゃあな」
ユリオロイダは右手でマントを掴み、翻して去って行こうとする。オレはたまらず、ユリオロイダの右肩をわしづかんだ。
「……ユリオロイダ、何考えてんだ?」
「ああ?」
「昔はそんなんじゃなかっただろ」
「なんだと?」
「――ユリオロイダは、勇者であることで幼い頃から無条件の尊敬と賞賛を受けていた。つけあがるなら、とっくの昔につけあがっているはずなんだ。オレは幼馴染だったから、君と比較されて嫌な思いをした経験がたくさんある。それでも友達でい続けたいと思えるくらい、君はいいやつだった。なのにどうして今の君は、そんなに自分勝手なんだ!?」
心の中で淀んでいた疑問を全てぶつけても――ユリオロイダは眉一つ動かさない。
「だから何だよ? てめぇに何の関係があるんだ?」
それでもオレは、怯むわけにはいかなかった。
「君をけなされるのが嫌なんだよ!!」
彼女の胸ぐらをつかんで叫ぶ。すると、ユリオロイダはようやく少しだけ表情をゆがめた。
「故郷を出てからの君しか知らない皆は、ユリオロイダのことを悪く言う! オレはユリオロイダのいいところをいっぱい知ってるのに! 頼むからもう、オレの大事な人を踏みにじらないでくれよ……!」
「……うるっせえ!!」
強く突き飛ばされ、突然のことでよけられず尻餅をつく。
「抜けるっつったのはてめぇの方だろ! ろくな魔術も使えなかったグズのくせに! 旅の間、何の役にも立たなかったくせに! 私の行動に口出しすんじゃねぇ!!」
ユリオロイダの怒号に、頭に血がのぼる。オレは立ち上がり、思い切り声を張り上げた。
「……ああそうかよ!! もういい!! お前なんかもう知るか!!」
オレはそれだけ言って立ち去った。ティネマとラミーがオレをひきとめる声が聞こえるが、無視する。とにかく、振り返りたくなかった。もう顔も見たくない。
ユリオロイダの馬鹿野郎。
お前なんか、好きなだけ皆に迷惑かけて――誰からも嫌われちまえばいいんだ。




