お嬢様は婚約者に振られました
でも気にしない
「みんなー!薫子様が戻られたわよー!」
「なんだって!?冬椿様が病院からお戻りに!?」
「ああ、よかった!元々身体の弱い方だから心配していたのよ!」
「今回の入院は大事をとってのものだったらしい。もう外出しても大丈夫だそうだ!」
「よかったー、あ、見て!薫子様よ!」
「まあ!なんて美しい!」
「いつ見ても気品溢れるお姿だ!」
「大きな黒い瞳も、二重も、高い鼻も、ぷるぷるの唇もとても美しい!」
「バカ!サラサラストレートの黒髪が一番美しいだろ!」
「いや、ちょっと低い身長にぼんきゅっぼんの我儘ボディーが一番だろ!」
「でも、確か…婚約者である春桜雅様には、薫子様がいない間に恋人が…」
「ああ、なんてこと…」
「己の身も弁えず雅様に手を出すなんて…」
「雅様も雅様だ。薫子様というものがありながらあんな庶民の女に手を出すなんて…」
「お金持ちのボンボンだからっていくらなんでもなぁ」
「確か佐藤和子とかなんとか…」
「しっ!雅様に聞かれたら家ごと潰されるぞ」
「雅様はすっかりあの女にご執心だからな…」
「皆さん、ご機嫌よう」
「ご、ご機嫌よう、薫子様!」
「ご機嫌よう!」
「ご機嫌よう!」
はじめまして。私、冬椿薫子と申します。どうぞよろしくお願いします。私、噂されている通り、最近まで入院しておりましたの。でも、ようやく退院できたと思ったら、学園では良くない噂が。私の婚約者、春桜雅様に恋人が出来たとか。一体どういうことかしら?
「…あら、お久しぶりです。雅様」
早速噂の雅様の登場です。一体どういうつもりなのか聞かせていただきましょう。
「…ああ、久しぶりだな。薫子」
「私、良くない噂を耳にしましたの。とっても不安になってしまいましたわ。でも、所詮は噂は噂。そうですわよね?」
「いや。僕が和子君と付き合っているのは本当だ。そもそも君との婚約は親と親との口約束。お互いを束縛するものではないと思っていたのだが、君にとって違ったのならすまない。だが僕は和子君以外と一緒になるつもりはない。諦めてくれ」
「まあ…!」
なんということでしょう。雅様は本当に佐藤さんに恋をしているみたい。…まあでも、そういうことなら仕方ないわね。
「わかりましたわ。この婚約は解消致しましょう?」
「本当にすまない、ありがとう。僕もこれから、君の恋愛について一切口を出さないと約束しよう」
「ええ、そうしましょうそうしましょう。そうとなれば早速、婚約者探しをしなければね」
どんな人と一緒になれるのかしら、今から楽しみだわ。そういうとその場が一気にざわつき始めます。
「まあ!冬椿様が婚約解消!?」
「お、俺にもとうとうチャンスが…!」
「バカ!お前なんかには無理だろ!」
「どんな方が選ばれるのかしら…」
「これは学園に嵐が吹き荒れますね…」
まあ、皆さんったら大袈裟。私の婚約者探しなんて、そんな大層なものではないのにね。
次の婚約へレッツゴー!