↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死者に別れを、あるいは生を  作者: 杉下 徹
Act.2  Proficiency
16/42

2-10

「あの人も、中々に喰えない人ですね」

 どちらからともなく歩みを再開した男女の間、苦笑混じりの声が二人の沈黙を破る。

「……いや、本来はあれが正しいのだろう。本来、大魔術師アルバトロス卿があのくらい尊大な態度を取る事は何も間違っておらず、むしろごく自然だと言える」

 ティアも同じく苦笑を返し、その後に小さく溜息をつく。

「悪いのは全て私だ。建前を守るのか事実を優先するのか、アルバトロスへの接し方を決めきれていない。それどころか個人的な感傷すら清算できていなかった結果として、彼が祭りの中に消えていくのを止めるどころか喜んでしまっていた」

「仕方ないでしょう。誰もその事で団長を責めたりはしません」

 自嘲の言葉を吐き捨てるティアに、ロシは優しげな笑みで言い含めるように告げる。

「それに、アンナさんもああ見えて馬鹿では……腕は相当に立ちます。アルバトロス卿の身に何か起きる可能性なんて、万に一つくらいしかないでしょう」

「お前がアンナの事をどう思っているかはなんとなくわかった」

 ロシの言葉を受け、ティアは呆れたように、しかし少しばかり晴れた表情で息を吐く。

「考え過ぎ、という事なのだろうな。アルバトロスの護衛はアンナの仕事で、私が気に掛ける事ではない。ロシの考えは違うようだが、アンナは実際に頭も回る。楽天的なところはあるが、本当に危険だと思えばここまで連れ出したりはしないだろう」

「俺だってアンナさんが頭の回らない人だと思っているわけじゃないですよ。ただ、頭が回っても馬鹿な人ってのはいますから。ね、団長」

 完璧な笑顔は、しかし文脈から皮肉にしか受け取られない。

「そこで私の名を呼ぶという事は、つまりそういう事でいいんだな」

「あれ、また怒ってます?」

「面と向かって馬鹿にされたら普通は怒るだろう。……だが、そうだな、私なんて結局はただの馬鹿なのだろうな」

 瞬間的な怒りが落ち付いたティアは、今度は一転してしみじみと呟く。

「いやいや、落ち込まれるのもそれはそれで困りますって。おかしいなぁ、なんでいつもこう上手くいかないんだか」

 その隣で後を追うように落ち込むロシを見て、対照的にティアの口元には徐々に笑みが浮かび始めた。

「それは、お前も馬鹿だからという事だろう。お前は無理に私を慰めようとなんてしなくてもいい」

「結局はそうなんでしょうね。俺もまだ修業が足りません」

 二人共にお互いを見て、同じように小さく笑い合う。

「――あっ、あそこに飴の剣が飾ってありますよ。アンナさんの持っていたのと同じものですかね、あの人も変わったものが好きだなぁ」

「それをお前が言うか、というか買うのか?」

 財布を取り出すロシとそれを眺めるティアの二人の間の空気は、ほとんどアルバトロスとアンナの二人に出会う前のものへと戻っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。