37.木島家に訪問
「えっと確かここら辺…お、発見」
木島兄妹に会いに行くべく二人の家に来ている。
放課後に来たけどまぁ大丈夫だろう。
二人は寄り道をしそうなタイプに見えないし、それに最近の態度からして今は寄り道をしたい気分でもないだろ。
ちなみに二人の住所はセルス先生に教えてもらった。
説得には時間がかかったけど…。
「よし、とりあえずインターホン押すか」
まずはそこからだ。
「って…」今思ったら俺積木以外の家のインターホン押すの初めてだな…何か緊張してきた。
てか今から緊張してどうすんだよ、これから二人のお母様に会うかも知れないってのに。
あぁもういいや!押しちゃえ!
俺は勢いに任せてインターホンを押した。
ピンポーンと音がした後扉の向こうから「は~い!」と女の人の声が聞こえた。
その声が栞だけじゃない事だけはは理解出来た。
ただ、俺はこの声に聞きお覚えがある。
あ、この声、思い出した。
電話の時の…そう、俺は一度木島家の家電に電話したことがある。
その時に出たのがこの声だった、とても落ち着いた声で、聞いてるこっちまで落ち着いてしまう。
うとうとしてしまいそうな声だった。
声の若さからわかるが多分二人のお姉さんだと思われる。
ちょっと会うのが楽しみだな。
蒼の頬が少し緩む。
そして木島家の扉がガチャリとゆっくり開く。
「どちら様でしょうか?」
と、言いながら扉から出できたのは木島姉であろう若い女性。
おぉ…さすがDNA、けど顔だけで他は似てないな、栞は髪がショートに対し木島姉はロングにウェーブがかかってるし。
そして何より…絵に描いたようなボッキュッボンだもんな。
エプロン姿…萌えるな。
「えっと、二人のお姉様ですよね?」
「…」
「?」
俺がそう問うと何故か木島姉は少し照れたような顔でこちらに視線を向ける。
俺はその表情に疑問を覚える。
「私は二人のお母様です!人妻やってます!」
「え…?」
「あはは…」
俺がポカンと口を開くと照れながら笑う木島、母。
てかその見た目で人妻って…いくつだよ…。
だが、俺はあえて聞かなかった。
俺が自己紹介を終えるとあっさりと家の中へと案内された。
どうやら二人から俺の事は聞いてたみたいだ。
後電話越しで一度自己紹介をしてたのを覚えていてくれたらしい。
そして客間のソファに腰を掛けさせて貰った。
木島母はと言うと俺に紅茶を出してくれた後俺の前に座り紅茶を片手に寛ぐ。
俺と木島母は同時に紅茶を静かに飲み「ふぅ…」と一息。
「…」俺は不思議とこの空間が心地よかった。
その心地よさからか何故か俺は静かな笑みを浮かべていた。
そんな時だった。
木島母が口を動かしたのは。
「それで、二人が最近おかしいのは蒼君のせいなのかな?」
「えっと…」
「ん?」
「はい…」
俺はその優しい笑みのせいか口がいつの間にか動いていた。
「そんなシュンとしないで、怒ってる訳じゃないの、理由を聞きたいだけ」
あぁ…不思議な人だな、この優しい笑顔には、偽善も嘘も、何も通じない気がする。
話そうって、そう思える。
確かこういうのを…暖かさって言うのかな。
そして俺は話した。
ここに来た理由、二人に会いに来た理由。
「てな訳で…俺にもわからないんです…ただ、もしかしたらその原因は俺なのかも知れない。それが分かったら居ても立っても居られなかったんです…」
「そう…」
その優しい笑みは変わらない。
とても落ち着く声…とても暖かくなる笑顔。
この人といるとやっぱり落ち着く、あんなに悩んでた二人の事もとても落ち着いて話せた。
この人には聞く権利があれど話してよかった。
そう思ったんだ。
「だから俺、二人と話がしたいんです。友達だから」
「…楽に栞…いい友達を持ったわね、むしろ二人には勿体ないくらい!でもね蒼君、確かに二人の悩みは蒼君に関係してると思う…けどね、これは、二人が自分達で解決しなくちゃいけない事だと私は思う…根拠はないんだけどね」
一瞬その笑みは崩れ、とても真剣な表情になっていた。
けれど最後にはその優しい笑みは戻っていた。
そして俺は頭の中が疑問で埋まる。
俺が関係してるのに二人で解決しなくちゃいけない事って…親子だから分かるのか…?
けど、俺が関係してるなら俺にだってその悩みの手助けをする権利はあるはずだ。
ここまできてノコノコ帰れるか。
「お言葉ですがお母様、俺は二人の友達です。ならその悩みを手助けするのは当然の権利です。二人に会わせてください」
「…」木島母は笑みから驚きへと変わる。
「ゴクリ…」俺は唾を飲み込む。」
さ、さすがに言い過ぎたかな…?
すると「あはは…若いっていいな…」と笑いながらそっと目を瞑る。
「あ、あの…」
「うん!分かった、二人を呼んでくるよ!」
「え、いいんですか!?」
「二人の友達の頼みだもん!それにここまで蒼君が青春してるんだし私も若い頃に戻ってこの青春の手助けをしたいと思ったの!」
「…ありがとうございます」
「それじゃ待ってて!」
木島母は満面の笑みで二階に上がり二人を呼びに行った。
木島母いい人すぎる…その優しさに救われました!ありがとうございます!
さて…二人が来たら俺は真正面から勝負してやる。
悩みを聞くまでここから一歩でも動いてたまるか。
そして扉の向こうから急いで出できたのは楽と栞だ。
最初に口を開いたのは「どうしてここにいるんですか?」楽だった。
その表情には驚きが見えた。
「蒼さん…」
ぼそっと栞は俺の名前を呟く。
その表情は何故か苦しそうだった。
「それじゃあ私は向こうに行ってるわね、後は若い者同士で」
そう言いながら木島母は客間の扉を閉めて去っていった。
「よっ!二人とも」
俺はいつも通りの態度で挨拶をする。
出来るだけ不安を与えたくないからな。
が、何故か二人は更に不安な顔を見せた。
あれ…どゆこと…?
俺が疑問に思っていると楽が一言俺に言う。
「帰ってください」
「…」
「失礼を承知で言ってます…お願いします…今は帰ってください…」
楽の顔はとても苦しそうだ。
「そんな顔をされて帰られると思うか…?」
蒼の表情は真剣だ。
だが、次に楽が蒼へと放った言葉は蒼が予想もしなかった台詞。
「いいから…いいから帰れよ偽善者!!」
「ッ!!」
偽善者、蒼が嫌ってくらい自分で思った事。
そんな偽善者な自分が大っ嫌いだった。
けど、今の蒼はもう違う。
もう、前までの俺とは違うんだ。
偽善者としてこの二人を助けたいんじゃない…朝倉 蒼として、友達として、助けたいんだ。
だから、手助けをしたいんだ。