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ヒキコモリな炎竜と契約者(コントラクター)  作者: あだち りる
第六章「楽と栞」
35/43

34.木島 楽

昔話をしよう。

僕と言う、木島きじま らくと言う、人間の話を。

僕の家族は、普通の家庭…とは言っている物の、実は違う。

家は武術を極めし一族らしい。

昔から先祖代々受け継がれている武術。

木神式流きじんしきりゅう

正直、ネーミングセンスはないと思った。

この木神式は男にしか教えることの出来ない流派だ。

正直特質した事なんてないと…思うけど…強いて言うなら、この流派は体力をまったく使わないらしい。

てか更に男にしか教えない理由がわからないんだが。

だから、僕の妹である、栞、は木神式流は教えて貰えはしなかった。

僕はと言うと、三歳の頃からその修行は始まった。

修行と言っても、筋トレやランニングなどではない。

ただ、木神式流の技を練習。


「てぃあ!!」


これは五歳の頃の僕だ。

右の拳を鋭く前に突きだしている。

これは、木神式流第一きじんしきりゅうだいいちかた雀蜂すずめばち

今の僕からすれば正直まだ甘い突きだと思うけど、この歳にしてはいい方だと思う。

だが、父さんはそれを許さなかった。


「どうした楽!!お前はそれでも男かッ!!!!」


「いッ!!」


上手く出来なければ見て覚えろ、それは僕が常にやってきた事だ。

だからこうやって、父さんに殴られた時だって、見続ける。

僕へと突きだしたその右腕はどんな風に鋭く放ったか、どんな風に僕に衝撃を与えたか、どんな風に間接や筋肉は動いていたか。

観察し続けた。

見続けた。

努力もした。

そして僕は、十歳で、父さんから一本とれた。

僕が突きだしたその一撃、それは僕が五歳の頃に受けた一撃だ。

五年使ってやっと仕返しできたと言う所だ。

そして僕は、一年、いや一ヶ月、その期間さえあれば父さんを抜けるとさえ思った。

その考えは、間違いじゃなかった。

いや、それ以上だった。

僕は十五日で父さんに勝ったんだ。

コツさえ掴めれば正直、木神式流、は大して難しくもない。

単純な武術だ。

ただ間接と筋肉の動きを調整すればいいだけ。

むしろ簡単すぎるくらいだ。

何故こんな流派を習得するのに七年もかかったのか不思議であるくらいに。

ただ、それは僕の感覚がおかしなだけだった。

事実、今まで木神式流を完全に習得するのに全員20年以上はかかっている。

ここでようやく理解した。

自分は、異常、なのだと。

そしてその後、父さんは僕をよく睨み付けるようになった。

明らかに僕と栞に対する態度は違った。

別に悲しくはないし、嫌悪感を抱いていない。

むしろ何故か…とてつもない優越感だ。

そして僕は十二歳にして知った。

空気を読むと言う事を。

それからの三年間は人に愛想を振り撒く三年間だった。

騙してる気分だったが大して悪いと思わなかった。

僕は竜ヶ峰学園へと入学するべく、契約竜を探した。

だが、見つからなかった。

理由は簡単だ、僕は適当にしか愛想を振り撒いていなかった。

一個人にそんな愛想を注いだりなど、しなかったんだ。

やっぱり、騙したばちが当たったんだ。

だが、その悩みは一応は解決できた。

僕の妹である栞は竜人なのだ。

だから、仕方なく、契約したんだ。

さすがに兄妹同士の…しかもちゃんとした血縁関係の兄妹でキスは不味いのでラップ越しにすました。

これで、竜人にだけあると言う、竜式、と言うのが解放されるらしい。

竜と人間の血が逆流し、竜の血が優先され、本来の力以上が出せる。


無事、僕と栞は高校生になることが出来た。

そして出会ったんだ。

彼に、朝倉蒼、に。

彼の最初の印象はと言うと、つまんない人だな…だった。

理由は、人に合わせていたと言うことだ。

それはチームの自己紹介の時に既に理解していた。

それが偽善で、ただ上部だけの物だって。

そして僕は彼と過ごしていく内に思った…この人は僕に似てるかもって…。

だけど…何かが引っ掛かっていた。

その偽善は…偽善者っぷりは自然すぎたんだ。

そして、その疑問に気づいたのは、僕らのチームが初めて勝ったとき。

彼は自分の身を投げ出して、何の策もなく、アドリブ、と言う、恐らく彼が一番信用していない行為で、勝ち取った勝利。

これでようやく僕は理解した。

彼は、気づいてないんだ。

自分が偽善で接し、偽善者になっていることに。


だけど…また僕の頭は彼の行動に悩まされた。

テロの時の事だ。


「ッ…!!」


恐怖に怯える顔、死を怖れる顔。

皆がそんな顔を浮かべる中、僕もその一人だった。

そして、その顔をしていなかった人物達。

みや 風子ふうこ水下みずした 美姫みき

二人は勇敢に立ち向かう。

だがその結果残念なものに終わる。

この時の僕は、恐怖、と言う言葉にしか怯えていなかった。

栞も同じだ、そしてもう一人、風宮かぜみや かなめ、彼女もそうだったはずなのに。

彼女の顔が突然と勇敢な者へと変わった。


「…」どうしてそんな顔が出来るんだ…?


そして、勇敢に立ち上がり、人質を解放しろと勇敢に言葉を発する。

そんなことしたら死ぬとまで思う行為を。

その瞬間だった。

彼が現れたのは。


「ッ!!」朝倉…蒼…。


彼は笑っていた。

皆が恐怖に怯えてる中笑っていたんだ。

そして彼は見事に皆を逃がした。

彼が足止めをしてる間に。

僕も勿論逃げたさ、殺し合いなんて僕にはできない…彼とすれ違ったとき、彼の横顔と目には、恐怖などなかった。


「ッ!!」何で…?何で君は逃げないんだ…?君は偽善者だろ!?いつまで偽善振り撒いてんだ!?死ぬぞ!?


僕の心の中はずっとこの調子だった。

収まったのはこのテロ事件が終焉を迎えた後だ。


「彼は偽善者なんかじゃなかった…」


それが僕の答えだった。

僕は彼、朝倉 蒼に今後どう接すればいいかまったくわからない。

ただ一つわかったのは…この僕の偽善では、彼と接することは出来ない、と言う事だった。


彼と僕は違う。

彼は強い人間で、僕は…ズルい人間だ。

読んでくださりありがとうございます!!

今回台詞少ねぇw次回は、木島栞、の話になります!

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