スカウト
家の近くには大通りがあり、そこに市民祭りのパレードが来ていた。
母と弟と俺の3人は大通りまで出てパレードを見ていたのだが、俺はその様子に恐怖を覚えてしまい、家まで逃げ帰ってしまった。
その恐怖の対象は、着ぐるみだ。
今でこそ着ぐるみは「ゆるキャラ」として可愛らしい作りになっているが、当時の着ぐるみは完全に人間の形をしていて、顔は妙にリアルで、お世辞にも可愛いとは決して言えない物体だった。
そんな瞳孔開き気味の物体が、正面から手を振りながら近付いて来るのだ、恐怖でしかない。
「ケンは平気やのに、お前はアカンたれやなー」
手を繋いでてやるから逃げるな、そんな事を言われて立っていると、再び登場した着ぐるみ。
「怖くない怖くない、ほら、バイバイって。ハイ、バイバイ」
隣にいた全然知らないおばさんに励まされ、どうにか着ぐるみの手振り攻撃を凌いた後はボーイスカウトのパレードと、その後にガールスカウトのパレードが続き、俺の元へ1人の女性が物凄い笑顔で近付いてきた。
手渡されたのは1枚のチラシ。
それには、ガールスカウトに入りませんか?と言う文字が書かれていた。




