自転車に乗る練習
入学祝に自転車を買ってもらった。
補助輪付きの安全設計だったのだが、小学校には補助輪無しで乗っている児童が多く、安全よりも格好を優先させて補助輪を外してもらった。
自転車の練習と言えば、親が「ちゃんと持ってるよ」とか言いつつ実は手を離しているとか、途中で離すとか、そんな感じだと思っていたし、実際姉の時はそうだった。
「離してるやんかー!」
と、いちいち振り返るからバランスを崩してコケて、という光景をかなりの長時間にわたって見ていた記憶がある。しかも1日で乗る事が出来ずに数日練習し続けていた。
似たような練習方法なんだろうと予想していた俺を大きく裏切り、親父は一言だけ発した。
「乗ってみ」
後ろを持つ事すらしないという意思を感じさせる腕を組んだ姿勢。
乗れると信用されている。
こんな尋常ではないプレッシャーに緊張しない筈がない。
こけたら痛い、格好悪い、ガッカリさせてしまう。そんな事を考えていては何時まで経っても漕ぎ出す事が出来ず、ついに親父は自転車の後ろを持った。
それでも姉の時とは練習方法が違い、自転車を離す時には、
「離すぞ」
との申告があった。
手を離された瞬間というのは、正面を向いていても自転車にかかる重みで感じ取る事が出来る。そして気が付いたのだ。
持たれていない時の方が乗りやすい事に。




