171 祓った 召喚んだ 喰らった 3
実食。
握りつぶすほどに強い力でもなく、かといって逃げられるほど弱い力でもない。
黄泉醜女の指先が、うごめく漆黒の不定形を優しく、しっかりと掴んで離さない。指が食い込むたびに、暗黒おはぎがぬるぬると蠢く。黒く光る姿が艶めかしい。
黄泉醜女は、自身の薄桃色の唇をゆっくりと割り、這い出そうとする黒い触手を舌先で絡め取った。餡子の甘みと、異形特有の粘りけを慈しむように、瞳を細めて恍惚の表情を浮かべる。
黄泉醜女の必要以上にエロチックな食事の様子に、興奮を隠しきれない者が居た。
「ワサワサっ! こ、こ、これはっ!!!」
お察しの通り、安定のヒルヒルであった。すべてを見逃さないように、身を乗り出している。
黄泉醜女の喉奥から漏れるのは、野獣のそれではなく、極上の甘味を堪能する乙女の吐息。鎖骨のラインが激しく上下し、一糸纏わぬ双丘が、咀嚼の動きに合わせて小刻みに震える。常世と幽世の狭間、ギリギリの境界線で、彼女の喉仏が「こくり」と、艶やかな音を立てて上下する。
暗黒おはぎを嚥下した彼女は、口元に残った黒い雫を、これ見よがしに長い指で拭う。そしてその指を、自らの口内へと誘い、吸い上げた。
「あああああっ、ちゅぽんって、ちゅぽんって言いましたよっ、い、今ああっ」
ヒルヒルの温度が上がっていく。
黄泉醜女の背後、暗がりの孔から、さらに別の白くしなやかな指先が縁にかけられた。二人目、三人目の黄泉醜女が姿を現した。眼福と恐怖のパレードが始まった。
全部で8人の黄泉醜女が、白皙の顎を開いて、暗黒のおはぎを堪能し始めた。
「いやいや、8人の恵体が、8人の恵体がああっ」
ヒルヒルが取り乱す。
「もう、お前うるさいよ。どこの変態おやじだよ」
「だって、あんな餡子塗れの美女8人がいたら、興奮せずにはいられんじゃあないですかっ!」
「君だけSAN値減れっ!」
ショゴスだった暗黒おはぎが抵抗を試みる。しかし、餡子で唇をツヤツヤに光らせた8人の美女が、逃すわけもなく。見る間にあの強大だったおはぎが小さく小さくなっていく。瞬く間に影も形も無くなってしまった。
黄泉醜女はふぅ、と色っぽい吐息を漏らすと、満足げに自分の腹部をさする。アスリート然とした腹筋は、あんな不定形生物を飲み込んだとは思えないほど、相変わらず滑らかで平坦なままだ。
ヒルヒルがシュタさぶらうの顔を見て、満面の笑みを浮かべた。
「凄いな、黄泉醜女!」
「だからその言い方、しかも人差し指立てるなよ!」
「とんがり帽子のアトリエ」とか「魔法の姉妹ルルットリリィ」とか、もうそのくらいやっていただかないとどうにも耐性がなくなってしまっている自分に唖然茫然。B級映画はどんなにクズでも笑って許せるのに。だめな作画は許容できない体になってしまったわ。




