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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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647 人身帰還の術

 女神とつながる七人の内、現在手が空いているのは大地だけであった。

 しかも都合よく、彼女は赤坂の三兄弟と共にこちらへ向かっていた。


 水野は意を決して大地に尋ねてみた。

「カナエちゃん、ちょっと試してほしいことがあるんやけど。」

「なあに?」

「この場所からね、元の自分の身体に戻ってみて欲しいんじゃ。天女様もな、今の私らならできるかもしれんって言ってくれとる。どう?」


 それを聞いていたユメノたちもこの新たな術に興味を持った。

 大地は少し疑うように尋ねた。

「ほんにそんなことできるん? まあ、できるんならええよ。けど、やり方が分からんし。」


 水野はこれから行う実験の段取りを大地に伝えた。

「そろそろこっちに着くじゃろう? 赤坂さんもいきなりそのモグラが普通のモグラになっちまったらびっくりするじゃろうから、こっちに来てから試してみよう。」


 シチヨウの里の月影の屋敷で待機していた木陰は冗談を交えながら皆に伝えた。

「なら、私はカナエちゃんのところに行っとくわ。モグラの心の方がカナエちゃんの身体に来ちゃったら大変やしね。」


 大地はモグラの自分を想像して背筋がゾクッとなった。

「そら、冗談きついわ、シノちゃん!」


 それから程なくしてモグラの大地を連れた赤坂の三兄弟が岬の家に到着した。

 水野は三人に事情を話しジロウのふところにいたモグラを受け取った。

「さて、うまくいくかしらねぇ。」


 大地はアンフィトリテが示した手順通りに新たな術を試してみた。

ずは自分の体とおる場所を思い浮かべるんやね……。」


 木陰は今一度大地の身体が横たわる部屋とその場所を詳細に伝えた。

 大地はその場所を思い浮かべながら手探りするように自分の身体を感じようと努めた。

「ユメノちゃんのお屋敷の……あの部屋か……。うーん、あ、体が……何処におるんか、ふっと分かった!」


 この大地の身体をはじめ、ユメノ、火柱、金城、日土たちの身体は月影の屋敷の一室で布団にくるまれ横たわっていた。

 木陰は棟梁とうりょうたちに事情を話してそちらの部屋へと向かった。

 そして、部屋に入るとすぐ大地の身体の近くに座った。


 木陰が様子を見ていると、今まで死んだように眠っていた大地の身体がピクリと動いた。

「カナエちゃん、戻れたの?」


 大地は「う、う~ん」とうなりながらゆっくりと目を開いた。

「あ、シノちゃん。うん、私、元の身体に戻れたみたい。」


 実験は成功に終わった。

 アンフィトリテたちにとっては当たり前の結果であったが、水野らにとってこの成功はとても喜ばしく、大きな成果であった。


 これならもしいた獣が危機に陥ってもすぐにその場から逃げおおせられる。

 また、トアクが獣に違和感を感じたとしても、獣憑きの術を見破られぬ限りにおいて元の状態に戻った獣を見ればそれが自分の思い過ごしであると信じることになるだろう。


 水野はアンフィトリテたち女神に尋ねた。

「カナエちゃん、今いとったモグラにまた戻ることはできる?」


 それにはガイアが返答した。

「ええ、同じような感じでやればいつでもモグラに戻れるはずよ。ま、今のができたならわけないわ。」


 するとエオスがガイアに苦言を呈した。

「ガイアはまた……そんな簡単に言うもんじゃない。何があるか分からないんだから。それに、一応言っとくけどね、遠くから憑くことができるのは以前いたことのあるけものだけだから。」


 水野は今エオスが言った内容の重要性をすぐに理解した。

 憑いたことのある獣だけ……このような細かな条件は一見軽視されがちだが、何かあった時にその『抜け』が思わぬアクシデントを引き起こす場合があるからだ。

「ありがとうございます。けど、今はそれだけで十分でございます。」


 ここで、木陰が一つ提案した。

「ねえ、できればユメノらも、一度ここへ戻った方がええと思うんよ。飯もあるし、かわやにも行っといた方がええけぇ。」


 水野はそれを聞いて「成程」とうなずいた。

 アンフィトリテはそれについて一応対策は取ってあったことを伝えた。

「皆の身体についてはある程度の制御はしてあるけどね。まあ、健康の為にはその方がいいかもね。」

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