646 モグラは日光に弱いわけではない
前回645が2つ入っていましたので一方を646に修正させていただきました。
ご迷惑おかけしておりますが、よろしくお願いします。
その頃、カラスに憑いた金城は上空から川沿いを歩く村人たちの列を見守っていた。
ここでは年寄や乳飲み子を連れた母親など、戦から避難して来た人々が川沿いを通ってシチヨウの里に向かっていた。
身体が思うようにならない者や体力のない老人は若い者が背負っていた。
その為、かなりゆっくりのペースで進んでいた。
金城は天女を通して水野たちと情報交換をしながら周囲を偵察していた。
「今のところ、異常はないよ。」
子どもらと一緒に地下蔵の中に入った月影ユメノ(黒猫のゴンゾウ)は金城たちの様子を想像しながら囁くように言った。
「それにしても晴れとってよかったのぉ。雨だったら大変じゃったろう。」
金城もそれを聞いて今日の天気に感謝した。
「ああ、雨なんぞ降った日にゃあ、川も増水してしもうて、こうはいかんかったろうねぇ。で、子どもらはどうしとる?」
「ああ、今は大人しゅうしとるわ。皆、賢いもんよ。」
水野はユメノのその言葉に茶々を入れた。
「ユメノ、あんたがそれをおっしゃるか?」
ユメノもそれを言えるほど自分が賢くはないことを自覚していたようだ。
「えへへ、いやいや……。」
木陰はいざとなったら自分が出動する腹積もりで金城に尋ねた。
「カナエ、体調の悪そうな者はおらぬか?」
金城は上空から全員の様子を今一度確認した。
「見たところ皆元気そうじゃ。たまに川の水を飲んで水分補給しとるしな。」
「あと、どれくらいでこっちに着きそうじゃ?」
「うーん、二時間くらいかのぉ。赤子や人を背負ってる者もおるんでな、休み休みじゃから。」
「まあ、その辺りは山道からだいぶ離れとるから見つかることはなかろう。ゆっくり来ればいいさ。あ、それと……今そっちに二人、迎えに行ったから。」
それを聞いた金城は急いで先頭の日土父の元に飛んだ。
「ちょっと、それを先に言ってよね。で、誰が来とるの?」
「あぁ、ごめんね。今聞いたもんだから。アコさんとブンキチが向かっとる。」
金城は日土の父より数メートル先に降り立つと地面に嘴で『あこ、ぶんた』と記した。
それを読んだ日土の父は金城に尋ねた。
「二人が迎えに来とるってことか?」
金城は「カァ!」と返事をした。
先頭を行く日土の父は後方を振り返り皆の様子を窺った。
「それは助かるわい。そろそろ歩くのがしんどくなっとる者もいるようじゃし、あの二人なら手伝ってくれようぞ。」
赤坂の三兄弟と共に一仕事終えた大地(モグラ)は一つ提案した。
「こっちは終わったから、私もカラスになってそっち行こうかな。」
金城は大地にあまり無理をさせたくないと考えたが、折角の本人からの申し出を無下にするわけにもいかなかった。。
「うーん、まあ、こっちは大丈夫やと思うが……。なぁ、ソウコ。ソウコはどう思う?」
水野はそれを聞いて一つ思い付いたことがあったが、先ずは彼女らの身の安全について考えた。
ゴギャクらがサンガ村に戻って来ればここはすぐさま戦場となるやもしれない。
いくら獣に憑いているとは言え、自分より歳下である大地、日土、金城にはあまり怖い思いをさせたくない。
できれば成人にも満たない彼女らに血生臭い場面を見せたくはなかったのだ。
特に大地は幼少より身体も弱く、せめて彼女だけでもこの場から離してやりたかった。
それは勿論、同じ歳の火柱らにも言えることではあったのだが現状ではそうも言ってられなかった。
アンフィトリテはそんな彼女の願いに同調したのか一つのアイディアを示した。
「今あなたがチラッと考え付いたことだけど。そうね、そろそろできるかもしれないわね。」
水野は一瞬目を輝かせた。
「ほんまですか!」
「ええ、みんなも大分このシステム……獣憑きの術に慣れて来たみたいだし、試してみてもいいんじゃないかしら。」
水野が先程思い付いたことというのは、遠くにある自分の元の身体に戻るというものだった。
以前、目の前の獣にしか憑けなかったのが、時を経て目に入るものであれば遠くにいる獣にも憑くことができるようになった。
そのことから、次の段階、つまり目には見えなくても自分の身体とその場所をイメージすることでそれが叶う可能性を思うに至ったのだ。




