表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

The day before yesterday

昔に考えた小説をなんとなく書いてみようと思いしたためました。

一応シリアス路線狙ってます(笑)

それは突然のことで俺は状況を理解できないまま巻き込まれたんだ。





夏の日差しが眩しく蝉の声が幾重にもなって合唱する。


日も傾きかけているというのにこの焼けつくような暑さはなんだろう。


こめかみから流れ落ちる汗を拭いながら延々に続くかのような坂道を先を急ぎながら歩く。


うだるような太陽熱とコンクリートの反射熱のせいで手に持っているビニール袋の中身が


溶けていないかどうか心配だ。


ジャンケンに負けて坂を下ったところにある商店までアイスを買いに行く羽目になった俺は


二人分のカップアイスのほかにおまけとしてもらった棒アイスを一人占めして


この真夏の午後の坂をなんとか登りきろうとさらに力強くまた一歩踏み出した。





古いアパートの一室、家のふすまを開けると一人の男が倒れていた。


「ただいま。」


倒れている男に声をかけ机の上に買ってきたアイスを下ろす。


幸いアイスは少し溶けているだけで済んだ。


「三宅ー、遅いぞ。」


さっきまで身動き一つしなかった男、笹倉(ささくら) 薫平(くんぺい)が顔だけ


こちらに向けうっすらと透けるビニール袋の中を凝視する。


俺、三宅(みやけ) 和也(かずなり)とこいつ笹倉は親友で高校・大学と共に進み


現在同じ法学部に在籍している。


法学部と言っても別に弁護士だとか裁判官みたいな立派な職業に就きたくて入ったわけでなく


法学部出の公務員なんてかっこいいとそんな簡単な思いからだった。


今まで21年間生きてきた中で自分の強い意志で何かをやったことがない。


けれどそれで困ったこともないし大変な思いもしたことがない。


これからもそんな風に暮らしていけばいいかと楽観的なことを考えていた。


「やっぱバニラアイスだよな~。」


笹倉はふたを開け裏まできれいに舐めとった。


「こんな暑い日にバニラアイスって・・・もっとすっきりしたものにしろよ。」


俺は袋に残っていたブドウのアイスを手に取った。


「いいんだよ、暑い日も寒い日も俺にはバニラが一番うんまい!」


「一年中バニラ・・・。」


年がら年中アイスといったらバニラしか食わない、何にでもマヨネーズをかける、


肉は脂身だけ食べるそんな変な偏食家である


こいつの頭の中は一体どうなっているかときたま気になるときがある。


「で、三宅はどうすんの?」


いきなり本題に入ったことに一瞬気付かずんぁ・・・とまぬけな声を出してしまった。


「うーん、どうすっかな。まぁ一応暇だけど。」


「じゃあ行こうぜ!せっかくの同窓会だし。」


同窓会とは高校の同窓会で昨日はがきが届いたのだった。


今日ここにこいつのがいるのもそのためである。


別に電話でよかったのだがどうしても笹倉が家に来たいというのでわざわざこうして集まったのだ。


「それに遠藤も来るらしいぞ。覚えてるだろ?遠藤(えんどう)文乃(あやの)。」


「・・・あぁ。」


「あの頃から仕事してて今じゃ人気モデルだもんなぁ~。俺たちの手には届かない高嶺の花だ。」


「・・・・・」


「そういえばこの前のニュースお前も見たか!?遠藤があの若手No.1実力派俳優の・・・

 なんだっけなぁ、あっそうそう高槻(たかつき)雅治(まさはる)との熱愛報道されてて

 一応双方の事務所は否定してるんだけどあれってやっぱり付き合ってるよな。」


「・・・・・」


「・・・おい、聞いてんのか?」


そこで笹倉はあっと思いだし、にんまりと嫌らしい笑い顔になった。


「なんだなんだ~、三宅。お前ひょっとしてまだ遠藤にふられたこと引きずってんのか。」


「うるさいな。人の心の傷をほじるな。」


「お前はこう見えて一途だもんな~。ん?ここまでいくと一途というか未練がましいか。」


「・・・・・」


言い返す言葉もなく俺はもう黙々とアイスを食べるしかなかった。


三年前、卒業を間近に控え俺は一年生のころから惚れてた遠藤に


ひょんなことから告白したのだがあっさりフラれた経験がある。


その時の傷がなかなか癒えず大学に入学する前の一ヶ月くらい荒れてた頃があり


笹倉には随分と世話になった記憶が今も鮮明に残っている。


「まっ、そういうことだから。明後日の午後6時だ、遅れんなよ。」


「おう・・・。」


やっと涼しくなりある程度外を歩くのが楽になった時分笹倉は帰っていった。


「ったくあいつが来るといつも騒がしいな。」


机上は散乱状態でえらい有り様だった。


それらをてきぱきと片付け唯一机に残ったものを眺める。


俺は机の上のはがきに書いてある有名焼肉屋に行くのは初めてだ。


「焼肉屋桃源郷(とうげんきょう)。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ