第ニ話 アル
魔法学園。
それは人間と魔族が共に学ぶ、世界有数の教育機関だ。
広大な校舎の廊下を、一人の少年が目を輝かせながら歩いていた。
少年の名はアル・シンセリティ。
黒髪、青い瞳、ありふれた顔つきをした少年だ。
「へぇー!」
「新しい魔法の実習場ができたんだ!」
壁に貼られた案内を見ながら、アルは興味津々に辺りを見回す。
「結界魔法の応用実験に、転移魔法の研究展示……」
「すごいな!」
まるで初めて学園に来た子供のような反応だった。
そんなアルを、周囲の生徒たちはひそひそと見ていた。
「あいつだろ?」
「うん、たしか……」
「得意魔法がないって噂の」
「魔法学園なのにな」
「よく入学できたよな」
小さな笑い声が漏れる。
だが、アルは気が付かない、アルの頭の中は近くの掲示板に貼られた魔法研究の記事でいっぱいだった。
「魔法ってやっぱり面白いな!」
「いつか俺もこんな魔法が使えるようになれたらなあ!」
その笑顔を見て、生徒たちはさらに呆れたような顔をした。
――そして。
場面は変わり、授業時間。
魔法学園の訓練場、広大な実習場には生徒たちが整列していた。
人間も魔族も関係なく、それぞれが授業の開始を待っている。
やがて、一人の教師が前へ出た。
「静かにしろ」
ざわついていた生徒たちが口を閉じる。やがて、
教師は全員を見渡しながら言った。
「今回の授業は、お前たちそれぞれの得意魔法を見せてもらう」
その言葉に、生徒たちの表情が変わる、自信満々な者、緊張する者。
そして――少しだけ嫌な笑みを浮かべる者。
「実力を把握するための簡単な実技だ」
「名前を呼ばれた者から前に出ろ」
教師は名簿を開いた。
「まずは――」
生徒たちの視線が前方へ集まる、その中には、どこかもどかしそうに待つアルの姿もあった。




