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プロローグ『死がふたりを分かつまで』

 ーー2012年5月21日。


 日本では25年振りとなる金環日食が見られるとの事で、この日は早朝から多くの人々が空を眺めていた。


 しかし、その2人はただお互いの事だけを見ていた。


 「僕と逃げよう。」


 真剣な眼差しで少年は少女に告げる。

 勇気を振り絞ったからか、少年の額には汗が滲み指先は微かに震えている。

 それでも少女を安心させるように精一杯の虚勢を張りながら少年は続ける。


「1人じゃ太刀打ち出来ないような困難も、2人でならきっと乗り越えられる。」


 欲しかった言葉を貰い、胸がいっぱいになった少女の瞳から涙が零れ落ちる。

 この人なら大丈夫だと、きっと上手くいくと、そう信じさせてくれる少年の元へ、溢れ出す想いのまま駆け寄る。


「だからーーー」

「ラッキー、良さげな子見っけたわ」


 2人だけの世界に突如現れた異物。

 その姿を認識する前に異音が鳴り響く。


「へ?」

 

「〜〜っ!」


 突如血を吐いて倒れる少女。

 少年は何が起きたのか理解するよりも早く少女の元へ駆け出そうとするもーー

 

「ついでだし君も。」


 またしても鳴り響く異音に身構えようとして少年は気付く。

 自身もまた血を吐いて倒れている事に。


「これでよし。」

「〜〜っ!」


 用は済んだとばかりに背を向けるその存在を呼び止めようにも少年の口からは血液しか出てこない。


 (ああ、死ぬのかな、俺。)


 迫り来る自らの死を前にして少年の脳裏を過ったのは、少女との思い出だった。


 (楽しかった…幸せだった…)

 (君も、そう思ってくれてたら嬉しいな…)


 途中、何度も意識を失いそうになりながらも最後の力を振り絞って少年は少女の元まで這って向かう。


 (ごめん、結局君を守れなかった…でも、もし次があるなら…その時は今度こそ君の手を離さないから…)


 既に冷たくなってしまった少女の手を取り少年は誓う。


 (病める時も、健やかなる時も、…どんな時だって君を愛すから。)


 薄れていく意識の中、最期に見た少女の顔がーー


 ーー笑っているような気がした。

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