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21話 お姫様

 


 それから何日か旅した後、私達は竜王国の宮殿についた。本当に大きくてきれいな宮殿で私はほぉっとため息をつく。

 リザイア家の神殿とは建物の様式が違う。


 リザイア家の神殿は石造りの重厚な建物で、かくかくしてるのに、こちらの宮殿はドーム状の屋根で丸みを帯びてる感じ。

 国が違うと建物の感じもだいぶ違うんだねと、私は宮殿を見つめた。



 金や銀の装飾のちりばめられた外装に神秘的な花々。

 門をくぐって宮殿の庭につくとまるで絵本の中みたいに、ずらりと使用人の人達や騎士の人達がレッドカーペットの両隣を並んでいた。


 すごいデイジアみたい。


 よくデイジアを神殿で神官の人たちが跪いて迎え入れるのを私はいつも遠くから見ていた。

 今その光景がデイジアじゃなくて自分の前に広がっていて、どうしていいのかわからなくてルヴァイス様を見る。


「ああ、人が多いか。すまないな。これが我らの流儀だ。

 慣れぬかもしれぬが我慢してもらおう」


 そう言いながらルヴァイス様が私を抱き上げた。


「あー!?」


 抱っこしてほしいって勘違いされたのかな?

 大丈夫だよ!一人で歩けるよ!


「これも仕事だ。我慢してもらおうか?」


 そう言って悪戯っぽい笑みを浮かべる。

 確かに、竜王国の竜神官が私とルヴァイス様の結婚を反対する恐れがあるから、溺愛している風を装うとは聞いていたけれど。

 こんないっぱいの人のまえで抱っこは恥ずかしい。

 テオさんもおかしそうに笑いながら「頑張って演じてくださいね」って言うから、恥ずかしいけど私は頷いた。


 ルヴァイス様が魔獣を倒してまで私を助けてくれた。

 私の【錬成】の魔法に未来を見出してくれた。

 これはきっとすごいこと。だから、私も頑張らなきゃ。


 大勢の人の前で抱っこされながら、私は竜宮殿にはいる。


 ルヴァイス様の綺麗な顔が近くてドキドキするけれど、ちゃんとルヴァイス様につかまっていないと。

 竜王国を【聖気】で満たしているのは竜神官という人達で、人間の聖女の血族である私は彼らに歓迎されていない。

 そして聖気のいらない植物の研究も竜神官に隠れてこっそりやらないといけないの。

 竜神官もお母さまやデイジア達と一緒。【聖気】を使えるのをいいことにえばる事しか考えていないから。

 だから表向き私は「ルヴァイス様の婚約者」って事になっていて、【錬成】の力を使って研究をすることは内緒。

 私はこれからルヴァイス様に溺愛されている婚約者としてふるまわなきゃいけないんだ。

 聖気が使えなくても愛おしいほどにルヴァイス様が私を好きでいてくれる、番って設定なんだって。


 ルヴァイス様に「本当にいいの?」って聞いたら、笑って


「そなたと私の夢は同じだ。

 そなたが夢を追うのをあきらめない限りは私も全力で守ろう。

 そのために演じるのになんら恥じることはない」


 って言ってくれた。


 そして私に「ソフィアのほうこそ大丈夫だろうか?」って聞いてくれて、私はうんって頷いたんだ。


 まだ会って間もない私の力を信じて、応援してくれるルヴァイス様のために。

 レイゼルさんとの夢を叶えるために。


 これからここで頑張らなきゃ!


 私は宮殿を見上げて心に誓う。


 絶対【聖気】のいらない作物で世界を豊穣にしてみせるって。


 宮殿に入ると、そこは本の中の世界だった。

 たくさんの人がルヴァイス様と私に頭を下げていて、その中を歩いていくの。


「おかえりなさいませ竜王陛下」


 たくさんの人が頭を下げる中を、私を抱っこしたルヴァイス様が颯爽と歩いていく。


 つい人がいっぱいいる光景に「あー」って声をあげちゃって、


「何か気になることがあるのか? 愛しのソフィア」


 そう言いながらルヴァイス様がほっぺにキスをしてくれた。


 唇の柔らかさに私は思わずほっぺをおさえた。


 キ、キスされた!!

 お母さまにだってされたことないのに!!


 綺麗なお顔が近づいてやわらかい唇が触れただけでどぎまぎしてしまう。

 演技で溺愛を演じるって聞いていたけれど、こういう事なのかな?

 自分でも耳までかーって赤くなるのを感じて慌てて顔をふると

 ルヴァイス様が「ふむ、私の婚約者は照れ屋なようだ」と、今度は額にキスをしてくれるの。


 どうしよう。顔が赤くなる。


 が、頑張らなきゃ、恥ずかしいけど頑張らなきゃ!!


 大勢の人の前で、ルヴァイス様にずーーっとお姫様扱いされて、かわいい家具のあるお部屋に案内されたのはもう夕方になっていた。


 案内されたお部屋のソファでキュイを抱いたままぽーっとしてしまう。


 好きとか愛してるとかずっとずっと、言ってほしかった言葉が、今日一日だけでもうすごい何回も言ってもらえて、嬉しいし、恥ずかしいしで、ルヴァイス様の顔を見ることができない。


 演技だってわかっているのに、嬉しくてもうこのまま死んじゃってもいいんじゃないかと思えるほどに甘く言うんだもん。

 やさしい表情で耳元でささやくように甘い声で言うんだよ。


 きっと物語の中のお姫様にプロポーズする王子様ってきっとこういうのだと思うんだ!


 ルヴァイス様は演技がとっても上手すぎて気持ちが追い付かない。

 もしかしてこれは夢なんじゃないかって思っちゃう。


 一人で恥ずかしさに悶えていたら、なぜか隣にいたキュイが、一緒にバタバタと暴れて私の真似をしている。


 うう、からかわないでキュイ。私は真面目に恥ずかしいのに。


 それからしばらくしてお風呂に入ることになったのだけれど、私のお風呂なのに女の人が十人も一緒についてきて、体を洗ったりしてくれる。

 火傷がひどく見える魔法は、竜王国の宮廷魔術師のテオさんの魔法で解いてもらった。

 魔法が消えても本当の肌も火傷のあとは全部きれいになっていなくて所々痛々しい火傷の跡があるから、お風呂に入るのは恥ずかしい。

 それでもよく効く薬湯があるってお風呂にいれてもらったんだ。

 私とキュイはとっても広いお風呂に入ってる。

 すっごく広くて、ここなら泳げるんじゃないかってくらい。

 私とレイゼルさんが住んでいたお部屋より広いかも。


 お姫様ってこんな感じなのかな?


 ……もしかしてこれは夢なのかもしれない。




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