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彼女の死  作者: 遠藤良二
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9/14

冬のお参りと気丈な女

 僕が楓の夢で飛び起きて、時間を確認しようと思い、スマホを見ると11:55と刻まれていた。


やばい!!起きなきゃ!


そう思って、するするとベッドから降りて着替えを始めた。


最近、髪を染めていないのですっかり黒くなってしまっていた。


それを気にしつつ、まず、トレーナーを着た。


お参りにそぐわないように、黒色の無地のものを選んだ。


下はグレーのカーゴパンツだ。


頭の中にはあったものの、用意はしていなかったので少し焦った。


着替えを終えて僕はその上に濃いグレーのコートを羽織った。


財布とスマホ、家と車のキーを持って僕は家を後にした。


家を出た時刻は十二時を少し回っていたので、急ぐ為に、少し深くアクセルを踏んだ。





十分くらいは走っただろうか。


僕は律子さんの自宅に到着した。


積ってはいないものの、空から白いものがチラついていた。


気温も低く、冬本番てとこだろう。


車から降りて、家のチャイムを鳴らした。


ピンポーンという音が聞こえた。


数十秒後、中から喪服を着た律子さんが出て来た。


スラッと背の高い彼女はそれがよく似合っていた。


まあ、喪服が似合うと言われて嬉しがる女性がどれくらいいるかわからないが。


ちなみに、髪は後ろで二つに縛っていた。


「こんにちは。慎吾君」


「あ、どうも。こんにちは。っていうか喪服なんだね」


僕は頭を掻きながらそう言った。


「一応ね。無難かなと思ってさ。まだ、日も浅いし」


「あー。それなら僕も喪服にすれば良かった」


「慎吾君の部屋まではそんなに遠くないから、一旦戻って喪服に着替えて来たらは?」


「そうだね。そうしよう。少し遅れるけど、楓なら待っててくれるよな」


そう言いながら、僕はコートのポケットからスマホを取り出しスマホをいじりだした。


そして、こう言った。


「律子さん。これ、見て下さい。楓からの最期のメールです」


「え!そういうものがあるならもっと早く言ってよ。隠してないでさ」


そして、律子さんはそのメールを読み始めた。


すると、


「楓…。知らなかった…。胃がんだったなんて…。でも、最期の最期まで自分の事を自分で決めるなんて楓らしいじゃない。大人の女って感じでさ」


「そ…そうだね」


僕は胸にこみ上げて来るこの想いを必死に堪えた。


律子さんは、何度も熟読しているようだ。


「もう、これ以上悲しむのは止めない?楓が心配するし。慎吾君もほら!しっかりして」


僕は思った。


この林律子という女はもの凄く、気丈な人だと。


敵には回したくないなとも思った。


律子さんは僕にスマホを返して、行こう、と僕を促した。

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