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彼女の死  作者: 遠藤良二
10/14

僕の彼女の友達の想い

 僕は律子さんの言う通りに、彼女を乗せ再度、自宅へと戻った。


そして、部屋の中のクローゼットから喪服を一着取り出した。


何となくではあるけれど、まだ線香の臭いがしているような気がした。


クローゼットの中にはジャケットやスーツ、コートなどが数着ずつ掛っている。


中には中古屋で買ったのも含まれているが、ほとんどは新品で買ったものだ。


ちなみに、全て自分で買ったものばかり。


決して裕福な生活をしているわけではないが、友達、特に同級生には負けたくないという強い想いがあり、あくせく働いて買ったのだ。


でも、一着だけ、楓に買ってもらったコートがある。


黒のロングコートだ。


僕はそれらをじっと見ていると、律子さんがしびれを切らしたのか車から出て来て僕のクローゼットの中を同じように覗いてきた。


「わぁ。結構、持ってるじゃない。あ!この黒のコート。楓に買ってもらったやつでしょ?」


「そ、そうだよ。よく知ってるね」


僕は若干、どぎまぎしていると、


「楓ね。あなたの話しをよくしてたわよ~。二人で飲んでた時も呆れるくらいの自慢話ばかり!」


「そ、そうなんだ。ちなみに何て?」


「あ。そろそろ行きましょ。遅くなると悪いから」


と、言いながらそそくさと車に戻って行った。


話をはぐらかしたな、と思いながらも悪い気はしない。


楓の言った事だから、憎いわけがない。


僕はクローゼットの扉を閉めて喪服に着替えた。


それから車に戻ると、律子さんはまた喋り出した。


「あなたと楓ってほんと仲が良かったわよねぇ~。こっちが妬いちゃうくらいにさ」


「そうなんだ、そんなふうに思っていたんだね」


「そうよ。でも、なんでかな。こう思うのは」


運転をしながら、なに?と言うと、


「怒らないで聞いてよ」


「だから、なに?」


「あなたには楓より私の方が似合っていたんじゃないかな?と思ってね」


それを聞いて僕は驚いた。


「な…何でそんなこと言うの?」


「そう思ってたから、そう言っただけだよ」


僕は返す言葉に詰まってしまった。


そして、こうも思った。


律子さん、もしかして…。いやいや、そんなことはない。あるはずがない!


僕は自分の思いを打ち消した。


何だか気まずいような気分だけれど、あえて気にしないようにしよう、と思った。


楓の実家まではあと、三十分くらいで着く。


律子さんに意味深な事を言われ動揺したが何とか堪えた。


スマホの時計を見ると既に十二時三十分を過ぎていた。


一時までには着く予定が、と思うと少し焦ったのでアクセルを深く踏み込んだ。

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