表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/5

~彼の覚悟、私の覚悟~

 何だろう、この白いの‥

 ぼんやりした目線が定まると、ようやくそれがウサちゃんの背中だとわかる。

 辺りは真っ暗で時計を見ると三時を少し回ったところ。そっか、いつのまにか寝ちゃったんだ。

 ‥でもさっきの出来事は夢じゃない。

 そっと唇に触れて見る。

 ‥キス

 ‥されちゃった

 初めてのキスはあまりに突然過ぎて、何も考える余裕がなかったわ。キスは甘いって聞いてたけど、ひどい話ね。ファーストキスはドーナツの香りがしたなんて‥

 ウサちゃんを抱きしめ、ベッドに身を起こす。まどろみから覚めると、とりとめのない考えが次々に浮かんできた。

 ‥どうして、神山君はキスしたんだろう?

 あの時の彼は真剣そのものだった。遊びや冗談のつもりじゃないことはわかる。

 ‥じゃあ、私のことを好きだから?

 それならなぜ、あんな驚いた顔をしたんだろう。考えれば考えるほどわからなくなってくるわ。

 ‥何より、私は彼にキスされてどう思っているの?

 いきなりで驚いたのもあるけれど‥、うん、正直怖かったんだと思う。

 恋って好きになることの延長じゃないのね。こんな切ない気持になるなんて、思いもしなかったわ‥

 私は‥

 ‥‥‥

 ‥神山君が好き。

 一緒にお話して楽しかったし、もっと一緒にいたい。彼のことをもっと知りたいし、もっと仲良くなりたい。

 でも、友達同士の好きとは違う。恋人同士の好きになれば、キスしたり、‥セックスしたりもするのよね。

 キスされた時、神山君をずっと身近に感じた。彼に見つめられると、心が見透かされたようでドキドキしたけど、キスも一緒。単に身体の一部が触れ合うんじゃなく、心と心が触れ合うの。それはとても素晴らしいことだけど、同時にとても怖いこと。

 だって、それって自分の心の中に他人を受け入れるってことだもん!

 私の中では神山君のまだ知らない部分が多いし、何より男性を受け入れるのって怖いよ‥

 でも、それを恐れたのは、私に覚悟が足りなかったからだと思う。お互いの気持ちを確かめあって、受け入れて、共に進む覚悟をしてなかったの。

 神山君も、その覚悟がまだなかったんだと思う。私の気持ちを確かめずに、先に進もうとしたのに気付いたから、あんなに慌てたのかも。

 ‥考えて見れば、私達ってまだ知りあって一日しか経ってないのよね。きっと決断の時が急すぎて、気持ちが追いついてないんだわ。

 だから私は選ばなきゃいけない。彼を受け入れて、一緒に新たな道を進むか。それとも彼を拒絶して、自分を守るか。

 ‥なんだかいっぺんに大人になった気分。恋ってすごい。

「ねぇ、ウサちゃん、貴方は幸運の白ウサギ?」

 神山君と引きあわせてくれたぬいぐるみは、私の手の中で相変わらず黙ったまま。いいわ、この先の運命は自分で選ぶから。


 まんじりともできないまま夜が明け、登校した私を待っていたのは一通の手紙。下駄箱の中に入っていた神山君からの手紙には短く一行。

「会いたい、昼休み、屋上で」

 ‥うん、私も会いたい。


 四限目の終わりを告げるチャイムが鳴り響くと、本当は立ち入り禁止になってる屋上へと向かう。

 校舎から抜け出ると、澄み切った青空が広がっていた。

 いい天気ね。穏やかな春の陽気、優しい風、鳥の鳴き声‥

 屋上のフェンス越しに遠くの山々を眺めながら、私は彼を待つ。

 ほら、階段を駆け上がる足音が聞こえてくる。

 扉を開ける音、荒い息を整えて、近づいてくる彼の気配。少し離れたところで止まり、私を呼ぶ緊張した声。

「‥春木さん」

 彼も眠れなかったのかな。振り返ると、少し疲れの覗く顔が、真剣な面持ちで見つめていた。

「ねぇ、神山君‥」

 ‥不思議ね、昨日の今頃は彼の顔を見てまともにしゃべれなかったのに、今は落ち着いている。

「‥どうして、私にキスしたの?」

 彼は、何かとてつもなく大きな罪を犯した罪人のように、顔をしかめて見せる。でも大きく息を吐くと、私の目をしっかり見つめ直す。迷いのないまっすぐな瞳、私が恋した真摯な瞳‥

「君が好きだ!」

 じんと胸が熱くなる。良かった、彼も同じ気持ちでいてくれて‥

「駅のホームで、天使が落ちてきたと思った。それから君のことしか考えられない」

 ‥私だって、あなたのことしか考えられなかったのよ。

「あのまま別れたくなかった。どうしても気持ちを伝えたかった。でも、いきなりキスをしたのはゴメン‥」

 そう、彼も覚悟を決めてくれたのね。不器用だけど、精いっぱいの誠意を込めて告白してくれた。もう、それで十分よ。

 ‥今度は、私が覚悟を見せる番。

 そして、私はありったけの勇気を振り絞る。

 彼との距離をゼロにするまで後三歩、二歩、一歩‥

 そっと彼の顔に手を伸ばし、愛情込めて唇を重ね合わせる。

 ‥キスってやっぱり凄い。どうか私の気持ちを受け取ってね。

 私の誠意は伝わったかな。短い抱擁から身を離し、驚いた顔の彼に心からの笑顔を向ける。

「えへへ、これでおあいこだよ」

「‥春木さん」

「私も大好き、だから、これからもよろしくね‥誠二君」

 返事の代わりに、彼はぎゅっと抱きしめてくれた。痛いくらいぎゅ~っと。そして、私達は今度こそお互いの愛情を込めてキスを交わした。

 未来のことはわからないけど、昨日までと同じじゃないのは確かだわ。でも、彼と一緒なら怖くない、きっと素敵な日々を送っていける。

 二人手をとって階下に戻りながら、私は青空を振り返ってこう思う。

 恋に天気予報なんていらないわ。だって明日もきっと晴れだもん♪

 もうちょっと長い話にしても良かったかな~‥なんて思いつつ読み返してみると、前作「訳ありデートは恋の始まり」と似通ちゃってる部分も多いのよね~(・o・;)アセアセ

 今度は大学生を主人公にしたお話で書いてみようかしらん☆(o^-')b

 nameless権兵衛 兵藤詩織

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ