10-16 混合
狼と若い魂が一つの肉体の中で揺れ動く中、若い魂は我の闇に反応しながら意識を取り戻しつつあった。
”自戒はしておるのじゃな?”
「自戒?…なに…そ…れ…は…ち…がう…自戒など…しておらん!」
”では何故我に詫びた”
「詫びてはおらん…詫びて…儂…は…おれ…は…わるい…ことを…しました・・・」
”何をしたのじゃ?”
「あなたを…傷を…付け…ました…それ…は…お…儂…を魔に染めようとしたからだろう!徹は悪くはない!」
”あの若い魂はとおるというのか?”
「な…し、しまった!」
狼の驚きようは奴も知っておるようじゃな。我に名を知られることがどうなるかを…
”ではとおるとやら先ほどの行為、しっかり反省しておるのか?”
「儂は徹では…な…い…ワシは…とおる…ワシ…え?…えええ…うん…ごめんなさいもうしません…いい子にしますから…」
”いい子か…本当にいい子になるか?”
「は,は、はい…いい子になります。」
とおるとやらはもう我に抵抗することはないようじゃ。まだ不安定なようじゃが我の闇を取り込んできておるようじゃ。
”良し、内容はともかく自戒はしておるようじゃな…”
「う…うっ…ち、ちが…う…ワシは、儂は徹では…ない…はず…」
まだ狼の魂が邪魔をするか…しかしこやつもかなり動揺しておるようじゃ。ここで一気に変えてやろうかのう。
”そうじゃ、お主はとおるではない。”
「そうじゃ…儂は…儂の名は…」
”お主の名はなんじゃ?”
「儂は…儂は…!」
”お主…銀灰という言葉は知っておるか?”
「ぎん・・・かい…?」
”そうじゃ、銀灰じゃ”
「…」
”お主の毛並みの色、黒みのかかった銀色のことじゃ”
「それが…どう…した…」
”それはお前にに似合うと思わぬか?”
「!!」
心の中の我魔の流れが良くなっていく。若い魂を中心にして魔の層が厚くなり狼の魂との分離が完了した
よし、完全に魂が分離したようじゃ…
獣毛が左が美しく整った銀、右が荒々しい毛並みの黒に分かれ、体の中心では銀灰色に段階的に変わっていく。左右の眼は完全に黒と蒼へと別れ、目つきも変わった。
"とおるよ…”
我が名を呼ぶと黒い瞳に蒼い霞がかかりその眼をまわりに引き付けをおこしておる
”お主は十分に反省しておるようじゃのぁ”
「う…うん、反省してます…だからぁ…」
精神の弱った魂は我が魔に負け、一気に染っていきおる。
「ダカラぁ…俺ワァ…儂ャァ…」
さらに蒼い目は輝き、黒い眼は苦しみを表す。
黒い魂は形を崩しながら狼の魂を巻き込んでいく。
それはゆっくりと中に溶け込んで二つの魂が混ざりあおうとしておったが…
グゥィィィン!!
その音とともに我が狼を包んでいた根が痛みと共に切断されおった。
”だれじゃ!”
切断された根の先に感じる気を感じる。誰かおるのぉ、知っている気じゃが…
「もういい加減にしてくだサイ!」
その先には我が従者のやまぶきがおった




