10-15 侵入
狼の肉体をがっちりと拘束し、更に新しい根を奴のしっぽにからみつかせる。そこから闇を注入できるようにギュッと縛ってやると、狼の気が一瞬炎のように体から漏れ出す。そしてそれを一旦コアに流し込んで闇と混ぜてやる。
すると我の闇は狼の銀色の気と混ざって銀灰色になりながら我のコアから新しい闇が生み出される。全てを支配するのであればこのまま我闇を注入すれば良いが、今回は大切なこの森の…我の子に仕上げなければならんから魂に負担をかけぬ様にこの狼専用の我の闇を作り、それを根から尻尾に帰してやる。さすれば狼の自我を適度に残しつつも我が闇に染まった新たな狼…我が森の子として迎えいれなければならない。
コアから作り出された闇は外部からの気を一番感知しやすい狼の尻尾を通して魂に注入してやる。そうすればすんなりと侵入できるはず…じゃったのだが…
闇を注入させようと根の先で魂を探ってみると何か電気のようなものが流れてきおる。数回試したが結果は同じ繋くことができなくなっておる。
「儂の魂を吸い取ろうというのか?無駄じゃ…儂にはそんなもの…うっ!」
”吸い取りはせん、お主を我が森の子に変換するだけじゃ”
まだ暴れるのでもう少しきつめに縛ってやるとさらに気を吐きだしながら魂が大きく暴れる。しかしそれでも儂の闇は魂からはじかれてしまった。、我が造り替えてやった者はそんなことはなかったはずじゃ…精神力が強すぎるとこんなこともあるのか…昔しかしその巻き付く電気のようなものは何かどこかで感じたことのあるような…
しかし呑気に待つことも出来ぬ。作り出した闇が体内に溜まっているから放出せねばならない。仕方ない…多少傷ついでも注入せんと我の体が壊れる。
「うぁぁぁぁあああ!」
更に狼を強く縛りあげ魂を揺さぶると大声で悲鳴を上げおった。お主のその精神力を取り払えば…魂が弾けてしまえば狼の意識もなくなって抵抗はなくなるはず…
なかなかくたばらぬ狼をすこし苛立ちながら何度も締めあげていたその時…変な気の流れを魂の隙間から感じはじめた。
魂が限界を迎えてきたのかと少しあわてながらその辺りを調べてみるとこの狼とはまた違う気を感じた。
そしてそこに集中させ探ってみると何か別のものがおることに気がついた。
これは?さっきのもう一つの魂のものか?
先程の入れ替わりの魂がここに寝ておる…
暴れる狼の魂の中、もう一つの狼…若い魂は大人しく小さく隠れておる
この狼に直接注入するよりも…若い魂には障害はないようじゃし。こいつはいいものを見つけた、もともと一つの体にある魂じゃからこの闇も使えるはずじゃ。
こいつに手を加えてやろう…
「ぐぬぬ…貴様、ワシには闇なんぞ負けんぞ…」
”わかっておる、お前の魂には何かまじないのようなものがかかっておって直接は効かぬようじゃ。”
「では、こんな無駄な…う、うぬうう!」
”では…もうひとつの魂を見つけたと言ったらどうじゃ”
「!?」
我言葉に驚いたのかまた大きく魂が揺れておる。おかげで若い魂の表面がむき出しになりおった。その中からはっきりと違う気が感じ取れる。
そしてそこに向けて儂の闇を少し流し込んでやる…魂の穴に少しづつ流れていく。
よし…繋がった。
そこに膜をはるように魂で闇を包んでやるとそれに反発した狼の魂の穴は一気に大きくなりおった。そこにさらに闇を送り込み若い魂を狼の魂からゆっくり分離しておる。
「な…なんだ…やめろ…やめ…うゎぁあああ!」
もう一つの魂に我の闇が届いた瞬間、狼は首を大きく振って暴れ出した。狼の魂が大きく暴れおる中、我が闇はしっかりと若い魂を包み込み侵食を始開始しはじめた。
魂のかかから意識のようなものが少しづつ流れてきおる。
「やめろ!…やめろ…やめて…やめてよ…やめ…」
声が、瞳の色が蒼から灰に変わったり戻ったりしはじめた。声は変わらぬが言葉使いが変わる。
肉体も二つの魂に左右され不安定になってきたようじゃ。
「やめろ!…こんなことを…し…ません…もうしません…もうしません…」
狼のものからが段々と若い魂の物言へと変化しておる。これは先程、あの狼と入れ替わる直前にの精神状態のままのようじゃ。きっと反省しておるつもりなんじゃろう。
「もうしませんもうしませんもうしません…」
”何を詫びておるのじゃ?何を自戒しておるのじゃ?”
「あ…あ、あ、あ、儂は…何をいっておる…?」
”我に詫びておるのか?”
「お前に…何を…なにを…詫び…わびる……う…うん…もうしませんから…”
ほう…面白い。交互に魂が現れておるようじゃ。
若い魂はすっかり大人しくなっておる。若いのぉ…恐怖で思考がおかしくなっておる。しかしこう素直になってくれるとなにかと都合が良い、もうこの魂は我の思うがままじゃ。




