10-14 再覚醒
「お前か?ワシを無理やり引きずり出したのは?」
若葉の毛並みに金色の目でこっちをを睨む狼男は、拘束していた右手の樹木の根をいとも簡単に力で破壊した。さっきの幼い魂のものとは違う俺の力ではない何か別の者に生まれ変わったように感触は、闇の力とは別のものだと感じた。
”お主…さっきの狼とはまた違う者なのか?”
「そうじゃ、あんたがワシの孫に闇を植え付けたおかげでこの姿で動き回れるようになったんじゃ。徹にはいい薬になったようじゃがな。」
色とともに違う存在に入れ替わった狼は
「それよりもこれを放してはくれんか?うっとうしくてしょうがない。」
"放せぬ…我が根を切るなど…お主は危険じゃ…”
樹木は新しい木の根を動かし狼の腕に巻きつこうとするが、今度は狼の周りに何かが邪魔する物があるのか直接肉体をつかめない。そうしている間に、どこからか刀を取り出して根の先を切断された。
”痛い…”
”大丈夫なのか?”
”これぐらい大丈夫じゃ…それより奴を拘束しなおさなければ…”
再び俺の力を吸いはじめた樹木は根を再生させ、狼の刀を取り上げようと大きく鞭のように振り上げて身体ごと拘束しようとした。しかし、狼の周りに淡い緑の光が浮き出して、それに邪魔されて上手く絡まらない。
「儂は何もする気はない。しかし、やめる気がないならこっちも考えがある…」
狼の周りの光がさらに大きくなると、根の硬い皮が少しづつめくれて柔らかくなっていく。がしっと固めていた根が細くなっていき、狼の拘束した手に力負けしはじめた。
”こいつを動かせば動けない俺達がやられる!”
樹木と俺の危機感が一体になって俺の闇がどんどん作られて吸収されていくうちに、いつの間にか俺の体じゅうが樹木に巻きつかれて一体化していく。
また一本、根先が切られていく。巻きついた樹木から俺の足もと…我の根先から鈍痛が流れてくる…
動けない樹木がこのまま狼に反撃されると…我が命が危ない
!?
なんだ俺は…なにかおかしい。どんどん俺の体が大きくなるような、外からの感覚が鋭くなっていくような、そして痛みがいろいろな所から感じてきて…このままでは、このままでは我が…動けない我が負ける…
やばい…モット力が…
樹木の意識が…俺を…我にチカラを…
力が吸い取られ…ソウダ…モット…モットダ
もっと力が…もっと…モット…モット…
我の中の闇が強く太く全身に流れていく…
我は…コノ力ハ…
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「何じゃ…このおかしな気は…これはまずい」
目の前に狼がおる、なんじゃ…
なにかコアがぼんやりする…
そうじゃ…
我がは狼と一線交えておったな…
根の先がピリッとして目が覚めた。なにか苦戦をしていたような気がするが気の流れから感じるに大した奴ではないようじゃ。
新たに根の先の力を入れてやると我の力を感じ取ったのか狼がまた切りかかって来たが、闇の力で柔らかく動くようになった根で刀を弾き飛ばし、もう片方で体を拘束がした。
力の差を痛感したのか先ほどまでの余裕さはなくなり、全身にピリピリとした気を張る狼だが我の拘束力には敵わぬようだ。
「くそ!なんだこの力は…先ほどとは全然…」
さらに両腕に気をまわし、抵抗をしようとしておるが我の力はそれよりも上回っておる。狼の力はこんなものか…なにを苦戦しておったんじゃ?さてそろそろ力の差を見せつけて我の力を注入してやろうか…




